母にも自分にもメリットを! 遠距離介護を選んだ理由
わたしは、自分の生活を守るうえで、まず、働き方を見直しました。
具体的には、介護離職してフリーランスとして働くことを選んだのです。介護離職を悲惨と考える方も多いのですが、貯金をし、副業を持ち、準備していたわたしは、とくに大変なこともありませんでした。
わたしのように、自分でスケジュールを組み立てられる仕事であれば、介護との折り合いをつけることができます。しかし、時間を拘束される仕事の場合、イレギュラーで起きる介護は、やっかいです。
例えば、デイサービスに行きたくないとごねる母と90分話し、最後は母が納得してくれたことがあったのですが、これもわたしに時間の余裕があるからできたことです。決められた時間に出勤しないといけない仕事なら、始業時間を気にし過ぎてイライラし、怒鳴っていたかもしれません。
このように介護保険制度を利用し、母の態勢を整えたのと同時に、介護者として自分の生活を守るための態勢も同時に整えたのです。
「介護は無償の愛であり、自己犠牲の上に成り立つ」と考える日本人の美徳意識は、介護者を追い詰めることもあるのではないでしょうか。わたしは自分の生活を守るべく、介護保険制度をフル活用していますし、頼れる人には積極的に頼っています。
母がお世話になっている、コウノメソッド(名古屋フォレストクリニック院長・河野和彦先生の認知症治療)の中に、「介護者保護主義」というコトバがあります。もし、認知症の方と介護者、一方しか救えない場合は介護者を優先しなさいという意味です。
介護される人のことばかりを考えてしまう、心優しい介護者はたくさんいます。親族やご近所の目を気にして、いい介護者を演じてしまう方もいます。しかし、介護される人のことを本当に考えるならば、もっと介護者ご自身をいたわってください。介護する人が元気でないと、介護される人も不幸です。
今日もしれっと、しれっと。
【関連記事】
工藤広伸 (くどうひろのぶ)
祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母(認知症+CMT病・要介護1)のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間20往復、ブログを生業に介護を続ける息子介護作家・ブロガー。認知症サポーターで、成年後見人経験者、認知症介助士。
ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(http://40kaigo.net/)