えっ“AI野々村真”って何?デジタルヒューマンが高齢者施設で大人気に!「会話が楽しい」「笑顔が増えた」いいことずくめの未来像
テレビでおなじみの芸能人と毎日気軽に会話ができたら……。そんなワクワクする試みが、いまシニア向け介護施設で行われている。野々村真さん(60才)をモデルとした「AI音声対話型デジタルヒューマン」が、それ。利用者とモニター画面を通じて会話を楽しむことで認知機能の改善や満足度を測るという実証実験だ。
教えてくれた人
内野政明さん/AIデジタルヒューマンプロジェクト運営事務局
中島武さん/AIデジタルヒューマンプロジェクト運営事務局
デジタルヒューマンが高齢者の未来を変える?
「AIと高齢者って、もっとも遠い関係のようですが、私は、高齢者こそがAIを使うことで人生が豊かになる可能性があるのではと考えていました。“AIは高齢者が使うもの”という時代を作りたいですね」と話すのは、AIデジタルヒューマンプロジェクト運営事務局で開発に携わる内野政明さん。
「話すことは脳の活性化にもなるうえ、あごやのどを動かすので食事も進み、活動的になり、最終的には元気に過ごせるという好循環を期待しています。
利用者さんも、最初は相手がAIだとわかっているのに、会話が進むうちに、どんどん実際の人物と話しているかのような臨場感が生まれます。改めて、AIのすごさを感じています」(同局の中島武さん・以下同)
なぜ、野々村さんが選ばれたのか?
「きっかけは、野々村さんが石川県の高齢者施設で大歓迎を受けたことです。そのとき、『全国を回って、高齢者を元気づけたい』とおっしゃったのですが、体は1つ。その課題をAIなら解決できることに気がついて、野々村さんに丸2日かけて小さい頃の体験や出演番組の思い出などを細部にわたりお聞きして、AIにインプットしました」
そのため、ネット情報にはない、よりリアルなエピソードが会話の中に盛り込めるようになっているという。
「AI野々村は、利用者それぞれのプロフィールを把握し、会話を重ねるたびに学習するので、どんどん関係性が深まっていくんです」
たとえば、『おはよう、○○さん、昨日もピアノの練習をしたの?』など、日々新しい会話が生まれるという。
「驚いたのは介護職員も知らないことを、利用者さんがAI野々村に打ち明けていたこと。AIは忙しい職員のサポートにもなり得ると確信しました」
AI野々村はネイティブ並みの流ちょうな英語も操ることができる。
「ご本人が、『自分よりすごい!』と驚いていましたよ(笑い)。将来的には、スポーツ選手や人気キャラクターまで枠を広げ、高齢者や長期入院の子供たちの生きるモチベーションになればと考えています。言語の壁もないので、海外の著名人が日本語で話しかけることも簡単です」
シニアがAIの恩恵を享受できる未来が近づいている。
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2024年9月26日・10月3日号
https://josei7.com/
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