倉田真由美さん「すい臓がんの夫と余命宣告後の日常」Vol.27「私も見倣いたい夫の行動」
漫画家の倉田真由美さんの夫で映画プロデューサーの叶井俊太郎さんのすい臓がんは、すい臓がんで闘病を続け今年2月に永眠された。病気がわかったのは2年前、余命宣告を受けた叶井さんが始めた行動とは?
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。お笑い芸人マッハスピード豪速球のさかまきさん原作の介護がテーマの漫画『お尻ふきます!!』(KADOKAWA)ほか著書多数。
夫の叶井俊太郎さんとのエピソードを描いたコミック『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』 『夫の日常 食べ物編【1】: すい臓がんになった夫との暮らし』は現在Amazonで無料で公開中。
病気が判明した2年前のこと
「会いたい人に会っておく」
2年前、夫は自分の病気が判明した時、これを始めました。何年も会っていない昔の友人知人、仕事相手、思い出せる限りの「会いたい人」と会えるよう、いろいろ手を尽くしたようです。
中学時代に仲のよかった人たちとは、数年ごとに同窓会のようなことをしていたので会うのは楽だったみたいですが、案外難航したのは高校時代の友人。卒業以来会っていない人たちと連絡をつけるのに、少々苦戦した様子でした。
それでもSNSのおかげで、伝手を辿って一人と連絡が取れ、なんとかつながることができていました。
昨年の秋頃、「めちゃくちゃ久しぶりに会ったけど、盛り上がったよ! 懐かしい、忘れてた昔話もいっぱいした」と嬉しそうに報告してくれたのを覚えています。長い間疎遠になっていても、10代の多感な頃を一緒に過ごした人というのは特別な感覚を共有した仲間、通じ合うものが残っているんでしょう。
それでもどうしても連絡がつかなかった人が一人、いました。
今年の1月、「あいつに会っておきたかったなあ。前の会社を退社して以来どうしてるか、誰も知らないんだよな」と残念そうに話していました。でも逆に言えばその人くらいで、あとの「会いたい人」とはだいたい会えていたようです。
夫は病気が判明してから「会いたい人」に会いましたが、私だっていつ何が起こるかわかりません。誰の人生も、ある日急に途絶するものです。
夫の行動を見て、思ったこと
夫の行動を見て、私も会いたい人には面倒がらずに会っておこう、と思いました。そして以前親しかったのに関係が途絶えてしまった人とも、何となく気まずいような期間が開いてしまっていても、もう一度会ってみようと。
私はフリーランスなので、仕事上で出会う人は「その時限り」の付き合いになる場合が多いです。中には一緒に食事をしたり仲よくなる人もいますが、仕事が終わると共に付き合いも間遠になっていつしか会わなくなる、というパターンがほとんど。
せっかく「この人と話すの楽しいな」と思っても、仕事の共有がなくなると定期的に会ったり連絡を取り続けることがなくなり、気づかないうちに縁が切れてしまっています。
私も夫を見倣い、ちょっとでも「会いたいな」と思った人とは積極的に会っていこうと思います。少しでも「会わなかった」後悔が少なくてすむように。
倉田真由美さん、夫のすい臓がんが発覚するまでの経緯
夫が黄色くなり始めた――。異変に気がついた倉田さんと夫の叶井さんが、まさかの「すい臓がん」と診断されるまでには、さまざまな経緯をたどることになる。最初は黄疸、そして胃炎と診断されて…。現在、本サイトで連載中の「余命宣告後の日常」以前の話がコミック版で無料公開中だ。
『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』
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