<親の家の片付け>「まずは玄関からがおすすめ」な理由 親の気分を害さぬように着手する方法
高齢の親が暮らす実家に大量のものがあふれている――。そんな状況に困っている人も多いのではないでしょうか。まずは、片付けが必要な理由を理解し、早く片付けが進むように準備をしておくことが大切。ムック本『50代からの自宅の片づけ 実家の片づけ』も手がける家事アドバイザー・矢野きくのさんに、実家の片付け、親の持ち物の整理の進め方の基本を教えてもらった。
この記事を執筆した専門家
家事・節約アドバイザー・矢野きくのさん
家事の効率化、家庭の省エネを中心にテレビ・講演・連載などで活動。NHK『ごごナマ』準レギュラー他テレビ出演多数。新聞での連載のほか自動車メーカー、家電メーカーなどの企業サイトでコラムの執筆経験も。近年は中高年層の家事アドバイスや家庭でできるSDGsについての講演、SNSでの情報発信でも活動している。著書『シンプルライフの節約リスト』(講談社)、『「節電女子」の野菜レシピ!』(アスコム)、『50代からの自宅の片づけ 実家の片づけ』(扶桑社ムック) など。https://yanokikuno.jp/
実家の片付け、高齢の親の持ち物の整理を家事アドバイザーが指南
自分の身の回りのことをやるだけでも手いっぱいなのに、実家の片付け、親の持ち物の片付けをやらなくてはならないという人も少なくありません。
とくに今のシニア層のかたの中には、戦中や戦後すぐの物が少ない時代を過ごされたご経験からか、「捨てる」という行為に罪悪感を抱き、その結果、物を溜め込んでしまっているかたも多くいます。
今回はそんな親世代の持ち物の片付けについて考えてみたいと思います。
親も子も「片付け」が必要な理由を理解しておく
近年は「終活」という言葉が使われているように、物や必要な情報を整理しようという動きもあります。ご自分でしっかり「終活」をされていればいいのですが、なかなかそうともいかず、亡くなったあとに残された莫大な持ち物を、ご家族がどうしていいかわからないということが往々にしてあります。
何が大切なものなのか、何かを代々子孫に受け継いでいかなければならないものがあるのか等、亡くなったあとではまったくわかりません。
それらを区別するのも面倒になり、ともすると不用品処分業者に安くはないお金を払って、全部まとめて処分してもらうということにもなりかねません。
だからこそ、所有者である人がしっかりしているうちに、ある程度の持ち物の整理というのはしておくほうが良いのです。
高齢の親の片付けを手伝うとき気をつけるべきことは?
自分の親や配偶者の親などの片付けを手伝うとき、気をつけなければならないこともあります。
高齢になっているから持ち物を整理する、「終活」するということは、捉え方によっては「あなたの人生は残り短いのだから」と突きつけられているように感じる人もいるでしょう。そう感じてしまうのは、やはり寂しいことではないでしょうか。とくに身内の場合、遠慮なく言葉を発してしまうことが多いようです。
親の持ち物の片付けは、近年多くの人の共通問題となっていることもあり、テレビ番組などで特集の実録を放送しているのを何度か見かけました。親御さんがなかなか捨てたがらないということもあり、子供の側は、どうしても言葉がきつくなってしまい、険悪なムードが漂っているものが多く見られました。
家族間の関係は他人から見ても分からないものですが、できる限り親御さんの気持ちのペースを見ながら片付けを進めるほうが、結果的に早く片付けられるのではないでしょうか。
片付けをはじめる前にまず準備すべきこと
これはシニアのかたの持ち物を片付けるときに限らず、大々的に片付けをするときにやっておくべきなのが「片付けを早く進める」ための準備です。
処分するものは、燃えるゴミなのか燃えないゴミなのか。地域によって分別は変わりますが、大きなゴミ袋を用意しておくこと。そして、さらにそのゴミ袋をダンボール箱などにセットして用意しておくことがポイントです。
ゴミ袋だけで分別して部屋に置いておくと、捨てる度に袋を開いて中身を確認しなくてはならず、その作業が意外と手間になります。
そこで、ゴミ袋はダンボール箱にテープで貼っておけば、不要な物はポンポンと入れていくことができます。この差が実は片付けの時間に大きくかかわってきます。
ポンポンとゴミ袋に入れられる環境を作っておくことで作業が手早く進み、物を手に取ってから捨てるか否かの判断に使う時間も短くなっていくのです。
一方で、捨てるのではなく「残すもの」があります。残すものの中でも大切なもの、重要なものは、一つの箱にまとめて入れていくようにします。そうすることで「本当に重要なもの」が他の人にもわかるようになります。
最初はどこから片付けていくのがラク?
ここまで述べてきたように、シニア世代のかたにとって、たとえ身内と言えど自分の大切な荷物を捨てられてしまったり、自分以外の人に整理をされてしまったりするのは、少なからず抵抗があるものです。
そのため、片付けの“最初”がいちばんハードルが高いといえるでしょう。
まずは目につきやすいところから、そして狭い範囲の場所からはじめていくことで、片付け終わったときの達成感も味わえます。
おすすめは玄関です。多すぎる靴、多すぎる傘、インテリアとしての置き物などが山積みになっているご家庭もあります。そのような玄関にあるものを、今の生活に必要なものだけにしていくことを目標にして、一緒に片付けていくと進みやすくなります。
玄関が終わったら、次は、なるべく狭い範囲で、家族みんなが使う場所、たとえば洗面所や脱衣所などから進めていくと良いでしょう。
引き出しの中の整理は注意が必要
引き出しの中というのはパーソナルな場所なので、勝手に開けられたくないと感じる人もいます。引き出しを片付けるときは、基本的にご本人に積極的にやってもらうのがおすすめです。
引き出しの中は、今まで人目につきづらかったからこそ、ブラックホールのように要らないものが詰まっている場合もあるので、ご本人にやってもらいながら一緒に確認していくようにするのがいいでしょう。
実家の片付けや親の持ち物の整理は、亡くなってしまったあとに大変なことになるよりも、時間と気持ちにゆとりをもって進めていくようにしたいもの。気になっていたかたは、この機会に少しずつでも始めてみてはいかがでしょうか。
●介護しやすい部屋とは?暮らしの中で「やめるべき」8つのポイントを家事アドバイザーが指南