リハビリ特化型デイサービスとデイケアの違いとは? 費用・サービス・選び方 医療保険デイケアとの違いも|専門家が解説
デイサービスの中でもリハビリに特化したリハビリ特化型デイサービス。一方、デイケアでもリハビリを行える。どちらも日帰りで通い、機能訓練や生活に必要な運動を行えるが、対象者や目的、リハビリ内容、費用などにはそれぞれ特徴がある。そこで、ケアマネジャーの資格をもつ中谷ミホさんに解説いただいた。
この記事を執筆した専門家
中谷ミホさん
福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級。X https://twitter.com/web19606703
似ているが異なる「リハビリ特化型デイサービス」と「デイケア」
「リハビリ特化型デイサービス」と「デイケア(通所リハビリテーション)」、どちらも介護保険サービスを利用して、リハビリを受けられる場所ですが、違いがよくわからないという人も多いのではないでしょうか。
どちらも日帰りで施設に通い、リハビリや機能訓練を受けられますが、目的や対象者、リハビリ内容、費用などに違いがあります。
この記事では、2つのサービスの違いを比較し、それぞれに適した人の特徴や利用時のポイントをご紹介します。
利用目的や対象者など項目別に違いを解説
目的、リハビリ、訓練内容など、リハビリ特化型デイサービスとデイケアの6つの項目にわけてその違いをわかりやすく解説します。
1.目的
リハビリ特化型デイサービス
筋力や体力の低下を防ぎ、日常生活動作(ADL)の維持・向上を目指しています。介護予防を目的に利用する人も多く、運営主体は民間企業やNPO、社会福祉法人などさまざまです。そのため、事業所ごとに特色やプログラム内容が異なります。
デイケア(通所リハビリテーション)
医師の指示に基づいて行われる専門的なリハビリを通じ、身体機能の回復や維持を図ることを目的としています。病院や介護老人保健施設(老健)、介護医療院などに併設されており、入院でのリハビリを終えた後も、引き続きリハビリを受けたい人によく利用されています。
2.対象者
リハビリ特化型デイサービス
主に要介護1〜5の認定を受けた人が対象ですが、自治体によっては要支援1〜2の人も介護予防サービスとして利用できる場合があります。
デイケア(通所リハビリテーション)
要支援1・2、要介護1〜5まで幅広く対応しており、介護度による利用制限はありません。
3.職員の体制
2つのサービスで最も大きな違いは、医師が在籍しているかどうかです。
リハビリ特化型デイサービス
基本的に常勤医師は在籍していません。介護・看護職員に加えて、機能訓練指導員として、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)などの有資格者が配置されています。
デイケア(通所リハビリテーション)
常勤医師が必ず1人以上在籍し、介護・看護職員に加えて、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)といったリハビリ専門職の配置が義務付けられています。医療的ケアが必要な人には安心できる体制といえるでしょう。
4.リハビリ・訓練内容
リハビリ特化型デイサービス
機能訓練指導員によるマシンを使った筋力トレーニングや体操を行います。プールでの水中運動を取り入れているところもあります。個別プログラムだけでなく集団プログラムも多く、ほかの利用者と一緒に楽しみながら運動に取り組めます。
デイケア(通所リハビリテーション)
医師とリハビリ専門スタッフによる専門的なリハビリを受けられます。医師が作成した指示書のもと、一人ひとりの状態に合わせた1対1の個別訓練が中心となり、より専門性の高いリハビリが受けられます。
5.サービス内容
リハビリ特化型デイサービス
利用者の自宅と施設間の送迎とリハビリ・訓練がサービスの中心です。入浴や食事は提供されない場合が多く、3時間程度の半日型が一般的です。短時間で効率的にリハビリを受けたい人に向いています。
デイケア(通所リハビリテーション)
リハビリに加えて食事や入浴も提供されることが多く、利用時間は3~6時間が一般的です。リハビリだけでなく、日常生活のサポートも受けられる点が特徴です。
6.費用の目安
以下は、3〜4時間利用した場合の1回あたりの基本料金を比較したものです。
(介護保険1割負担の場合。2割・3割負担の人は2倍・3倍になります)
リハビリ特化型デイサービス(通常規模型の場合)
要介護1:370円
要介護2:423円
要介護3:479円
要介護4:533円
要介護5:588円
デイケア(通常規模・病院または診療所の場合)
要介護1:486円
要介護2:565円
要介護3:643円
要介護4:743円
要介護5:842円
デイケアの方が1回あたり110〜250円程度高く設定されており、要介護度が高くなるほど差額も大きくなります。この料金差は、医師やリハビリ専門職の配置、専門的なリハビリ内容によるものです。
たとえば、要介護2の人が月8回利用した場合、デイケアの方が月額1,100円程度高くなります。 長期的に利用する場合は、この費用差も考慮したいポイントです。
なお、実際には、この基本料金にサービス加算や食費などが加わりますので、契約前に月額費用の目安を確認しておきましょう。
どちらが適しているのか?リハビリ特化型デイサービスとデイケアの選び方
どちらを選ぶ?
●体力維持や楽しみながらの運動が目的 → リハビリ特化型デイサービス
●医学的管理下での専門的なリハビリテーションが必要 → デイケア
●状況に応じて使い分けたい→ 併用も検討
・実際にリハビリ特化型デイサービスを利用している例
79才女性(要介護1)。足腰の衰えと転倒の不安から、下肢筋力の強化やバランス能力の向上を目的に週2回利用しています。
・実際にデイケアを利用している例
84才男性(脳梗塞後の片麻痺、要介護3)。介護老人保健施設を退所後も機能維持と回復を目的に、週3回デイケアを利用してリハビリを続けています。
併用は可能 ケアマネに相談を
必要に応じて2つサービスの併用は可能です。しかし、介護保険には利用限度額があり、限度額を超えると、超過分は全額自己負担になるため注意が必要です。担当のケアマネジャーと相談して無理のない利用計画(ケアプラン)を立てましょう。
また、多くの事業所では「体験利用」を行っていますので、実際の雰囲気やサービス内容を確認してから利用することをおすすめします。
医療保険で利用できるデイケアも
介護保険ではなく、医療保険が適用されるデイケアもあります。専門的な治療プログラムが受けられるのが特徴で、代表的なものが「重度認知症デイケア」や「精神科デイケア」です。
重度認知症デイケアとは
認知症デイケアは、医師に認知症と診断され、行動・心理症状が著しい人を対象としたデイケアです。医療保険適用のため、介護度は問わず、年齢制限もありません。主に精神科クリニックや専門医療機関で行われています。
精神科デイケアとは
精神科デイケアは、精神科病院や診療所が開設する通所型リハビリテーション施設です。精神科医療機関に通院している方を対象とし、日中の一定時間を過ごしながら、社会復帰や生活リズムの改善、対人関係の訓練などに取り組みます。対象年齢は施設によって異なります。
利用者はさまざまなプログラムに参加することで、社会生活機能の回復や就労を目指します。健康保険が適用されるほか、条件を満たす場合は自立支援医療制度の利用により、費用負担を軽減できます。
医療保険と介護保険は別の制度であるため、重度認知症デイケアを利用しながら、介護保険のデイサービスやショートステイなどのサービスも併用することが可能です。ケアマネジャーと相談しながら、ご本人の状態に合わせて、必要なサービスを組み合わせて利用しましょう。
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体力維持が目的ならリハビリ特化型デイサービス、専門的なリハビリが必要ならデイケアと、それぞれに特徴があります。ケアマネジャーとよく相談し、利用するご本人の状況や目的に合わせて利用しましょう。