倉田真由美さん「すい臓がんの夫と余命宣告後の日常」Vol.28「夫が綴った言葉は家族の宝物」
漫画家の倉田真由美さんの夫で映画プロデューサーの叶井俊太郎さんが、すい臓がんで旅立ってから3か月。まだまだ夫のことを思い返しては涙する日々は続いている。叶井さんがかつて綴っていた子育てコラムを読み返して、今思うこととは?
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。お笑い芸人マッハスピード豪速球のさかまきさん原作の介護がテーマの漫画『お尻ふきます!!』(KADOKAWA)ほか著書多数。
夫の叶井俊太郎さんとのエピソードを描いたコミック『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』 『夫の日常 食べ物編【1】: すい臓がんになった夫との暮らし』は現在Amazonで無料で公開中。
ゆっくり読み返している夫の子育てコラム
夫は娘が生まれてから小学校を卒業するまで、子育てコラムを書いていました。月に2回、私がイラストを描いていたので内容はすべて一度は読んだことのあるものです。
今、それを日にちをかけてゆっくり読み返しています。
夫が綴った文章はいかにも夫らしく、「ああ、これは夫の言葉、夫の口調だ」と読んですぐ分かるくらい癖があります。夫を思い出させてくれるものは写真や動画、録音、いろいろありますが、本人の手で書かれた文章はまたどれとも違ったよさがあって、読み終わるのが怖いくらいです。
創作ではなく実際に起きたことをそのまま書いているから忘れていたことを思い出せるし、何より、心の動きが分かるんです。何をしたかだけではなく、どう思いどう感じたか、夫の心の中が追える。これは、文章だからこそ残せるものです。
「オレは子どもの世話がめちゃめちゃ好きだから、できることはなんでもやりたい」
「オレは娘が楽しんでればなんでも楽しいわけ」
どちらもコラムにある夫の言葉です。夫は心から子育てを楽しんでいました。
娘が小学1年生のときの話
昨夜読んだコラムは、娘が小学1年生の頃の学校イベントの話でした。保護者、それも父親だけのオヤジの会」というのがあり夫はそれに入っていて、その会のメンバーでオバケ屋敷を作るという…オヤジの会に入るお父さんは少数で、うちの学年では80人中3人だけです。それでも各学年のオヤジたちが力を合わせ、かなり怖いオバケ屋敷ができました。
私も娘と娘の友だちを連れて入ったので覚えています。窓も塞がれて明かりが入ってこないようにしてあるし、黒いビニール袋に動く人形が入れてあったり仕事で音響をやっているお父さん力作の怖い音声が流れたり。子どもたちはキャーキャー言って私にしがみつき、怖がっていました。
このイベントのために、オヤジの会の皆さんはかなりの時間を割いてオバケ屋敷作りをしたんですよね。仕事でもない、自分の子どもだけが関わるものでもないけど、頑張ってくれました。窓に段ボールを貼る作業は本当に大変だったようで汗まみれになったと夫が言っていましたが、その甲斐あってイベントは大盛り上がりでした。
「周りにいたママたちが『すごくよかった、来年もまた来よう!』と言っているのを聞いて、安心しました。楽しんでくれてよかったよ!」
夫の言葉が、イキイキと残っています。
■叶井俊太郎の子育て奮闘記(サイゾーウーマン)
https://www.cyzowoman.com/2009/11/post_1151_1.html
倉田真由美さん、夫のすい臓がんが発覚するまでの経緯
夫が黄色くなり始めた――。異変に気がついた倉田さんと夫の叶井さんが、まさかの「すい臓がん」と診断されるまでには、さまざまな経緯をたどることになる。最初は黄疸、そして胃炎と診断されて…。現在、本サイトで連載中の「余命宣告後の日常」以前の話がコミック版で無料公開中だ。
『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』
『夫の日常 食べ物編【1】: すい臓がんになった夫との暮らし』