「80代の母が倒れて骨折、入院」介護の始まりに備えること、決めること 経済ジャーナリストが実体験をもとに解説「入院中に退院後のことを決めることが大事」
介護が始まるにあたっては、家族が“その先”を知っておかねばならない。酒井さんは「子供がすべきなのは判断と決断です。きょうだいがいる人は、親が元気なうちにキーパーソンを決めておくべきです」と続ける。
介護におけるキーパーソンとは、「本人の代理となり、重要な判断と手続きを行う人」を指す。
「キーパーソンの役割は、本人の意思を確認、介護保険の手続きや、介護サービスの契約、ケアプランの承認と決定、家族代表としてケアマネと話し合うこと、親族の連絡窓口になること、もしもの時の連絡先になることなど、多岐に渡ります。
キーパーソンには、親の意思を尊重しつつ、俯瞰的・客観的に物事を判断することなどが求められます。ときには、ケアマネに提案されたことを“それでいいです”とすぐに受け入れるのではなく、“もっといい選択肢はありませんか?”と最善の道を探るために、交渉をする必要もあります。
我が家の場合、親の家の近くに住んでいて、ある程度時間に都合がつく、そして介護やマネーの知識がある長女の私がキーパーソンとなりました」
→ひとりで親や配偶者を介護する「複数介護、同時多発介護」問題点と対処法を介護のプロが指南
在宅介護が始まったら常に要望や疑問を伝えて介護をアップデート
「在宅介護が始まれば、あとはケアマージャーにお任せして、プランに沿ってケアをすることになります。何かやりにくいこと、困ったことがあったら、すぐにケアマネに連絡をして、相談をしましょう。
ケアマネとの会話において大切なのは、わからないことを積極的に聞くこと、そしてなるべく要望を伝えること。
例えば『仕事の担当が変わり忙しくなりそう。週に2日は親の家に通うのが難しそうなので、介護保険サービスで何かいい方法はありますか?」「月に4回の通院にすべて付き添えないので、介護タクシーや付き添いをお願いしたいのですが、保険内でできますか?」などと、具体的に質問してみて欲しいと思います。
ケアマネさんとも相性がありますので、合わないと思ったら、別の人に変えてもらうこともできます。自分も無理せず親も心地いい介護生活を送るために、遠慮しないことが大切です」
介護の始まりから在宅介護がスタートするまでの流れと準備【まとめ】
介護認定を受けていない場合で、骨折による入院から介護が始まるケースの場合。
骨折して入院!
入院に備えて準備しておくべきもの(親に保管場所を聞いておこう)。
□マイナンバーカード
□介護保険証
□健康保険証
□後期高齢者医療被保険者証
□公費負担医療受給者証
□おくすり手帳 など
地域包括支援センターへ連絡・相談
・親が住んでいるエリアの地域包括支援センターへ
・不安や悩み、状況を共有し、今後の介護について具体的にする
・要介護認定の進め方を確認
・ケアマネを紹介してもらう
・家族の中で「キーパーソン」を決める
入院中に、リハビリが必要な場合は転院先を探す
・病院のソーシャルワーカーに相談
リハビリ病院に転院し、リハビリを行う
・ある程度自立生活が送れるまでリハビリを実施(骨折時は、最大180日間)
・この間に在宅介護の準備を進める
・ケアマネを通じて自宅で必要な福祉用具などを整える
要介護認定を受ける
・入院中でも実施可能
認定結果をもとにケアマネがケアプランを決定
・通常は1か月程度かかる。
・急を要するときは、地域包括センターに相談し、ケアマネと暫定的なケアプランを作成した上で、想定されるおおよその認定区分に応じた介護保険サービスを利用することもできる。
在宅介護スタート
・随時ケアマネに相談しながら介護生活を調整していく。
取材・文/前川亜紀