眼科医直伝!【老眼・白内障・緑内障】を予防する9つの習慣|デジタル機器を使うなら「20-20-20ルール」で目を守る
高齢になると気になる目の衰え。老眼だと思っていたら、他の病気が原因で視力が低下している可能性もある。加齢に伴って発症する目の病気は生活習慣で防げるという。眼科専門医の平松類さんに日頃からできる対策を聞いた。
教えてくれた人
平松類さん/二本松眼科病院副院長・眼科専門医
日本人の失明原因1位は緑内障
老眼や白内障、加齢黄斑変性など目の病気もQOL(生活の質)を著しく下げる。
二本松眼科病院副院長で眼科専門医の平松類医師が解説する。
「老眼は目のレンズにあたる水晶体が弾力を失って硬くなり、水晶体の厚さを変える毛様体筋が衰えてピント調整機能が低下する症状です。白内障は水晶体が濁ることで見えにくくなり、加齢黄斑変性は網膜の中心部にある黄斑に老廃物が留まることで視力が低下します。いずれも加齢に伴う目の症状です」(以下、「 」内は平松医師)
怖いのが緑内障。日本人の失明原因の1位で、気づかぬうちに進行する。
「目と脳をつなぐ視神経の繊維が減ることで視野が少しずつ欠損し、気づいた時には失明一歩手前となりやすい。歳を重ねるにつれて発症率が高まり、特に近視で手元が見えて遠くが見えない人は緑内障の発症リスクが高いため注意が必要です」
こうした病気による視力低下を防ぐために、日頃からできることがある。
「かゆい時に手で目をこすらないことです。目をこすると水晶体が傷つき、白内障の発症や進行を早めてしまう。また、水道水でバシャバシャと目を洗うのもNG。目を保護する涙を塩素水が洗い流してしまい、角膜を傷つける原因となります」
緑内障対策では、うつ伏せ寝を避ける。
「眼球が圧迫されて眼圧を上げ、眼球中にある房水の流れを悪くすることがある。特に腕に目を押しつけて机に突っ伏すように寝るのは危険です。視神経にもダメージを与えて緑内障の引き金となりかねません」
「20-20-20ルール」や「毛様体筋ストレッチ」で効果的に予防
目を休ませることも意識したい。スマホなどのデジタル機器を使うなら「20-20-20ルール」を守ることだという。
「スマホ画面を長時間見続けると水晶体を引っ張る毛様体筋が凝り固まり、老眼の発症が早まります。スマホなどのデジタル機器を20分間利用したら20秒間ほど、20フィート(約6m)以上遠くを見て目を休ませてください」
平松医師によれば、老眼の発症予防や症状の改善が期待できるのが「毛様体筋ストレッチ」だ。
顔から30cmほど離した人差し指にピントを合わせ10秒ほど見つめ、それから6m以上先の対象物にピントを合わせて10秒ほど見る。これを1日10回繰り返す。
「近くと遠くを交互に見ることで凝り固まった毛様体筋が伸び縮みして、低下したピント調節機能が鍛えられます。毎日行なうと老眼の症状が回復する可能性があり、私の患者は日課にした結果、老眼鏡を使わずに本を読めるようになりました」
夏場は外出する際に紫外線対策が欠かせない。
「夏の紫外線は目にダメージを与える大きな要因なので、外出時にはUVカット機能があるサングラスが必須です。帽子や日傘の活用もお勧めします」
目の症状の改善は早期発見が鍵を握る。そこで重要なのが「眼底カメラ」による検査だと平松医師。
「目は片方が見えなくても、もう片方が補うため不調に気づきにくい。緑内障では末期まで気づかず、ある日突然見えなくなるということもあります。早期に発見できる唯一の手段が眼底検査です。40才を超えたら2年に1回、70才を過ぎたら毎年眼底検査を受けるといいでしょう」
スマホの視聴ルール、サングラスの着用。老眼、白内障、緑内障を寄せ付けない9の知恵
<習慣1>スマホ使用時は20分に1度20秒間遠くを見る
目を使いすぎないためにスマホを見たら20分に1度20秒間、20フィート(6m)先を見る「20-20-20ルール」を意識する。
<習慣2>目をこすらない
眼球をこすると水晶体が傷つき、白内障の原因になる。
<習慣3>机に突っ伏して昼寝しない
腕に目を押し当てる形で寝ると眼圧が上がり緑内障の原因になる。
<習慣4>サングラスをかける
紫外線を防ぐためにUVカット機能のあるサングラスをかけて外出する。
<習慣5>焦げた食べ物を避ける
焦げはAGEs(終末糖化産物)を生成し、食べると体の老化を促し白内障を招く。
<習慣6>目薬を何度も点眼しない
市販の充血止め目薬は点眼しすぎると薬剤性結膜炎の原因になることがある。
<習慣7>目を水道水で洗わない
水道水には塩素が入っているため角膜を傷つける可能性があるのでバシャバシャ洗い過ぎない。
<習慣8>毛様体筋ストレッチを行なう
顔から30cm離した人差し指に10秒、6m以上先に10秒と交互にピントを合わせて見る。1日10回行なうことが望ましい。
<習慣9>定期的に「眼底検査」を受ける
40才を過ぎたら2年に1度、70才以上は毎年眼底カメラによる眼底検査を受けることで緑内障を早期に発見できる。
※週刊ポスト2025年8月29日・9月5日号
●緑内障、加齢黄斑変性…40代から注意すべき目の病気|早期発見チェック【医師監修】