デイサービスにプール!? 話題の水中リハビリができる特化型デイサービスとは?気になる利用方法を専門家が解説
「デイサービス」では、レクリエーションや入浴、食事などのサービスを提供するのが一般的だが、利用者のニーズに合わせた「特化型」と呼ばれるタイプもある。中でも注目を集めているのが「リハビリ特化型」でプールのあるデイサービス。施設にプールを備え、水中で行うリハビリに力を入れているのが特徴だという。今回は、そんなプールに特化したデイサービスについて、どんなことをするのか、準備物、利用方法などを介護護職員やケアマネジャーの経験もある中谷ミホさんに解説してもらった。
この記事を執筆した専門家
中谷ミホさん
福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級。X(旧Twitter)https://twitter.com/web19606703
プールに特化したデイサービスとはどんなところなのか
リハビリ特化型でプールに力を入れているデイサービスでは、施設内に温水プールを完備し、水中での運動や歩行訓練などを取り入れています。
水の浮力によって関節への負担が軽減されるため、陸上では難しい動きも水中なら行いやすくなります。特に膝や腰に痛みを抱えるかたや体力に自信のないかたにとっては、身体に負担が少ない水中での運動は、安全で効果的なリハビリ方法です。水温も適切に管理されているため、寒さを感じることなく年間を通して快適に利用できます。
さらに、多くの事業所では専門のトレーナーや理学療法士、看護師などが常駐しており、利用者一人ひとりの状態や目標に応じた運動メニューを提供しています。
1日の流れの例
プールがあるデイサービスは、サービス提供時間を午前の部と午後の部に分け、それぞれ3時間の2部制を採用しているところが多くあります。
おおまかなスケジュール(午前の部の場合)
8:00~ 送迎(自宅までお迎え)
9:00~ 健康チェック(体温・血圧・脈拍など)
9:30~ プールでのリハビリ・水中運動、更衣・水分補給
11:00~ 送迎(自宅へお送り)
プールではどんなことをするのか
利用する事業所によってメニューはさまざまですが、一般的に以下のような活動が行われています。
●水中ウオーキング(歩行訓練)
浮力によって体重が軽減するため、膝や腰への負担が少なく、陸上での歩行が困難なかたでも取り組みやすいのが特徴です。
●水中筋力トレーニング
水の抵抗を利用した筋力トレーニングは、体に大きな負荷をかけずに筋力アップを目指せます。簡単な動きでも水の抵抗があるため、効果的な運動になります。
●水中エアロビクス
水中で音楽に合わせて体を動かします。運動機能の向上だけでなく、気分転換やストレス解消にもつながります。
これらの水中リハビリは、筋力やバランス能力の維持・向上だけでなく、血行促進、リラックス効果、心肺機能の向上にも効果があります。また、水の抵抗や浮力によって陸上では難しい動きも安全に行えるため、転倒リスクが少なく安心して取り組めるのも大きな魅力です。
利用時に必要な持ち物
事業所によって違いはありますが、基本的な持ち物をご紹介します。
<水着>
・ 脱ぎ着しやすいものを用意しましょう。
・事業所によってはレンタルも可能です。
→「デイサービスのプールで水着を1人で脱げない」「着替えを手伝ってもらう罪悪感も」着脱しやすい高齢者のための水着開発秘話
<スイムキャップ(水泳帽)>
・衛生管理のため、ほとんどの事業所で着用が必須となっています。
・事業所によってはレンタルも可能です。
<タオル>
・事業所によってはレンタルも可能です。
<ゴーグル>
・水着やタオルを持ち帰るために、防水性の袋やビニール袋があると便利です。
利用料金はどのくらい?
リハビリ特化型でプールがあるデイサービスも、通常のデイサービスと同じように介護保険が使えます。自己負担の割合は、所得に応じた1割から3割ほどが目安です。
要支援のかたは月ごとの定額制、要介護のかたは1日ごとの利用料がかかる仕組みです。
水着やタオルのレンタル代、おやつ代などは基本的に全額自己負担となります。また、特別なサービスを利用する場合は追加料金がかかります。たとえば、専門スタッフが個別に水中リハビリを行う場合の「個別機能訓練加算」です。
金額は事業所ごとに違うので、見学や契約前の説明時にしっかり確認しておくことが大切です。
リハビリ特化型でプール特化型のあるデイサービスを利用するための流れ
プールが利用できるデイサービスに通いたい場合も、基本的な手続きの流れは通常のデイサービスと同様です。
【1】要介護認定の申請
まだ要介護認定を受けていないかたは、お住まいの市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談し、要介護(要支援)認定の申請を行います。
【2】ケアマネジャーに相談
要介護(要支援)認定を受けたら、ケアマネジャーに「プールのあるデイサービスを利用したい」と希望を伝えます。
【3】デイサービスの見学・体験利用
実際に見学に行き、可能であれば体験利用もしてみましょう。
【4】契約
利用したいデイサービスが決まったら、重要事項の説明を受け、契約を結びます。
【5】利用開始
ケアプランに基づき、デイサービスの利用が始まります。
ケアマネジャーは、地域にあるさまざまな介護サービス事業所の情報を把握しています。「プールがあるデイサービスに通いたい」「リハビリに力を入れているところがいい」など、希望を具体的に伝えることで、ニーズに合った事業所を紹介してもらいやすくなります。
すでに利用したいデイサービスが決まっている場合は、その事業所が利用可能かどうかケアマネジャーに確認してもらいましょう。
通所先から別のデイサービスに変えることはできる?
すでに通っているデイサービスがある場合でも、介護保険の支給限度額の範囲内であれば、プールが利用できるデイサービスと併用することができます。例えば、週3回デイサービスを利用している場合、そのうち1回をプールのあるデイサービスに変更するといった利用方法です。
また、現在利用中のデイサービスから、プールのあるデイサービスへ完全に切り替えることも可能です 。
どちらの場合でも、介護サービスの利用内容を変更する際は、まず担当のケアマネジャーに相談が必要です。利用するかたの状態や介護保険の支給限度額などを考慮しながら、最適な利用プランを提案してもらえます。
プールなどを活用したリハビリ特化型デイサービスとデイケアのちがい
リハビリが受けられる施設として、もうひとつ「デイケア」があります。デイケアは介護老人保健施設などに日帰りで通い、医師の指示に基づいてリハビリを受けられるサービスです。デイサービスよりも理学療法士や作業療法士などの医療系スタッフが多く配置されており、退院後も継続してリハビリを希望する場合によく利用されます。医師の指示と管理のもとでリハビリが行われる点が、リハビリ特化型デイサービスとの大きな違いです。
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リハビリ特化型でプールがあるデイサービスは、無理なく楽しく身体を動かせるのが魅力です。少しでも興味をもったかたは、まずは担当のケアマネジャーに相談し、見学や体験から始めてみましょう。