極寒の岩手に暮らす認知症の母の生活を守る工夫、ブログで反響が大きかった地味でも便利なアイテム3選
岩手・盛岡で暮らす認知症の母を遠距離介護している作家の工藤広伸さん。できる限り実家で暮らしたいという母のために、さまざまな道具を駆使して在宅介護を続けている。そんな工藤さんが発信するブログで反響が大きかったというアイテムとその使い方を教えてくれた。寒さ厳しい岩手の冬、介護生活を乗り切るアイディアとは?
執筆/工藤広伸(くどうひろのぶ)
介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(81才・要介護4)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。
著書『親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること』『親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと』(翔泳社)など。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/、Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442
介護ブログで反響が大きかったアイテムと使い方
わたしが運営している介護ブログ『40歳からの遠距離介護』で、2024年に読者の反響が大きかった、地味だけど認知症介護に役立つグッズを3つご紹介します。
1.スイッチカバー
1つ目は、「スイッチカバー」です。
2020年2月、実家のある岩手県盛岡市の朝の最低気温がマイナス10度以下になりました。訪問介護で実家に来たヘルパーさんがある異変に気づき、東京のわたしに連絡してきたのです。
ヘルパーさん:「息子さん、大変です!水道管が凍結して、台所の水が出ません!」
実家はミネラルウオーターを購入していなかったので、水道の水が出ないと、母が顔を洗ったり、歯を磨いたりできなくなるだけでなく、お薬まで飲めなくなってしまいます。
盛岡の業者に急いで電話をすると、他の家も同じように水道管が凍結していて、早くても翌朝の対応になるとのこと。母に台所以外の水道を確認してもらったところ、浴室の水道は使えることが分かったので、業者に水道管を解凍してもらうまでの間は、その水で生活するようお願いしました。
もっと寒い朝でも水道管は凍結しなかったのに、なぜ急に凍ってしまったのでしょう。
実家に来た業者に台所の水道管が凍結した理由を聞くと、母が台所の水道管凍結防止ヒーターのスイッチを誤って切ってしまったからと言われました。浴室のほうのヒーターのスイッチは切らなかったから、水を使えたのです。
そもそもヒーターのスイッチがどこにあるのか、わたしは把握していなかったのですが、母がよく使う給湯器のリモコンの真下にあって、無意識のうちにスイッチを切ってしまったようでした。
応急処置としてヒーターのスイッチをビニールテープで覆ってもらったのですが、テープだけでは母がスイッチを切る可能性がありました。何かいい方法がないかネットで検索したところ、スイッチカバーという商品を見つけ、購入したのです。
ヒーターのスイッチは年中つけっぱなしにしておいて構わないと業者が言っていたので、瞬間接着剤でスイッチカバーを付けたところ、母はスイッチを触れなくなり、水道管の凍結もなくなったのです。
ブログ読者のご家庭でも、認知症のご家族が誤ってスイッチを切るケースがあるから、反響があったのだと思います。
2.ドアクローザー
2つ目は、「ドアクローザー」です。
ドアクローザーは、壁とドアをワイヤーでつなぎ、ドアを開けるとワイヤーの力で扉が自動で閉まるシンプルな構造です。
なぜドアクローザーを購入したかというと、母がドアを開けっぱなしにしてしまい、せっかくエアコンで冷やしたり暖めたりした空気を、部屋の外へ逃がしてしまうからです。
夏は室温が下がらないので熱中症のリスクがありますし、冬は寒い部屋で生活しなくてはなりません。認知症の母に扉を閉めるようお願いしても、すぐに忘れてしまうので、扉が開けっぱなしになって困っていました。
ドアクローザーを設置してからは、扉が必ず閉まるので、エアコンの冷暖房の空気は逃げなくなりました。おそらく同じ悩みを抱えている介護者が全国にいるのでしょう。ブログにも大きな反響がありました。
今冬も冷え込みは厳しく、こうしたアイテムは母の生活を守るのに欠かせません。もうひとつ、ブログで反響が大きかった身近なアイテムをご紹介します。
3.薬の一包化をするための袋
3つ目は、薬を一包化するための袋です。「薬の一包化」とは服用のタイミングが同じ複数の薬を、1つの袋にまとめることを言います。
高齢になると飲む薬の種類が増えますし、朝・昼・夕・寝る前など薬を飲む回数も増えます。また食前・食間・食後など、薬ごとに飲むタイミングも違うため、薬の管理が難しくなります。
さらに認知症になると、決められた用法や用量を守ることが難しくなるので、薬を一包化することで、飲み過ぎや飲み忘れのリスクを減らせます。
わが家では現在、薬の一包化は薬局にお願いしています。薬剤師さんが包装シートから錠剤やカプセルを取り出して、別の袋に1回の服用分をまとめて包装してくれます。コストはかかりますが、認知症の母は自分でお薬の準備ができないので、やむを得ません。
本当は薬局に薬の一包化をお願いしたほうが間違いはないのですが、薬の一包化を知らないかたや、お金をかけてまでやらなくてもいいと考えるかたもいます。
そんなとき、こうした袋があると、自分で薬の一包化をラクにできます。錠剤やカプセルを包装シートから取り出さずに、はさみなどでカットして袋に入れて使います。
わたしがたまたま見つけたのは、一包化に活用する『ラクしてゴックン』という商品です。わが家の薬の一包化の話と合わせてブログで紹介したところ、反響がありました。
このアイテムで薬を一包化したあとは、お薬カレンダー(曜日と時間ごとにポケットが分かれているタペストリー)を併用して使うと、薬の飲み忘れや飲み過ぎの回数を減らせます。
今回ご紹介した3つのアイテムは、ここまで反響があるとは思っていませんでした。地味ですが、認知症介護をラクにしてくれるグッズです。
今日もしれっと、しれっと。