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暮らし

「補聴器は高くて買えない」「安く買える?」補聴器の価格の悩みにアンサー【専門家が教える難聴対策Vol.11】

「補聴器は欲しいけど高すぎる」「もっと安く買えないものか」といった声もあり、価格がネックになって補聴器の購入をためらっている人は多いようだ。「最近は、安くても性能が良いものも登場してきています」と、補聴器技能者の田中智子さん。どんなものなのか、どう選んだら良いのか、詳しく解説いただいた。

教えてくれた人

認定補聴器技能者・田中智子さん

うぐいす補聴器代表。大手補聴器メーカー在籍中に経営学修士(MBA) を取得。訪問診療を行うクリニックの事務長を務めた後、主要メーカーの補聴器を試せる補聴器専門店・うぐいす補聴器を開業。講演会や執筆なども手がける。https://uguisu.co.jp/

補聴器はなぜ高い?安く買えるの?

 補聴器を購入する際、「価格」は気になるポイントだと思います。高性能の補聴器は、片耳40~50万円というものもあり、補聴器は小さいのに価格は大型家電並み。両耳購入すると軽自動車が買えるなんて言われることもあります。

 しかし、補聴器はこの小さな機器に高精度な機能が集約された機器であり、高いなりの理由があります。

補聴器「高い・安い」の違いは?

 補聴器専門店で取り扱っている補聴器の価格には結構バリエーションがあります。片耳10万円くらいからあり、当店では多くのかたが選ばれるのは片耳20~30万円。性能が高いものは片耳50万円ほどするものもあります。

 価格による大きな違いは、調整機能の精度。高価なものは、周波数ごとの細やかな調整が可能な上、補聴器が周囲の状況をリアルタイムに判断し、不要な雑音を抑制したり会話の成分だけを大きくしたりといった調整を自動でやってくれます。

 安いものは、自動調整機能の精度が低く、わずらわしいと感じることが多いかもしれません。特に、食器のカチャカチャいう嫌な音を抑える機能や、後ろや横からの声もしっかり拾ってくれる機能などは、安価な補聴器にはついていません。

 とはいえ、ここ5年ぐらいの間に補聴器はどんどん進化し、内蔵チップの世代交代も進んでいます。少し前の世代のチップでも十分高性能なので、最新式のものでなければ、比較的リーズナブルな価格で購入できるようになりました。

片耳10万円前後の補聴器の一例

 当社で取り扱っている比較的お求めやすい価格でありながら、性能の良いおすすめできる補聴器を参考までにご紹介します。

・スターキー(片耳)78,000円(電池タイプ)

『モデルS2』(モデル エス)

https://www.starkeyjp.com/hubfs/PDF_document/Catalog_ha/JMY50-095ModelS_catalog2205.pdf

・シグニア(片耳)90,000円(電池タイプ)

『Intuis 3』(インティス スリー)

https://www.signia.net/ja-jp/hearing-aids/other/intuis/

・シャープ(両耳)99,800円(充電タイプ)

『メディカル リスニング プラグ』

https://jp.sharp/mlp/

・リサウンド(片耳)85,000円(電池タイプ)

『リサウンド・キー2』

https://www.resound.com/ja-jp/hearing-aids/resound-hearing-aids/resound-key

・フォナック(片耳)127,000円(電池タイプ)

『フォナック テラ/テラ+』

https://www.phonak.com/ja-jp/hearing-devices/hearing-aids/terra

・オーティコン(片耳)160,000円※(電池タイプ)

『オーティコン ジルコン2』

https://www.oticon.co.jp/professionals/products/hearing-aids/zircon

★価格はすべてうぐいす補聴器での販売価格(メーカー希望小売価格)※オーティコンはオープン価格。

***

 補聴器は医療機器で、かなり多くの研究開発費を投入して製品が開発されます。

 上記に挙げた補聴器は、低価格帯でありながら、多くのコストをかけて開発された製品の系譜に連なるものです。安価であっても、中に使われているチップやその性能は、10年前のものより格段に上がっています。

お得に買える時期はあるの?「型落ちモデルなら値下がりも」

 補聴器メーカーのフラグシップモデル(目玉となる製品)は、2~3年に1回のペースで新製品がでることが多いため、新たな機種が発売された後のいわゆる「型落ち品」は、値段が下がるということも。

 9月には、とあるメーカーの一番売れ筋商品が50,000円程度値下がりしました。まさにお買い得だと思います。

 また、最新モデルでも、全部の機能が搭載された上位機種と、機能を厳選したやや価格を抑えたモデルがあります。

補聴器はどこで買うと安いのか?

 補聴器を購入するのは、多くの場合補聴器専門店となります。

 補聴器は、一部のメーカーを除いて、たいていメーカー希望小売価格となっており、どの販売店でも同じ価格で販売されています。なお、補聴器には消費税はかかりません。

 補聴器は家電量販店や眼鏡販売店でも扱っていて、ポイントの付与やセールなどでお得に買える場合はありますが、補聴器の正しい聞こえの調整などを行う「認定補聴器技能者」がいないケースもあるため、その点に注意が必要です。

 なお、量販店など他店で購入した補聴器を、補聴器専門店に持ち込んで調整するということもできます。調整費用は初回だけ無料、1回5000円など、お店によりさまざまです。せっかく安く購入しても、調整のたびにお金がかかるのなら、初めから補聴器専門店で買ったほうがお得だったということもあるかもしれません。

 他店購入の補聴器の調整を実施しているか、そのお店で対応可能なメーカーか、費用はいくらか、などは、個々の補聴器店で異なるので、電話などで事前に確認してみるとよいでしょう。

 また、お住まいの地域によって助成金を使えることがあるので調べてみましょう。

→補聴器の費用負担を軽減させる3つの方法「助成金、東京港区は13万7000円」【専門家が教える難聴対策Vol.8】

補聴器を「安く」購入したい時の注意ポイント

 補聴器専門店で補聴器を購入するには、予約をしておくことをおすすめします。

先に予算を伝えておく

「いきなり高いものをおすすめされるのではないか」と心配な場合、予約時に「予算は10万円くらい」などと、先に予算感を伝えておくといいでしょう。

 販売店側も予算の目安がわかると、ご本人に合った機種をおすすめしやすくなります。また、商品の在庫が店頭にないこともあるため、予約時に伝えることで、店側が取り寄せておいてくれることも。

 一般的に、予算や機種が何も定まっていないお客さまには、片耳で20~30万円クラスの価格や機能が平均的な補聴器をすすめることが多いと思います。

 補聴器をつけて「聞こえやすくなった」と実感いただきたいので、ある程度の機能がついたものをお試しいただきたいと考えるからです。

 10万円の予算なら、10万円と15万円のものなど、近い価格帯でいくつかバリエーションを試してみるのもいいでしょう。

集音器と間違えないように!

「安い」というだけで選んでしまったかたの中には、補聴器ではなく「集音器」だったということもあります。

 集音器は補聴器と形は似ていますが、全く異なるもの。医療機器である補聴器のように、装着する人の聞こえ具合に合わせた複雑な調整機能などがないため、安価なものが多いのです。

→そんなに違いがないと思っていませんか?【補聴器と集音器】「実は全然異なる」そのメリット・デメリットを解説【専門家が教える難聴対策Vol.2】

価格だけでなく「利用シーン」を考えて選んで

 性能がいいものを安く購入できるのが一番いいのですが、なかなかそうはいかないのが補聴器。価格だけを優先して選ぶのではなく、ご自身のライフスタイルや、使い方に合わせた補聴器を選んでいただきたいものです。

 例えば、定年後の穏やかな暮らしで、自宅で家族と会話をするときにだけ使えればいいという場合には、多少の雑音などがあっても問題ないというケースも。

 一方、「年齢を重ねても仕事をバリバリ続けたい」「旅行などアクティブに出かけたい」など、人との関りが多いかたには、雑音などの抑制機能がついているほうが会話もスムーズ。外出先や仕事場などで聞き取りやすくする機能を備えているのは、やはり高価格帯の商品となります。

 しかし、「お出かけは少ない」とおっしゃるかたでも、よくよく聞いてみると、「デイサービスには週に2回通っている」という場合も。デイサービスは、意外と騒がしく、複数人で会話することも多いです。

 大人数で座って、前に立った職員さんの指示を聞きながら、体操をしたり、手遊びの歌を歌ったりする場面も多いでしょう。そういった場面で、最低限の機能しかない補聴器を選んでしまうと、周りの雑音が多くて、聞きたい声が聞き取れないというケースも発生します。

 このように、価格を抑えて補聴器を購入する場合には、ある程度の雑音や不自由さがあることを理解した上で、その補聴器に慣れていく必要があります。

補聴器を安く買うには?【まとめ】

 高価格帯の補聴器は、周囲の音や環境を察知し、余計な音をカットしてくれるなど、すべて機器が自動で調整してくれます。

 一方で、低価格帯の補聴器は、音の調整機能を自分でしなくてはならない、雑音の抑制機能が付いていないことも。補聴器のもつ機能に「自分の方から合わせにいく」「自ら使いこなす」というイメージです。

 安いもの、高いもの、両方を聞き比べた結果、「やっぱり高い方が聞こえ具合がいい」と感じて予算アップされるお客さまはいらっしゃいます。

 補聴器は体の一部のように使うものなのでご自身の生活に合うものをお試しして、効果を実感してから選んでほしいです。

 補聴器は、自分に合わせてくれるものがいいのか、それとも自ら合わせにいくべきか、高いか安いか、それが問題だ―――ハムレットの心境ですが、「人生は選択の連続である」とも。メリット・デメリットを考えながら、自分にとってベストな選択をして欲しいと思います。

リーズナブルな補聴器のメリット・デメリット

<メリット>

・少し前の高性能なチップを搭載しているタイプも選べるように。

・そもそも医療機器なので価格によらず品質や性能は認証されている。

・価格によらず保証期間がしっかりついている。

・自分の聴力に合わせて調整できる。

・高価格帯のものには劣るが雑音抑制機能が付いているものも。

<デメリット>

・お店に試聴器がない場合があり、試せない可能性もある。

・周囲の環境によって雑音がわずらわしかったり、聞き取りづらかったりする場面も。

・周波数ごとの細かい調整ができない(大まかな調整はできる)

・高価格帯のものに比べて搭載している機能が少ない。

・「自分が補聴器の性能に合わせる」という気持ちで使いこなすことが必要。

★うぐいす智子先生のワインポイントアドバイス!

リーズナブルで高性能なものもある!とはいえ「安い」だけで選ばず利用シーンをよく考えましょう

取材・文/立花加久 イラスト/奥川りな

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