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連載

兄がボケました~認知症と介護と老後と「第40回 生成AIに職を奪われる!?」

 ライターのツガエマナミコさんの兄は、50代で若年性認知症を発症し、66才になった現在は特別養護老人ホームで暮らしています。毎週かかさずに兄の面会に通うマナミコさんですが、このところ、兄の機嫌や体調が芳しくない様子で心を痛めています。

 * * *

認知症対応型AIが現れる日も近い

 世の中はAI時代でございます。生成AIが人の仕事を奪っていくという話はかねがね聞いておりましたが、自分の身に降りかかってくるのはまだまだ先のことと安心しておりました。ところが先日、我が家に泊まった大阪の友人(雑誌編集者さま)が、すでに生成AIに原稿を作ってもらっていると聞いて背筋が凍る思いがいたしました。はじめて我がフリーライターという職業に危機を感じたのでございます。

 彼女はインタビューした録音テープをAIに読み込ませ、「〇〇百文字で、こういう感じの記事にして」と指示をするそうな。しかも「結構いい感じの記事を作ってくれるよ」と言うではありませんか。「もうちょっとカジュアルに、とか、もっと固い感じで、と指示すればちゃんとそうなって出てくる。語ってないことも作り出しちゃうから、多少の手直しは必要だけれど、一から文章を作るよりめちゃくちゃ早くて便利」とAIを大絶賛しておりました。わたくしは「へえ~すごいね」と笑って聞いておりましたが、頭の中では「オワッタ~」とクラクラしておりました。しかもそのAIアプリは無料版とのこと。益々我が職業の終わりが見えた気がいたしました。

 とはいえ、この原稿は手打ちの原稿でございます。ほかのお仕事もまだクビになっておりません。それは誠にありがたいことですが、時間の問題でございましょう。その日までビクビクしながら余生を送ることになりそうでございます。

 まったく世の移り変わりの速さときたら、好奇心旺盛な子がおもちゃ売り場ではしゃぐような目まぐるしさ。はじめは頑張って合わせていても動きが早くて追い付かなくなって傍観してしまう。今のツガエはそんな傍観状態でございます。

 先日観たテレビ番組では20代の女性タレントさまが「人間の友人とは楽しい話をして、悩み事はAIに聞いてもらう」とおっしゃっていたのを聞きました。また違う番組では「恋人はAI」というツワモノが現れ、「俺の存在価値は?」と男性ホストがショックを受けておりました。いよいよ友情も恋愛もAIと育む時代に突入したようでございます。そのくらい話し方も人間に近く、気の利いた会話ができるまでに進化しているということ。それこそ一人暮らしの高齢者の茶飲み友達として活用できるのではないでしょうか。

 さて、今週も兄は上々なご機嫌でございました。でも、もうみなさんと並んでリビングで過ごすことはないのかもしれないと寂しい気持ちになりました。4週連続わたくしの面会時には、いつも兄は部屋で独りぼっち。ご飯粒などが落ちているところを見ると、お食事もお部屋でスタッフさまに食べさせていただいているように推測いたします。スタッフさまに兄が最近どんな様子か伺えばいいのですが、聞いたところで何もできない自分を思い、毎回なんとなく聞きそびれてしまいます。

 AIなら兄が暴言や悪態をついたとき、どう答えるのでございましょうか。今は「おっしゃっている意味が分かりません」を繰り返すのかもしれませんが、いつかの日か上手になだめてくれる認知症対応型AIが現れるかもしれない。そんな期待をしております。

 期待といえば、長年待ち続けているのは、認知症の特効薬でございます。進行を緩やかにする希望の薬として現れたアルツハイマー新薬「レカネマブ」も思ったほどの効果が見られず、費用対効果として年間約300万円は高すぎると評価されたようでございます。特効薬など夢の夢で、今のところ認知症患者は増えるばかり。100歳までボケずに生きた高齢者の「爪の垢」が特効薬になるなんてことはないのでしょうか。

 よく言われている予防法は、肥満や高血圧、糖尿病などの生活習慣病にならないようにする(なっても早期に対処する)こと。適度な運動とバランスのいい食事、質の良い睡眠は優等生の理想ですが、そういう基本を心がけることしか今はすがるものがございません。

 それでいうとわたくしが今一番心配なのは肥満でございます。週1回の平泳ぎではやはり痩せないようで、日々自分の重さが負担に感じる昨今。気になってBMI(体格指数・体重㎏÷身長mの2乗)を計算してみましたらなんと23.9。標準が18.5~25なので限りなく肥満寄りの標準でございました。「標準だから大丈夫」と慢心することなく「もうこれ以上は太れない」という危機感を持って暮らしていこうと決意したツガエでございます。

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文/ツガエマナミコ

職業ライター。女性62才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現66才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。

イラスト/なとみみわ

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