老後の幸福度が変わる!「老いを楽しめる人」と「老いを僻(ひが)む人」の決定的な違いとは?【専門家解説】
現在、100才以上の高齢者は過去最多の9万5119人(※)。長寿は喜ばしい一方で、高齢になるほど自立した生活は難しくなる。そんな老いに伴う変化を柔軟に受け入れて幸せに暮らす人もいれば、老いを僻(ひが)んで不幸な晩年を送る人もいる。さまざまなタイプの高齢者を見てきた現役の介護福祉士から、幸福のまま命を全うするにはどうしたらいいのか――リアルケースをもとに聞いた。
※厚生労働省が公表した100才以上の高齢者の数(2024年9月1日時点)。1970年以降54年連続で過去最多。
教えてくれた人
■たっつんさん/介護福祉士
介護士歴18年以上。特別養護老人ホームやリハビリのための介護施設などでのエピソードをSNSで発信。著書に『認知症の人、その本当の気持ち』(KADOKAWA)。
■砂川彰子さん/介護福祉士
Mare(マーレ)!絵画教室主宰。介護施設で介護福祉士としてキャリアを積む一方、高齢者を対象に絵画指導も行う。よみうりカルチャー横浜にて『ぬり絵で脳トレ』の講師も務める。
■藤原るかさん/介護福祉士
介護保険スタート前から、訪問ヘルパーとして働く。ヘルパーや介護福祉士の労働条件向上にも尽力。主な著書に『介護ヘルパーは見た』(幻冬舎新書)など。
会話の仕方ひとつで老後の幸福度が変わる
介護福祉士のみなさんが現場で感じ取ってきた、「老いを楽しめる人の会話パターン」と「老いを僻む人の会話パターン」を紹介する。
老いを楽しめる人の会話パターン
・常に聞き手に回り、相手の話に共感できるタイプは幸福度が高い傾向に
「自分の話を聞いてほしいという欲求は誰にでもあり、特に高齢となって人と接する機会が減るとその傾向は強くなります。しかし、そんな相手の気持ちを思いやって聞き役に回り、楽しく話せるように誘導できる共感力の高い人ほど、周りに人が集まり、幸せそうに過ごしていらっしゃいます」(介護福祉士・砂川彰子さん)
老いを僻む人の会話パターン
・人の話を聞かず、自慢話や悪口を言うタイプは幸福度が低い傾向に
自分の話を聞いてもらいたいという欲求を貫き通す人ほど、老人施設での生活に不満を抱えている人が多いというのが、介護福祉士のたっつんさんだ。
「人の話を聞かず、毎回同じ自慢話か悪口ばかり話すかたは短気でイライラしていることが多いため人が離れていき、孤独に過ごしていることが多いように見受けられます」(たっつんさん)。
コミュニケーションが幸福度を左右する
老後を幸せに生きるためのカギとは――長年、在宅介護で多くの高齢者に接してきた介護福祉士の藤原るかさんはこう話す。
「健康で楽しい老後を送るには、バランスの取れた食事や適度な運動が必要ですが、私はコミュニケーションが何よりも大切だと考えています。自宅にヘルパーが来てから認知症の進行がゆるやかになったというかたも多く、コミュニケーションによる脳への刺激が、認知症の予防になるという医学的データもあるようです」(藤原さん・以下同)
とはいえ、いまの日本の在宅介護システムでは、コミュニケーション不足になりがちだと藤原さんは言う。
ヘルパーの仕事は、身体介護(排泄、食事、入浴など)と生活援助(掃除、洗濯、調理など)に大別され、いずれも時間が限られている。しかも、2012年の介護保険制度改正時に、生活援助の時間が1回60分未満から45分未満に短縮されたからだ。
「生活援助は、主婦の仕事内容に近いため“自立支援につながらない”というのが厚労省の見解。しかし私たちはこの時間に、利用者の健康状態をチェックし、悩み事などを聞きます。こういったコミュニケーションもケアに含まれているのですが、わずか45分ではそれができません」
藤原さんは20年ほど前から海外の福祉現場を視察し、制度の違いを調べた。
「たとえば韓国では、1回の訪問時間は3時間で、そのうちの1時間はコミュニケーションに当てられます。イタリアでは、『孤立と孤独の解消』がヘルパーの仕事に組み込まれています」
とはいえ、海外の制度をうらやんでも始まらない。現状、どうしたらいいのか。
「自宅を訪れるヘルパーを必要以上に警戒する人もいますが、人となりを知る会話で、どんな反応があるかを楽しんでほしいです。そのときになって急に心を開いてと言われても難しい。早いうちからサービスを受け入れ、ケアする人ともコミュニケーションをとることをおすすめします」
取材・文/上村久留美 イラスト/たばやん
※女性セブン2024年10月17日号
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