《仕事と介護の両立に関する実態調査》介護未経験者の8割が「両立できるか不安」だが、介護経験者の約7割は「仕事で役立つスキルは介護でも役立つ」と回答
経済産業省によると「日本は高齢化の進行に伴い、仕事をしながら家族の介護に従事する数が増加。介護離職者は毎年約10万人で、2030年には家族介護者のうち約4割(約318万人)が仕事をしながら介護をする見込み」(※2)と報告されている。
(※2)経済産業省 ヘルスケア産業課「経済産業省における介護分野の取組について」(2024年3月)。
そこで、介護未経験者に、将来家族の介護が必要になった場合の仕事との両立について尋ねたところ、
「両立できるか不安に感じる」(全体85.8%、男性80.3%、女性91.5%)、「社会にもっと支援や理解が必要だと感じる」(全体85.1%、男性80.5%、女性89.9%)、「働き方を変えざるを得ないと思う」(全体83.7%、男性79.8%、女性87.7%)といった不安の声が高く、男性よりも女性の方が不安に感じる割合が高くなっていることが明らかとなった。
続いて、仕事と介護が両立できるか不安に感じると答えた721人に不安に感じる理由を尋ねたところ、
「仕事とのバランスの取り方にイメージが持てない」52.0%、「介護にどれくらいの時間・負担がかかるか想像しづらい」50.2%が約5割と高く、次いで「介護制度や支援の情報がまだ十分に理解できていない」38.4%、「家族と介護をどのように分担するか話し合えていない」35.1%、「介護に関する備えや計画を始められていない」35.0%が上位に挙がっている。
また、仕事と介護の両立をしたことがない799人に、両立すると仮定して仕事と介護に対する精神的な不安の割合を尋ねた。すると、仕事に不安を感じる人は45.5%、介護に不安を感じる人は54.5%となり、仕事に対する不安より介護に対する不安の方が多い結果となった。
一方、仕事と介護の両立を経験した151人に、両立で悩んだことを尋ねたところ、「精神的に追い詰められることがある」48.3%、「介護と仕事の両立が時間的に難しい」「自分の休息や趣味の時間が取れない」同率45.0%が上位に挙げられた。
ここまでの結果を受け、川内さんは以下の通り話す。
「介護では、どれだけ頑張れたかを“いい介護”としがちですが、そうではなく、介護で重要なのは家族関係が変わらず良好であることなんです。(中略)そのために重要なのは、自分の心身の健康を保つこととと、親との適切な距離感を保つことです。介護中心の毎日にならないよう自分の生活を保ち、心身の健康維持を心がけることです。気持ちにゆとりがあると、老いた親の言動に直面してもイライラせず、ありのままに受け入れることができるようになります」
仕事と介護の両立も、バランス感覚を養うことが重要だ。仕事と家事、趣味と育児など今のうちから生活の中でバランスを取る工夫をしておけば、将来の介護不安の軽減と対処に繋がるかもしれない。
両立経験者の約7割が仕事のスキルが「介護との両立に役立つ」と証言
次に、仕事と介護の両立を経験した人に、仕事で役立つスキルは仕事と介護の両立に役立つかと尋ねた。すると72.3%が「仕事と介護の両立に役立つ」(とてもそう思う+そう思う)と回答する結果に。働く人の多くが働きながら介護をすることに不安を覚えているが、仕事で役立つスキルは、仕事と介護の両立にも役立つことが明らかとなった。
最後に、介護した経験がある160人に、仕事で役立つスキル、介護で役立つスキルを16の選択肢の中からそれぞれ5つ選択してもらった。すると、仕事で役立つスキルは「状況に応じて臨機応変に対応する力(柔軟性)」40.0%や「限られた時間の中でのやりくりする力(タイムマネジメント)」31.3%が上位に挙げられた。
一方、介護で役立つスキルは「状況に応じた言い方・伝え方(コミュニケーション力)」28.8%や「相手の気持ちをくみ取る力(共感力)」28.1%が上位となった。それぞれのTOP10を比較すると「コミュニケーション力」仕事4位/介護1位や「共感力」仕事5位/介護2位は、仕事と介護の両方に役立つスキルだと言えるだろう。
以上の結果を受け、川内さんは以下の通り語る。
「介護も仕事と同様、いろいろな人たちとチームになって推進していくわけですが、ケアマネジャーさんや介護士さんなど介護のプロの方々とどうコミュニケーションをとり、どう共感していくかが重要です。仕事で取引先や社内の人と接する時、相手の立場や仕事内容を考えてコミュニケーションをとりますよね。それと同じように、介護職の人たちがどうすればより良い仕事ができるようになるのか、彼らへの共感力を持ってコミュニケーションしてもらうと、彼らのモチベーションはぐっと上がり、質の高い介護に繋がります。
仕事と介護の両立に役立つスキルを上げるとしたら、私は、感情をコントロールするアンガーマネジメント、臨機応変に対応する柔軟性、限られた時間の中でやりくりするタイムマネジメントは重要だと思います」
介護と仕事の両立に不安を抱く人は、まずは「自分ひとりで抱えずプロを頼る」「親や介護とは適切な距離を取り、自分の心身の健康を保つ」ことを念頭に、今の日常生活の中でバランス感覚を養っていくことが重要だ。そうして培った仕事のスキルが、介護へも役立ち、介護不安の軽減と対処へ繋がるだろう。
【データ】
ダスキン ヘルスレント
https://healthrent.duskin.jp/
あしたのケア
https://healthrent.duskin.jp/project/care/
【調査概要】
調査時期:2025年6月12日(木)~6月13日(金)
調査対象:
(1)テーマ調査:20代~50代の有識者・男女1,000人
(2)定点調査:親世代=自身の年齢が60代~80代で別居の子供がいる男女1,000人
(介護経験あり500人・なし500人)
調査方法:インターネット調査
調査委託先:マクロミル
※ダスキンの発表したプレスリリース(2025年8月25日)を元に記事を作成。
図表/ダスキン提供 構成・文/秋山莉菜