知らないと損する!介護保険外サービスで頼めること 特徴やメリットを専門家が解説
「介護保険外サービス」が、いま注目されはじめている。介護が始まると活動が制限されてしまうと不安を抱えている人は多いだろう。しかし、快適に過ごすための制度やサービスは想像以上に充実している。介護保険外のサービスをうまく使いこなして、自身も家族も満足のいく介護生活を送ろう。
介護保険外サービスとは?特徴を解説
埼玉県に住む主婦の高木由美子さん(58才・仮名)が困り果てた顔で言う。
「新潟の実家に80才の母がひとりで住んでいるのですが、認知症が気になり始めていて。誰かに病院へ付き添ってほしいけれど、いつも来てもらっているヘルパーさんに相談したら『それは私たちにはできない』と言われてしまって」
2000年から始まった介護保険制度。厚労省の発表によると居宅サービス受給者数は404万人にものぼる。利用者の負担が最小限のため安心感がある一方、公的な制度のため、使えるサービスが限定されており、高木さんのように不満を覚える人も少なくない。
老人ホーム検索サイト「LIFULL介護」編集長で介護施設入居アドバイザーの小菅秀樹さんが解説する。
「介護保険は要介護度によって給付される限度額が定められています。そのため、人によっては受けられるサービス内容に不足を感じる場合がある。
そうしたとき頼りになる、介護保険を使わず自費でサービスを受ける『介護保険外サービス』が、いま注目されています。保険制度に縛られず、柔軟な使い方ができる点が介護保険外サービスの特徴です」
介護保険制度はできるサービスとできないサービスが厳格に線引きされており、認められていないサービスを行うことは法律違反となる。
「公的サービスでも病院送迎は可能ですが、病院の入り口まで。病院内では看護師などに引き継がれ、『名前を呼ぶまで座って待っていてください』となる。
認知症を患っていると、医師との会話を覚えられなかったり、会計がスムーズに行えないという問題もある。介護保険外サービスであれば、病院までの送迎はもちろん、待ち時間や医師の話の詳しいメモ、会計を含めてすべて付き添ってくれる。こうした病院の介添えサービスは、これから利用者が増えるでしょう」(小菅さん)
介護保険外サービスの事業所、見つけ方
介護保険外サービスの事業所は、どう見つければいいのか。小菅さんが解説する。
「保険外サービスは、地域のケアマネジャーたちも把握しきれていないのが現状。子供がインターネットで調べたという利用者が多い。リサーチする際は、まず『○○市 介護保険外 家事代行』などのキーワードで検索し、サービス内容や価格などを比較する。
『職員全員が有資格者』などの情報をサイトに掲載している事業所は信頼できるでしょう。1か所に限定せず、最低でも3か所程度を比較すること。事業所に問い合わせると、担当者が自宅へ訪問し、無料の打ち合わせを行います。顧客満足度の高い事業所は、利用者の経歴などからしっかりヒアリングするので、その態度も見極めどころです」
保険外サービスが注目される背景
かゆいところに届かない介護保険の“孫の手”となるのが介護保険外サービスというわけだが、需要の高まりには理由がある。終末期医療に詳しい看護師の大軒愛美(おおのきまなみ)さんが、その背景について話す。
「高齢者の数が増えたことや、核家族化などが影響していると考えられます。昔は3世代が同居して若い世代が高齢者を支えていましたが、いまは高齢者のひとり暮らしも当たり前。同居であっても、共働きが常識になり、家族の誰かが在宅で支え続けることが難しくなりました」
最近では、介護保険外サービスを含めたケアプランも検討され始めている。
「介護保険外サービスの大手事業者を取材したところ、顧客の半数近くが要介護認定を受けている80代以上の高齢者で、なかでも要介護1~2のかたの割合が多かった。介護保険サービスで不足している部分を保険外サービスで補おうと試みるケースも増え始めています」(小菅さん)
介護業界でも、まだ広く知れ渡っていない保険外サービス。うまく利用すれば介護がぐっと快適なものになる。
介護保険内・保険外の違い・料金相場
介護保険の範囲内で受けられるサービスはどのようなものか。居宅介護支援事業などを手がける鐵社会福祉事務所代表の鐵(てつ)宏之さんが説明する。
「ひとり暮らしの高齢者であれば、トイレやお風呂、利用者本人の部屋など日常生活で使う範囲の掃除が対象です。
換気扇の掃除や家具の移動、庭の手入れのような大掃除に該当するものや、家族が同居している場合に、ほかの家族の部屋の掃除などは行えません。来客の対応、ペットの世話をすることもできません」
妻が要介護者で高齢の夫がいた場合も、食事や洗濯は基本的に妻の分のみとなる。
「保険内サービスは、 1回あたり20~30分で掃除や洗濯、食事の用意などをこなすため、必要最低限のことしか行う余裕がないのです」(小菅さん)
一方の介護保険外サービスは、市区町村が提供するものから民間企業や地域住民が行うものまで幅広くあり、料金も一部自己負担から全額自費までさまざまだ。
介護保険外サービス 地域ごとの1時間の料金相場
東京、大阪:5000~6000円
政令指定都市:2700~5000円
それ以外の地域 2200~4500円
※LIFULL介護調べ