<漏れ>にまつわるお悩み実例「トイレに入った瞬間ちょい漏れ」「映画館の真ん中の席でモゾモゾ」【専門医回答】
女性は加齢や出産によって骨盤底筋が緩みやすく、せきやくしゃみをした瞬間に尿漏れを起こしてしまう人も多くいる。漏れの悩みはひとりで抱え込まず、できるだけ早く解決したいところだ。漏れに関する素朴な疑問、他人にはなかなか言えない悩みを読者アンケートで大募集した。読者のリアルな「漏れ」にまつわる悩みを専門家にぶつけてみた。
教えてくれた人
佐藤亜耶さん/泌尿器科医・医学博士。女性と子供のための泌尿器科専門クリニック「自由が丘ウロケアクリニック」院長。
西村かおるさん/排泄ケア専門ナース。排泄にトラブルを抱える人に情報提供する『日本コンチネンス協会』名誉会長。著書に『「パンツは一生の友だち」排泄ケアナースの実践録』(現代書館)がある。
女性の「漏れ」にまつわる9つのお悩み&疑問を専門家が解決!
【Q1】尿意を急に感じ、すぐにトイレに行って下着を下ろそうとした瞬間に、おしっこが出てしまうことがあります。どうして?(63才・専業主婦)
【A】「それは、切迫性尿失禁の過活動膀胱によるものです。それまで我慢できたのに、『トイレの個室に入った』という安心感で、膀胱が過敏に反応してしまい、耐えきれずに出てしまう。それが過活動膀胱の症状です。
このケースのほかにも、水の音を聞くだけで尿意を感じたり、映画館やコンサートなどで出づらい席に座った場合も同じです。
治療法としては、膀胱を広げて尿が漏れないようにする薬物療法があります。使う薬は抗コリン薬やβ(ベータ)刺激薬です。市販薬にもありますが、医療機関を受診した方が適切に診断してもらえ、薬も処方され保険も適用されます」(泌尿器科医の佐藤亜耶さん・以下同)
【Q2】泌尿器科に行くのが恥ずかしくて抵抗があります。内科や婦人科ではダメでしょうか?(51才・パート)
【A】「内科や婦人科でも薬は出してもらえますが、泌尿器科にかかった方がより細かな治療が受けられます。
泌尿器科では排尿についての詳しい問診と尿検査、必要であれば超音波検査や内診も行います。
また、治療のほかにも、骨盤底筋トレーニングや生活指導を受けることができます。確かに最初は恥ずかしいかもしれませんが、より詳しく検査を行うことで原因を特定できるので、改善するのも早いですね。うちの患者さんにも最初は恥ずかしそうな人がいますが、改善していくので、『来てよかった』『もっと早く来ればよかった』と言ってくださるかたが多いですよ」(佐藤さん)
【Q3】尿と便の切れが悪いです。特に尿は出し切ったはずなのに、便座から立った途端に漏れてしまうことがあります。どうすればいい?(51才・パート)
【A】「まず尿の切れが悪いのは尿道に尿が残っている可能性があります。排泄姿勢と拭き方を意識しましょう」と言うのは日本コンチネンス協会名誉会長の西村かおるさん。
「便座に座るときは、少し前傾姿勢になると排泄物が出やすくなります。また尿を拭くときもペーパーをデリケートゾーンに当てて、残った尿を吸い取るようにして、少し時間をかけてゆっくりと立ち上がるようにしましょう」(西村さん)
【Q4】水分を控えると脱水症状や脳梗塞のリスクが高まると聞き、怖いので水を多く飲むよう心がけています。ただその分、最近、頻尿気味に。適切な水分の摂り方ってありますか?(52才・自営業)
【A】「お水は一気に飲むのではなく、チビチビ飲むのがコツです。一気に飲むと、その分、一気に膀胱に尿がたまってしまうため、急激な尿意を感じてしまうんです。お水を気がついたときに1~2口飲むことで、徐々に膀胱に尿がたまっていき、急にトイレに行きたくなるという状況も避けられます。
また、体を冷やさないために白湯を飲むのはよいことですがこちらも一気に、大量に飲むのは体内の水分量を増やすことになります。チビチビと少しずつ飲むようにしましょう」(佐藤さん)
【Q5】コンサートや映画など、特に席が列の真ん中で、しばらくトイレに行けないと思うと尿意をもよおしソワソワします。トイレに行ったばかりなのに…。おかしいですか?(57才・派遣社員)
【A】「本来なら我慢できるはずなのに、“行けない”と思うあまりに膀胱が過剰に反応して心因性の強い尿意を感じてしまうのでしょう。これではせっかくのコンサートが楽しめません。
そんな場合は一瞬でいいので、尿とは無関係のことを考えてみましょう。脳は同時に2つのことは考えられないので、意識をそらせば尿意も薄れます。考える内容は何でもいいのですが、おすすめは“逆さ言葉”。出演者の名前や、まったく関係のないショートケーキやカマンベールチーズのような、ちょっと長めの言葉など、逆さにするのが難しい言葉に集中するのがいいですね」(西村さん)
【Q6】昔、おしっこを我慢すると膀胱炎になると母から言われたので、さほどおしっこに行きたくなくても、用を足すようにしています。これって、正しいのでしょうか。(40才・会社員)
【A】「したくもないのに行くのは逆効果です。尿が少量しか膀胱にたまっていないのにすぐに出してしまうと、“しっかりためる前にトイレに行く習慣”がついてしまい、頻尿が悪化します。対策としては、膀胱に最大量の尿をためられるようにトレーニングをするといいですね」(佐藤さん)
具体的には一度、5~10分程度はトイレを我慢することだという。
「できれば15分ぐらい我慢できるといいですね。それができたら、次はさらに15分と我慢する時間を延ばしていく。そうするとだんだん長い時間我慢できるようになります。ほかに気をまぎらわせるのもいいです」
【Q7】尿漏れ対策を自分ですることはできますか?病院に行く時間がなくて…。(46才・会社員)
【A】「できます。おすすめは骨盤底筋体操です。くしゃみなどで尿が出る腹圧性の漏れは、骨盤底筋を鍛えることにより1~3か月ほどで改善することも多いので、泌尿器科でも指導しています」(佐藤さん・以下同)
骨盤底筋トレーニングはひざを立てあお向けになって腟、肛門を締めて5つ数え、緩めたら、また締めるを数回繰り返す方法がある。そのほかにも日常生活で簡単にできるのが肛門を締める、緩めるを繰り返すやり方だ。
「電車の中、お風呂の中などで肛門を締める、緩めるを繰り返してください。10回を1セットとし、1日数セットはやってみましょう」
【Q8】何か食べ物にあたったわけでもないのに、なぜか下痢になり、漏らしてしまうことがたまにあります。なんで!?(49才・パート)
【A】「ストレスによる過敏性腸症候群の可能性があります。腸と脳はつながっており、不安やストレスを感じたときに、腸が異常な反応をして下痢をしてしまうことがあるのです。まずは消化器内科などを受診してください。ここで異常が見つからなければストレスが原因かもしれないので、心療内科で相談してみてください」(西村さん)
【Q9】飲み会でビールジョッキ4杯を飲んだ後、立ち上がろうとしたとき、少量ではありますが、尿と便を漏らしてしまいました。やっぱりお酒が原因ですか?(39才・会社員)
【A】「お酒をたくさん飲むと利尿作用があって尿をたくさん作るアルコールが腸に刺激を与え、下痢を引き起こす原因になることがあります。
また、宴会で食べすぎたのが原因で、下痢になることもあります。人によってはオリーブオイルや香辛料が刺激となって、お腹を下すことがあります。ビールジョッキでビールを飲む際は、一度に多量に飲まず、ゆっくり楽しみ、刺激物はなるべく避けましょう」(西村さん)
イラスト/腹肉ツヤ子
※女性セブン2024年3月14日号
https://josei7.com/
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