閉経期は特に注意「食後高血糖」が招く動脈硬化にご用心!病気のリスクと対策 予防食材「ヨーグルト、菊芋など」を専門家が解説
「年をとったら血糖値が高くなっちゃって」――そんな会話を交わしたのは一度や二度じゃすまないだろう。しかし、本当に怖いのは「食後血糖値」であることを知っておくべき。食後も血糖値が高い状態が続くと、糖尿病や脳梗塞、心筋梗塞などのリスクが高まるという。食後血糖値のリスクや選ぶべき食品などについて専門家に解説いただいた。
教えてくれた人
鶴田加奈子さん/つるた内科クリニック院長・糖尿病専門医、望月理恵子さん/健康検定協会理事長・管理栄養士
「食後高血糖」閉経期の女性は特に要注意すべき
都内在住の佐藤絵里子さん(55才・仮名)は20代から体形が変わらず、健康診断の結果も毎年正常。“スリムで健康”が自慢だった。しかし、ここ数年、雲行きがあやしくなってきたとため息をつく。
「50才を過ぎた頃から、お腹回りにぜい肉がつきやすくなって体重も増加。さらに今年の夏ぐらいから、食後妙に喉が渇くようになって…。倦怠感が続き、目がかすんできたので病院に行きました。検査の結果、血糖値がかなり高いことがわかって『糖尿病』と診断されたんです。お酒も脂っこいものも好きじゃないし、忙しくて朝食を抜くことだってあるくらい食べる量も少ないのに一体どうして、とショックです」
つるた内科クリニック院長で糖尿病専門医の鶴田加奈子さんは「年を重ねた女性は血糖値が上がりやすい」と話す。
「更年期を過ぎると女性ホルモンの『エストロゲン』が減ります。エストロゲンには血糖値を抑える作用を持つホルモン『インスリン』の効能を高める働きがあるため、分泌量が減ることで血糖値は上昇しやすくなる。とりわけ食後、血糖値が上がった状態が慢性的に続くと糖尿病リスクが生じる。そのため閉経期の女性は特に注意が必要です」
食後は誰でも一時的に血糖値が高くなるが、通常は血液中の糖の濃度を一定の範囲におさめる働きを持つインスリンが分泌されて血糖値を抑えるため、極端に高い数値にはならない。しかし、分泌量や働きが充分でなければ、下がらないまま体が蝕まれていく。
「食後2時間の血糖値が140mg/dl以上が続く状態を『食後高血糖』と呼びます。もちろん、空腹時の血糖値も糖尿病との相関関係がありますが、食後血糖値はさらにリスクが高いのです」(鶴田さん・以下同)
実際、3万8000人のアジア人を対象にした研究では、空腹時の血糖値に関係なく、食後2時間の血糖値が高くなるほど死亡率が高まるという結果が出た。
「食後高血糖が続くと動脈硬化による脳梗塞や心筋梗塞のリスクが2倍になるという報告があり、認知症やがんのリスクも増えることがわかっています。
また、空腹状態で一気に食事をとることで血糖値が急上昇し、インスリンが必要以上に分泌される。すると、インスリンの持つ脂肪を合成する働きにより体に脂肪をため込むことに拍車をかけてしまう。つまり病気の予防や治療、ダイエットのためには、食後血糖値をいかにコントロールするかが重要になります」
食後高血糖が招く主な「病気」8選
・糖尿病
・認知症
・動脈硬化
・がん
・脳梗塞
・肥満症
・心筋梗塞
・歯周病
高血糖とインスリンの関係とは?
<インスリン>
すい臓から分泌されるインスリンの働きが悪くなると血液中の糖を肝臓に取り込むことができなくなり、血糖値が高くなる。また、必要以上の糖質を摂取すると、血液中にブドウ糖があふれ、血糖値が高くなる。血糖値が高い状態が続くと、血管へのダメージが大きくなり、脳や心臓などの血管に悪い影響が出る。
<内蔵脂肪>
血糖値が急上昇するとインスリンが過剰に分泌され、体に脂肪をため込みやすくなる。