注目のスーパーフード<枝豆>「たんぱく質は牛乳や豆腐より多い」栄養を逃さず摂る方法を専門家が解説
夏を思わせるような暑さの到来とともに、夏野菜がスーパーに並び始めた。夏といえば欠かせないのが「枝豆」ではないだろうか。キンキンに冷えたビールに枝豆は欠かせない。実はこの枝豆、あらゆる栄養成分が豊富な“スーパーフード”だという。知られざる枝豆パワーを大解剖していく!
教えてくれた人
望月理恵子さん/管理栄養士
大豆にほとんどないビタミンA・Cが豊富
枝豆とはそもそも、「未成熟な状態で収穫された大豆」のこと。近年は枝豆専用の品種が400以上もあり、いまや私たちの食卓には欠かせない食品で、とりわけビールのおつまみというイメージがすっかり定着している。
枝豆も大豆も植物の分類上はマメ科に属するが、栄養学の観点からは大豆が豆類なのに対し、枝豆は野菜類に分類される。枝豆は大豆と同じ栄養素を含みながら、大豆にはほとんどないビタミンAやビタミンCを含む“いいとこどり”であらゆる栄養成分が豊富な“スーパーフード”なのだ。
酒のつまみは理にかなっている
お酒のお供に選ばれるのも、枝豆の持つ栄養分に根拠があるというのは管理栄養士の望月理恵子さんだ。
「必須アミノ酸のひとつであるメチオニンやビタミンB1、B2が多く含まれ、これがアルコールの分解を助ける役割を果たします。メチオニンは肝臓の代謝を促す働きもあり、二日酔いの原因となるアセトアルデヒドの分解を早めるので、お酒と一緒に食べるのは理に適っているのです。ビタミンB1やB2は効率よくエネルギーを作り出すので、夏バテ予防や疲労回復効果も期待できます」
肌や内臓を若々しく保つ成分も
発揮する力はお酒のお供としてだけではない。鉄分や、鉄分の吸収を助けるビタミンCのほか、女性にうれしい栄養素がたっぷり。
「筋肉や骨、美髪を作るのに欠かせないたんぱく質が豊富で、100gあたり約12g。牛乳や豆腐よりも多く、卵1個と同じくらいです。また、ビタミンCやβ–カロテンなどの抗酸化成分が細胞の老化を抑えてくれるので、肌や内臓を若々しく保つなどエイジングケアに役立ちます。
強い紫外線が降り注ぐいまの季節からは、お肌でメラニンが生成されてシミやそばかすの原因となりますが、ビタミンCはメラニンを抑制する効果もある。また、女性は加齢とともにホルモンバランスが崩れ、骨がもろくなります。これはエストロゲンというホルモンの分泌が低下することによりますが、枝豆には“植物性エストロゲン”といわれるイソフラボンが含まれ、骨粗しょう症予防のサポートができるのではないかと研究されています」(望月さん・以下同)
赤血球の生成を助け、たんぱく質の生成を促す、女性には欠かせない栄養素の葉酸も、大豆より多く含まれる。
生活習慣病予防にも
放っておけば体重増加にもつながりかねない、むくみにも効果がある。
「体内の塩分を排出する作用や、利尿作用を持つカリウムも豊富。冷房のきいた部屋にいる時間が長く、冷たい飲み物をついつい多く摂ってしまう夏はむくみやすいので、解消するにはぴったりです。カリウムは汗とともに流れ出てしまうので、食べ物で積極的に摂りましょう」
カリウムは細胞の浸透圧を調整するミネラルの一種で、塩分を体外に排出することで血圧を下げ、高血圧を予防する役目も担う。
さらに命にかかわる重大な病を予防する効果も期待される。
「食物繊維が多く、血糖値の上昇を抑えてくれます。また、コリンという脂質代謝を促す栄養素も含まれ、脂肪を分解して肝臓に蓄積されるのを防ぎ、コレステロール値を下げる働きがある。こうした効果は、心臓病や糖尿病の生活習慣病や脳卒中などの予防につながります」
枝豆の栄養素を余すことなく摂る調理法は?
かように、健康にも美容にもあらゆる効果を秘める枝豆。茹でてそのまま食べる人が多いだろうが、実は“間違った”食べ方だ。
「茹でてしまうと、葉酸を含むビタミンB群やビタミンC、コリンなど水溶性の栄養素が流れ出てしまいます。加熱するなら電子レンジを使った方がいい。調理するなら、スープや炊き込みご飯などに入れて、流れ出した栄養素も余すことなく摂れるといいですね。焼いたり炒めたりして油でコーティングすると栄養成分も旨みも逃げにくくなります」
動物性たんぱく質と組み合わせることで、より栄養価が上がるという。
「肉や魚、卵などと一緒に食べると、枝豆に含まれる鉄分の吸収率がアップするうえに、枝豆にはない栄養素を摂れるので完全食になる。
逆に、牛乳やチーズなどの乳製品と組み合わせると、枝豆が持つフィチン酸がカルシウムと結合して吸収阻害を起こします。亜鉛も同様です。女性にとって亜鉛はホルモンバランスを整える重要な栄養成分ですが、これもフィチン酸が吸収を邪魔するので、一緒に食べるのは避けましょう」
枝豆が入っている「さや」や「薄皮」も捨ててしまうのはもったいない。さやや薄皮にも食物繊維などが含まれているので、筋だけとってさやごと素揚げにしたり、にんじんの皮などほかの野菜くずと合わせてベジブロス(野菜だし)をとるなど、余すことなく活用したい。
買うなら「枝付き」「鮮やかな緑」を
旬のいま、店先にはさまざまな種類の枝豆が並ぶが、せっかくなら枝付きのものを選ぶべし。
「枝から離した途端に、風味も栄養価もどんどん落ちていきます。できるだけ枝ごと売っているものを選び、家に帰って枝から切り離したらすぐに食べて。袋詰めされているものを買うなら緑色が鮮やかな枝豆がいいです。茶褐色になっているのは時間が経って酸化している証拠です。
いまは冷凍技術が進化しているので、栄養価がぎゅっと凝縮された状態で瞬間冷凍されているものなら冷凍でも充分。品種で選ぶなら、茶豆の方がアミノ酸などの栄養価が高く、豆の味もしっかりしています」
ただのおつまみ、彩りに添えるものなどとあなどるなかれ。今年の夏は「こまめ」に枝豆を食べて、美も健康も手に入れよう。
※女性セブン2024年6月13日号
https://josei7.com/
●旬の【枝豆】を味わうレシピ7選|蒸しゆにしてぺぺロン風、おこわ、冷や汁に…