介護をネガティブ体験にしないコツ<プロが教える在宅介護のヒント>
これからどうなる?「予後予測」を受け容れ、“現在”と“すこし未来”の両方を見る
介護が必要な期間がどれくらい続くのか、本当のところは誰にも分かりません。僕が担当したケースでは、終末期の診断を受けていた人が、退院して家に帰ったら食事がとれるようになり、主治医が驚くような回復を見せたこともありました。
大切なご家族の今後のことは、知りたくないこともあると思います。しかし、終末期に限らず医師が示す今後の見通し「予後予測」は科学的根拠があるので、概ね正確です。そして僕らケアマネジャーもその情報を共有しています。また、仕事上の知識と経験から、状態がどのように変化していくと思われるか、それによって生活にどのような影響が出るか、予測することができます。ご家族は介護が始まったときから、主治医やケアマネジャーから伝えられる「予後予測」を受け容れ、“現在”と“すこし未来”の両方を見ることが良いと思います。
もちろん、人生の主役はご本人なので、その意思や状況によっては、ご本人に「予後予測」をお伝えするかどうかの配慮も必要になります。
とくに介護度が高い人の場合は、変化のスピードが思った以上に速い場合もあります。「予後予測」を知れば、大事なことを優先することができ、これからの時間の長短にかかわらず、時間を豊かに使えるのではないでしょうか。その時間の中で、変化を受け容れる覚悟を持たれる方が多いです。
介護が終わったときに、ご家族にとっても大事なことができたという思い出があると慰めのひとつになるはずです。介護をネガティブ体験にしないためにも「予後予測」を聞くのは大切なことなのです。
分からないことや、心配なことがあれば、ケアマネジャーに聞いてみてください。僕たちケアマネジャーは、ご家族が安心して生活を続けることができるよう、力になりたいと思っています。
森岡真也
株式会社モテギ新宿ケアセンター長、モテギケアプランニング新宿管理者。主任介護支援専門員(ケアマネジャー)・社会福祉士・介護福祉士。大学では文化人類学を専攻していたが、介護のアルバイトと家族介護をきっかけに現職を志した。介護保険利用者の相談援助の傍ら、区内の介護専門職のネットワークづくり、市民を交えた「食支援」活動に奔走する。「高齢になると十分な食事がとれず、栄養障害を起こす人が多いこと、食支援が必要なことを知ってもらいたい」。
取材・文/下平貴子
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