猫が母になつきません 第466話「3年ぶり」
最後に墓参りに行ったのは母が20年前に死んだ父を毎日探しているさなか、お墓に行けば少しは納得するかと連れて行った時でした。その後母も亡くなり、なんとなく「行く気がしない」と思っていたらいつの間にか3年が経っていました。
母の遺骨はまだ納骨していません。生前母にお墓に入りたいか?ということを何度かたずねたことがあるのですが、毎回明確な答えを得ることができませんでした。仲の悪かった姑と一緒はいやなんじゃないの?とか、父のことも文句ばっかり言ってたけどやっぱり一緒がいいの?とかいろいろ聞いたのですが、まだ元気だった母はお墓に入ることなんて考えたくもないようでした。
覚悟はしていたものの3年放置したお墓はひどい状態で、落ち葉は堆積しているわ、御影石に錆が出て赤いシミになっているわ、雑草が生えているのは当然として謎の木まで生えてきている。久々にここに来ることにしたのはさすがにまわりに迷惑をかけているんじゃないか?と心配になったからでした。普通の霊苑なので、お隣にもお墓があります。ちなみに霊苑は今住んでいる家からは車で30分くらいの場所。決して遠いわけではありません。ほんとにただただひとりでここに来る気がしなかっただけなのです。
雑草を抜き、石の赤い錆をごしごしこすっていると小雨が降ってきました。とにかく終わらせたかったので掃除を続けているとひとりでお参りに来た年配の男性が「漂白剤を使うととれますよ」と教えてくれました。でも漂白剤はちょっと乱暴な気がするし、匂いも気になりそうだと思って、ネットで石材の錆び取り専用の液剤を買い、翌週もう一度お墓に行きました。無事に錆はとれましたが、しゃがんでごしごしし続けたせいで背中が痛くなりました。もうぐったり。
私はお墓にはなんの思い入れもなくて、ただ「そのスペースが汚くなっているのが嫌」という綺麗好きが発動しただけで掃除としか思っていません。それに私は家族と一緒にお墓に入るなんてごめんこうむるので、死んだら焼き切るか、散骨か、とにかく遺骨を残さないよう遺言するつもりです。実際母方の祖父母は遺骨を残さない焼き切りを選んでいて、すっきりしていいなと思いました。母の遺骨も私が死んだ時に一緒に散骨してもらおうかな。でも混ざったらいやだなぁ(悩)。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母と暮らすため地元に帰る。ゴミ屋敷を片付け、野良の母猫に託された猫二匹(わび♀、さび♀)も一緒に暮らしていたが、帰って12年目に母が亡くなる。猫も今はさびだけ。実家を売却後60年近く前に建てられた海が見える平屋に引越し、草ボーボーの庭を楽園に変えようと奮闘中(←賃貸なので制限あり)。