介護用のおむつ代は医療費控除の対象になる!必要条件、申請方法、書類の書き方をFPが解説
入院中や在宅介護で紙おむつを利用しているなら、税金の還付を受けられるケースがある。医療費というと治療代や薬代などのイメージだが、介護用のおむつも代も医療費控除の対象になる。ただし、医師による「おむつ使用証明書」など必要な書類を揃えなければならない。対象となる要件や書類、申告方法について、ファイナンシャルプランナーで行政書士の河村修一さんに解説いただいた。
この記事を執筆した専門家
河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士
CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、認知症サポーター。兵庫県立神戸商科大学卒業後、内外資系の生命保険会社に勤務。親の遠距離介護の経験をいかし、2011年に介護者専門の事務所を設立。2018年東京・杉並区に「カワムラ行政書士事務所」を開業し、介護から相続手続きまでワンストップで対応。多くのメディアや講演会などで活躍する。https://www.kawamura-fp.com/
医療費控除とは?
医療費控除とは、かかった医療費を申告することで税金が還付(軽減)される制度のこと。
病気やけがなどで医療費がかかった場合、支払った医療費が一定額を超えた場合には、所得控除を受けることができ、所得税や住民税が軽減されます。
一定額とは、その年にかかった医療費(保険などで補填された金額控除後)の合計額が10万円を超えた場合、または、その年の総所得が200万円未満の人は医療費が総所得の5%を超えた場合となります。
介護にはさまざまな医療費がかかりますが、介護で利用した「おむつ代」は医療費控除できるのでしょうか? 以下で解説していきましょう。
介護用の紙おむつは医療費控除の対象になる?
おむつ代は医療費控除の対象になります。ただし、いくつかの要件や用意すべき書類があります。
おむつ代の医療費控除の要件
医師の診療時において下記の2つの要件を満たす必要があります。
【1】傷病によりおおむね6か月以上寝たきり状態にあると認められる者
【2】当該傷病について医師による治療を継続して行う必要があり、おむつの使用が必要と認められる者
おむつを申告する場合に必要なもの
おむつ代の医療費控除を受けるためには、主治医に「おむつ使用証明書」を記載してもらう必要があります。
ただし、おむつ代の医療費控除を受けるのが2年目以降の人は、「おむつ使用証明書」の代わりに、市町村が発行する証明書(市町村が主治医意見書の内容を確認した書類、または主治医意見書の写し)を利用できます。
主治医の意見書の作成日は、おむつを使用した年であること、記載内容に「寝たきり度」や「尿失禁の発生可能性」についての記載がある場合などに限ります※。
なお、要介護認定を受けている期間が13か月以上あり、おむつを使用した年に意見書が発行されていない場合は、前年又は前々年に作成されたものでも証明書は利用できます。
※参考/国税庁「おむつに係る費用の医療費控除の取扱い(「おむつ使用証明書」に代えた簡易な証明手続等)について(法令解釈通達)」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/shinkoku/020625/01.htm
※参考/寝たきりの者のおむつ代(国税庁)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/54.htm
おむつ代の医療費控除申告の流れ
おむつ代の医療費控除を初めて申告する場合、確定申告するときに、医療費控除の明細書と「おむつ使用証明書」の提出・提示が求められます。
なお、おむつ代の領収書の提出は不要ですが、5年間の保管が義務づけられているので注意しましょう。
【1】おむつ使用証明書
【2】医療費控除の明細書
おむつの医療費控除を受けるまでの流れ(初回・1年目の場合)
使用したおむつ代の領収書をとっておく(金額を控えておくとよい)
↓
医師に「おむつ使用証明書【1】」を記載してもらう
↓
医療費控除の明細書【2】におむつ代やそのほかにかかった医療費を記載する
↓
確定申告時に【1】【2】を添付し、税務署に申請する
↓
確定申告後、所得税が還付され、翌年の住民税が軽減される
【1】おむつ使用証明書のサンプル
(PDFでダウンロードできます)
※国税庁「おむつに係る費用の医療費控除の取扱い(「おむつ使用証明書」の様式の変更等)について(法令解釈通達)」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/shinkoku/010703/01.htm
【2】医療費控除の明細書
(PDFをダウンロードできます)
※参考/国税庁「おむつに係る費用の医療費控除の取扱い(「おむつ使用証明書」に代えた簡易な証明手続等)について(法令解釈通達」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/shinkoku/020625/01.htm
おむつ代の医療費控除になる対象期間は?
各年の医療費控除の対象となる医療費は、その年の1月1日から12月31日までに実際に支払われた金額が対象になります。
おむつ代の医療費控除は、「おむつ使用証明書」の発行日ではなく、医師がおむつの使用が必要と認めた日(始期)から終期までが対象となります。
なお、クレジットカードでおむつ代を支払った場合、引き落とし日ではなく、カードを利用した日が実際に支払った日になります。
おむつ代がかかったら医療費控除の活用を【まとめ】
国税庁※によると、医療費控除の適用者は700万人を超えています。さらに、還付申告件数のうち約半数が医療費控除となっており、医療費控除を活用している人はかなりの数に上ります。
介護中のかたはとくに入院や通院、薬代、日々のおむつ代などさまざまな費用がかかるので活用しておきたい制度です。
初めておむつ代の医療費控除を受ける場合、「おむつ使用証明書」が必要になりますので主治医にご相談ください。また、2年目以降のかたは、お住まいの自治体に確認しましょう。
介護でおむつが必要になった場合、毎日のことなのでそれなりの費用がかかります。おむつ代の医療費控除をすることによって少しでも経済的負荷を軽減することをおすすめします。
※参考/国税庁「令和4年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」
https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0023005-053.pdf
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