干物の聖地!静岡・沼津で学ぶ「干物のおいしい食べ方、選び方」栄養価を専門家が解説
魚を保存するために考案された干物の歴史は縄文時代からと古く、江戸時代以降は朝食の定番に。干すことで味わい深くなるうえ、生魚より価格が手頃で保存もしやすい。まさにニッポンの知恵だ。今回、干物の聖地と言われている沼津で53年間干物を作り続けている「カネモト」さんが干物を作っている様子や、おいしい干物の見分け方、直売所直伝の食べ方など、干物の魅力を教えてくれたのでご紹介する。
教えてくれた人
山田誠さん/カネモト・店主
山根みずえさん/管理栄養士
「干物」の持つ栄養価を管理栄養士が解説
富士山の麓・沼津港には駿河湾で獲れる魚介や全国の良質な海の幸が集まり、店頭には商品がずらりと並ぶ。沼津は日照時間が長く雨が少ないという干物作りに適した風土を活かし、日本一の干物の生産量を誇る。
干物は店ごとに作り方も味わいも千差万別。魚の種類も定番から地元の人しか知らないような変わりダネまで豊富だ。
「魚は干物にすることで本来の旨みを残しつつ熟成されるので、生魚よりも風味が豊かになります。干物は魚の味を引き出した、究極の食材です」(カネトモ店主・山田誠さん)
生活習慣病の予防にも
「魚には「n-3系脂肪酸」と呼ばれる栄養素が含まれています。これは食品からしか摂れない栄養素で、血液中の中性脂肪を下げたり、身体によいコレステロール値を上昇させたりする効果があるため、生活習慣病予防にもってこい。
さらにカルシウムの吸収を促進させるビタミンDやたんぱく質なども豊富なので、骨量が低下する更年期以降の女性には特におすすめの食材です」(管理栄養士・山根みずえさん)
干物の聖地・静岡県沼津で「選び方・食べ方」を学ぶ
「毎朝6時から1500匹ほどの魚をさばいて干物を作ります。1枚1枚手作業で加工していくんですよ」と語る、山田誠さん。
静岡県産の平釜塩を使った“塩汁(しょしる)”に浸けて作るあじの塩干しや、継ぎ足しの秘伝たれで作るみりん干しなど『カネトモ』の干物はすべて保存料不使用。機械任せにせず、その日の温度や湿度、魚の状態に合わせて作られる干物は舌が肥えた地元の人にも人気だという。
山田さんが祖父から受け継いだ『カネトモ』は創業53年。魚をさばく作業は妻の里美さんも一緒に。その手際のよさは、まさに職人技!
さばいた魚は16%の塩水につけた後、水にさらす。「濃いめの塩汁に5~10分つけて一気に味を入れます。つけ時間は魚の状態などに合わせて、日々変えています」。
加工した魚は作業場前ですぐ天日干しに。天候にもよるが、1時間ほどで干物が完成。「やっぱり干したては格別! 近所の常連客が、完成を待って買っていくことも」。