酒量・住む場所・夜食…12の習慣で差がつく!「70才で認知症になる人、100才でもならない人」を全米トップ病院の医師が解説
一方、認知症予防に繋がる生活習慣には次のような趣味や活動が推奨されるという。
「認知症予防で重要なのは、脳の様々な領域を複雑に使う習慣を、できるだけ長く続けることです。たとえば趣味なら、4人で行なう麻雀でも良いでしょう。会話をしながら相手の手を読み、自分の戦略を考えるという行為は、脳の広範なネットワークを使います。人との関わりのなかで脳を複合的に使う活動は、認知症予防として効果的です」
最近はスマホでパズルゲームやSNSに興じる中高年が増えているが、脳の認知機能にとってはマイナスに働くことも。
「特にSNSの過度な利用はうつ病のリスクを高める可能性が指摘されています。うつ病の人は認知症リスクが約2倍だったとの大規模研究の報告もあり、むやみにSNSを見続けるのは避けたほうがいい。1日30分でも、年単位で考えれば膨大な時間になります。その時間を読書に変えれば脳が活性化され、認知症予防に繋がります」
ビール2缶超でリスクが約22%上昇。夜遅く食事を摂る習慣もNG
日々の食生活も認知症リスクの観点から大きな影響があるという。
「2023年に医学誌『JAMA(米国医師会雑誌)』に掲載された韓国の約400万人を解析した研究では、1日350mlの缶ビール2本分相当を超える量のアルコールを摂取していた人は、それ以下の人に比べ認知症発症リスクが約22%高かったと報告されました」
食事では「何を食べるか」だけでなく「いつ食べるか」も重要だという。
「カップ麺や脂っこいものを好み、夜遅く食事を摂る習慣がある人は肥満や悪玉コレステロールの増加に繋がりやすいとされています。それらはアルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβなどの蓄積にも繋がるので、食事の時間帯には注意が必要です」
そのほか認知症リスクを高める12の要因を下の表にまとめた。
一方、診断や治療の面では近年は目覚ましい進化があるという。
「2025年5月、米国ではアルツハイマー病の診断に血液検査が利用できるようになりました。日本でも1〜2年後には実用化されると思われます。この技術がアルツハイマー病以外の認知症にも広がれば、より早期の診断、的確な予防法や治療法を選択できる時代が来るかもしれません」
認知症医療の可能性に希望を持ちつつ、予防のために今日からできる生活習慣を実践したい。
認知症リスクを上げる要因12
【1】換気扇を回さずに料理する
極小粒子のPM2.5が脳血管にダメージを与えるリスクが。火を使う料理中に換気扇を回さないと室内のPM2.5濃度が跳ね上がる。
【2】幹線道路沿いに住んでいる
交通量の多い場所に住んでいる人ほど認知症リスクが高いという報告が。排気ガスに含まれるPM2.5の影響が指摘されている。
【3】部屋の鴨居が低い
頭部への衝撃が認知症リスクを高める。鴨居が低く頭をぶつけやすいといった日常の些細な点にも注意が必要。
【4】1日8時間以上座っている
糖質・脂質代謝の悪化や体内の炎症反応などで脳機能低下に繋がる。
【5】缶ビールを毎日2缶以上飲む
缶ビール(350ml)2本を超えるアルコール摂取で、認知症発症リスク約22%増加の報告が。
【6】甘い飲料を日常的に飲む
砂糖や果糖入り飲料は認知症リスクに直結する「2型糖尿病」のリスクを高める。
【7】夜食でカップ麺を食べる
悪玉コレステロールを増やす飽和脂肪酸を夜遅くに摂取すると認知症のリスクに。ハム、ベーコンなど加工肉にも同様のリスクが。
【8】カラオケによく行く
難聴は認知症リスクの大きな要因のひとつ。騒がしい居酒屋やスナックに長時間いることもリスクになる。
【9】視力低下を放置する
視力低下は認知症の発症リスクを1.47倍に高めるという報告が。白内障の放置もリスクを高める要因に。
【10】SNSを長時間見る
SNSの過度な利用がうつ病のリスクを高める。うつ病患者は認知症リスクが2倍になるという報告も。
【11】友人がいない
退職後に人間関係が途切れる、妻との会話がないなど、「社会的な孤立」が認知症リスクを高めることが分かっている。
【12】定年後に完全リタイアする
上に関連する項目。社会的刺激や知的刺激がなくなることが認知症を加速させる要因になる。
撮影/大坪尚人(講談社写真映像部)
※週刊ポスト2025年8月29日・9月5日号
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