連載

痛風の発作に襲われた記者の“悶絶体験記”|「脳天まで貫く激痛と周りの冷めた視線」

「風に吹かれても痛い」といわれる「痛風」。体内でつくられる尿酸が多すぎて結晶化し、足の関節などで激しく炎症を引き起こす病気だ。いまや痛風患者は30代以上の男性を中心に110万人を超え、「予備軍」は1000万人もいる立派な“国民病”だ。

 よく酒飲みやメタボ体質の人が痛風を発症するため、巷では“ぜいたく病”と揶揄され、心配されるどころか、からかわれることも多い。今年のゴールデンウイーク(GW)中に「痛風発作」に見舞われた当サイトの男性記者・T氏(46)も、「周囲の冷めた視線を感じながら、激痛と闘った」と振り返る。そんなT氏の“悶絶体験記”を紹介しよう。

 * * *

GW中の深夜、前触れもなく突如激痛が襲った

 ゴールデンウイークも終盤にさしかかった5月4日深夜、何の前触れもなく、突如右足(親指の付け根周辺)に激痛が走り飛び起きた。

 最初は足がつったのかと思い、マッサージをしようと足に触れてみると、今までに味わったことのない痛みが脳天まで突き抜けた。

「ギャーッ!」──思わず叫んでしまった。痛さの程度を言い表すなら、ジンジン、ズキズキというよりガンガン。これまでトンカチで足を殴られたことはないが、想像するにそれほどのレベルはあった。寝ている間に骨折でもしてしまったのだろうかと不安が押し寄せた。

 そのうち、足の甲だけでなく、足裏も痛み始めた。もしかしたら連休中の小旅行で海辺の不安定な岩場を歩き回ったため、筋肉痛の疲労が一気に出たのかもしれない。痛くなればなるほど、あまり大事に捉えたくない自分もいた。しかし、旅行したのは5日も前の出来事。いくらなんでもそこまで筋肉痛が遅れてやってくるとは考えにくかった。

 あれこれ原因を探りつつも、横たわっていることさえできず。結局、その晩は両足を浮かせ、ベッドに腰掛けたままの体勢で朝を迎えた。

「ほぼ、間違いなく痛風でしょう」

 翌朝、あいにくGW中で自宅付近の病院がどこも休診だったため、妻の運転するクルマで隣町のクリニックに駆け込んだ。

 診察室で症状を説明しながら裸足になると、高齢の医師はおもむろにビニール手袋をはめ、「ここは痛いですか?」と、まさに痛みのひどい右足をピンポイントで押し当てた。「グァッ!」と言葉にもならない声を私が発したところで、あっけなく診察は終了。そして、医師は表情ひとつ変えずに診断結果を述べた。

「ほぼ間違いなく“痛風”でしょう。これまで健康診断で尿酸値が高いと言われたことはないですか?」

 あっ! そういえば……数年前に受けたのが最後の自治体検診で内科医に宣告された言葉が、今さら鮮明に蘇ってきた。

「あなたは保健指導レベルのメタボ筆頭予備群ですし、尿酸値が基準を大幅に超えているので、いつ“痛風発作”が出てもおかしくない。お酒の飲み過ぎや暴飲暴食を繰り返して運動もしないでいると、次々と取り返しのつかない生活習慣病になりますよ。いいですか!」

 あの時は痛風と聞いても、正直何も響かなかった。年輩の「オジサン病」だと思っていたからだ。自分もとっくにオジサンの年齢に達していたにもかかわらず……。

 飲み過ぎや暴飲暴食は耳が痛いほど自覚していたが、その日限りの反省で翌日にはすっかり忘れていた。

 なにしろ、ここ数年、酒を1滴も飲まない「休肝日」など片手で数えるほどしかなかった。外で飲めばビール、焼酎、ウイスキー、ワイン、日本酒と何でも注文し、日をまたいで飲み続けることもざらだった。自宅で飲む日も、まずは大盛りの食事と一緒に500ミリリットルの缶ビールを空け、食後はスナック菓子をツマミに、高アルコールの缶チューハイを2~3本飲むのが常だった。

自業自得病と妻に言われ…

 不摂生極まりない日々のツケが何倍にもなって痛風で回ってきた──それこそが今の激痛なんだと妙に納得してしまった。妻は「ぜいたく病っていうか、”自業自得病”でしょ!」とピシャリ。何も言い返せるはずがなかった。

痛風と分かればすぐに治療を始めたかったが、激痛(炎症)が治まらなくては尿酸値を下げる薬も処方できないと言われ、その日は鎮痛薬をもらい自宅に戻った。

改めて両足を見比べてみると、確かに右足だけ異様に腫れ上がって熱をもっている。さっそく数年前に受けた健康診断の結果用紙を引っ張り出し、尿酸値の項目を見てみると……血液1dlあたりの基準値が3.6~7.0mgなのに対し、「8.4mg」と印字され、ご丁寧に注意を促す赤い丸で囲まれていた。そして〈高尿酸血症が疑われる〉ともはっきり書かれていた。

 健康診断を受けた日付をみると、なんと2014年1月末──。つまり5年以上も尿酸値はデッドラインを大幅に超えたままで推移していたことになる。これで痛風にならなかったほうが奇跡だったのかもしれない。

食べ物、酒類を通して体内に入るプリン体量は全体の20%

 ふと、以前に飲み会の席で痛風体験をまるで“武勇伝”のように話していた友人のことを思い出した。あの時は自分とは無関係だと話半分に聞いていたが、いまは症状の経過や治療法について、少しでも身近な情報を得たい心境だった。「自分も仲間入りしたよ」と連絡してみると、彼はさも得意げに説明を始めた。

「最初の痛みは鎮痛薬を飲み続ければ3、4日ぐらいで落ち着くと思うけど、油断はできないよ。その後、尿酸値を下げるクスリを何年も飲み続けなければ、またすぐに尿酸値が高騰して痛みがぶり返す可能性が高い。何もしないで放っておくと、今度は両足に発作が出て松葉杖なしでは歩けなくなったり、股関節あたりの痛さでトイレにすら行けなくなったりするかもよ」

 この激痛が間髪を入れずに、さらにパワーアップして襲ってくるなんて……恐怖以外のなにものでもない。彼の話を聞くまでは、今後は薬物治療を選択せず、ビールの酒量を減らしたり、レバーや一部の魚介類など痛風の原因となる「プリン体」を含む食べ物を一切摂らないようにするなど、食生活の改善で尿酸値を下げていこう──と甘い考えも持っていた。

 しかし、ネット情報や健康本などを読むと、例えばイクラなどの魚卵も言われているほどプリン体は多くなかったり、生はよくても干物にするとプリン体が増す魚があったりと、調べれば調べるほど何が痛風の「NG食」なのか判別がつかなくなる。結局、食べ物や酒類を通して体内に入るプリン体の量は全体のたった「20%程度」で、残りは体内でつくられることが分かった時点で、食事療法はきっぱり諦めた。

高い尿酸値。薬でのコントロールと生活習慣の改善が必要に

 また、否が応でも薬治療を始めざるを得ない理由もあった。3、4日どころか、1週間も鎮痛薬を飲み続けたのに、痛みは断続的に弱くなったり、強くなったりを繰り返し、快方に向かう気配がなかったからだ。

 すでにかなりの痛さレベルでもガマンできるほど慣れてきたが、GWが明けてからも、しばらくは足の腫れが引かずに革靴をはくのが苦痛だったことに加え、右足を引きずって歩く不自然な姿勢を続けていたため、ビリビリとした腰痛にも悩まされた。結局、2日間は仕事にも出かけられず、自宅作業を余儀なくされた。

 また、このまま強い鎮痛薬を常用していると何か副作用が出てしまうのではないかという不安もあった。そこで、後ろめたさもあったが、5年前に忠告を受けたクリニックで、再び血液検査をしてみることにした。

 すると、尿酸値はなんと「9.8mg/dl」──。

 2014年の「8.4mg/dl」からさらに上昇していた。医師はパソコン内に記録してあった2014年のカルテと見比べながら、問答無用でこう治療方針を示した。

「ここまで尿酸値が上がって発作が出たら、薬を飲んでコントロールする以外にないですね。このままだと腎機能が悪化して、最終的には動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中のリスクも顕著に上がりますよ。そして、言わなくても分かると思いますが、飲酒を含めた生活習慣を改めて適度な運動をしないと治りませんので。はい、ということで」

 今回ばかりは医師の言葉が十二分に身に染みた。

 最近の研究では、暴飲暴食や運動不足といった日ごろの不摂生だけでなく、痛風の発症は遺伝子が大きく影響していることも分かってきたという。だが、病気になりにくい体質をつくる自助努力も欠かせない年齢だということに、嫌というほど思い知らされた「悪夢の1週間」だった。

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この記事へのみんなのコメント

  • 痛風侮れない

    小生は30代前半で痛風を発症し、1年に1、2回発作を起こしていました。 発作のたびに対症療法で終わらせてしまい、治療を中断していました。 今年45になりましたが、大きな転機が。高血圧や糖尿病の治療も中断していた結果、約1か月前にうっ血性心不全に発展。入院は免れるものの、自宅で投薬と食事療法の日々です。 その際、高尿酸血症の治療も必須で症状が出ていないことからフェブリクが投与されましたが、案の定、副作用で左の足の甲に発作を発症してしまいました。もっとも尿酸値を下げる薬なので継続服用、そのうえで痛み止めの湿布で凌いでいます。痛みで室内の移動も今のところ杖が必須。踏んだり蹴ったりです。 痛風は発作が収まったということで放置すると、本当にとんでもないことになる。身をもって味わった次第です…。

  • ボギー

    小生も通風予備軍と言われ、クリニックに行き、もう20年薬を飲み定期的に尿酸値を計っております。それ結い本当の通風の痛さは幸い実感してません。何の病もなってからでは後々他の病を併発するので、早めの治療が肝心と思います。

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