ひょっとして難聴かも?「さとうさん」と「かとうさん」ほか聞き間違えやすい単語20選<チェック表>【専門家が教える難聴対策Vol.26】
高齢の親と「会話が噛み合わない」「聞き返すことが増えてきた」。そんな難聴の兆しは放置せず、早めの対策が肝心。補聴器の販売を通して、聞こえに問題を抱える多くの高齢者と関わってきた認定補聴器技能者の田中智子さんに、難聴に気づくための手軽なチェック方法を教えてもらった。ぜひトライしてみて!
教えてくれた人
認定補聴器技能者・田中智子さん
うぐいす補聴器代表。大手補聴器メーカー在籍中に経営学修士(MBA)を取得。訪問診療を行うクリニックの事務長を務めた後、主要メーカーの補聴器を試せる補聴器専門店・うぐいす補聴器を開業。講演会や執筆なども手がける。https://uguisu.co.jp/
難聴の高齢者はうなずき上手⁉
高齢の親の病院に付き添ったときのこと。先生のお話をフンフンと納得して聞いていたと思っていたのに、家に帰ったら「そんな話は聞いていない」と言われて困惑した。あるいは年配のかたと会話をしたり質問をしたりした時、予想と全く違う答えが返って来た。そんな経験はありませんか?
それはもしかすると「聞こえ」に原因があるかもしれません。
これまで難聴を抱えるたくさんのお客様とお会いしてきましたが、いつも感心するのは、みなさん相槌がとても自然で上手だということです。
お客様に聴力検査をしてみて「これはどう考えても生活していて聞きづらい場面があるだろう」というかたでも、お話をしているうちに「私の言葉をしっかりと受け止めていただいている」と感じることがあります。
つい聞こえているフリをしてしまう背景
よく聞こえていないのに、しっかりとしたうなずきや相槌をされるので、ついこちらも理解していると思ってしまう。そんなシーンも結構あるんです。
聞こえにくい生活を長年続けるうちに、その状態に少しずつ慣れてしまっている。聞こえないことを周囲に気づかれないように工夫されてきた結果、「聞こえている」かのように振る舞い、うなずきや相槌が上手になられたのかもしれません。
あるいは、聞き返すことを相手に申し訳ないと感じ、聞こえているようにふるまってしまうこともあるでしょう。ご本人にしかわからない努力や苦労があると思うのですが、どうか我慢をせず、難聴の対策を講じて欲しいと思います。
「聞こえていないこと」は、ご本人だけが我慢すればいいというものではなく、もしかしたらご家族や友人、職場の人など周囲を困らせているかもしれません。
当店にいらっしゃるお客様でも、「理解していると思っていたのに、全然聞いてないじゃない!」となって、家に帰って来てから親子でケンカになったというケースも珍しくないのです。「もしかして難聴かも?」と思ったら、簡単な聞こえのチェックをしてみましょう。
20個の単語で「聞き取りチェック」に挑戦
親子や友人どうし、簡単にできる「聞き取りチェック」のやり方をご紹介します。難聴が進行する前に、ぜひ試してみて欲しいと思います。聞こえにくくなっているご本人も、話しかる家族にとっても「聞こえ」の状態を把握することで、コミュニケーションが円滑になると思います。
基本3音節からなる日常生活にあるものの名前(20個の単語)を使ってチェックを行ないます。聞こえにくさを感じたら、チャレンジしてみましょう。
【20個の単語】
からす、りんご、ひこうき、めがね、ポスト、さかな、じどうしゃ、うさぎ、えんぴつ、とけい、はさみ、つくえ、ねずみ、バナナ、ぼうし、ライオン、ピアノ、でんわ、すずめ、テレビ
【チェック方法】
・出題する人はイラストのように紙などで口元を隠します。またはチェックを受ける人に目をつぶってもらいます。
・20個の単語を声に出して、聞き取れるかどうかをチェックします。間違った場合はその言葉をメモしておきましょう。
・普通の話し声程度の大きさで行ないます。正解率が低い場合は少し大きめの声で、もう一度行ってみましょう。声が大きすぎると音が割れてかえって聞き取りにくくなってしまいますし、そこまで大きな声を出さなければ聞こえないようであれば、かなり難聴が進んでいるため、耳鼻咽喉科を受診してくださいね。
【ポイント】
目をつぶったり口元を隠したりするのは、いずれも試験者の口の形で判断するのを防ぐためです。また、あえて文ではなく単語にしているのは、聞こえの不自由なかたは、知らず知らずのうちに経験的に前後の文脈で判断していることが多いので、脈略の無い単語の方が、聞こえをより的確に確認できるからです。
高くて小さな音や「子音」を含む音が聞き取りにくくなる
年を重ねるにつれ、高くて小さい音が聞こえづらくなってくると言われています。たとえば「F」「S」「TH」などの子音の聞き間違いが増えたり、子音が含まれている言葉の部分が聞こえづらくなったりします。
基本的に日本語の言葉のほとんどは、子音の後に、母音(あいうえお)が組み合わされてできているため、最初の子音を聞き分けられなくなると、単語によっては言葉の区別がつきにくくなります。
子音を聞き取れないことで聞き間違えやすい単語としては、
「かとうさん」と「さとうさん」
「いちじ(1時)」と「しちじ(7時)」
「たかな」と「さかな」
「ひろい」と「しろい」
「さかな」と「たかな」
などがあります。これらは最初の音が聞き取りにくいのです。
20個の単語による聞こえのチェックにより、「さかな」の「さ」が聞こえにくい、「からす」の「す」が聞き取りにくいなど、ご自身の聞こえの具合を知ると共に、どの音が聞き取り難いのかなどの聞こえの傾向がわかってくるのではないでしょうか。
半分以上、聞き取れない/聞き間違える場合には、難聴が進行している心配も。耳鼻咽喉科や補聴器専門店などで、聞こえのチェックをすることをおすすめします。
自分ひとりでチェックする方法としては、以前記事でもご紹介した、耳元で「指をこすり合わせる」方法もあります。静かな場所で指をこすってみて「カサカサ」という音が聞こえない場合は、要注意。こちらも耳鼻咽喉科で検査をしてみましょう。
→もしかして難聴かも?「聞こえ」を指で簡単にチェックする方法を伝授【専門家が教える難聴対策Vol.12】

「聞こえにくさ」を放置すると周囲にも影響が。手軽な聞き取りチェックでどのくらい聞こえているか把握しておきましょう
※掲載した単語の聞き取りチェック表は、手軽に確認するためのものです。聴力検査ではありません。心配がある場合には、医療機関に相談してください。
イラスト/奥川りな