「母の願いだった最期を自宅で」叶えられなかった後悔 在宅介護における訪問診療の注意ポイント【専門家解説】
人生の最期は自宅で迎えたい…そんな思いで「在宅介護」を始めたものの、家族に大きな負担がかかってしまうのも現実だ。介護する人、介護される人が共倒れにならないために、「頑張りすぎなくても大丈夫」なコツを専門家が教えてくれました。準備から、最期の迎えるときまで、笑顔でいられる時間が増えしていきましょう。
教えてくれた人
・ジャーナリスト 石川結貴さん
・介護・暮らしジャーナリスト 太田差惠子さん
・南日本ヘルスリサーチラボ代表 森田洋之さん
「母の容体が急変し、救急車を呼んだ」後悔とは
やがて訪れる“最期のとき”に落とし穴があった。兵庫県在住の川田里美さん(仮名・60才)は4年前から母親を在宅介護してきた。母と介護生活でどんなことをしたいか、そして最期をどう迎えたいかなどを話し合ってきた。しかし今年の8月、やってきたそのとき、とっさに取った自分の行動を悔やんでいる。
「最期を自宅で看取るつもりで在宅介護を続けてきたのに、母が急変したときに慌てて救急車を呼んでしまいました。母は病院に搬送され、延命治療の末に入院先で息を引き取りました。“家で死にたい”という願いを叶えることができず、ずっと後悔しています」
悲劇を回避するために、森田さんは親と意思疎通が取れるうちに、施設への宿泊や訪問を組み合わせた小規模多機能型居宅介護と、在宅医の両方と契約しておくことを推奨する。
「ギリギリまで本人の要望を聞くことができますし、小規模多機能型居宅介護なら“風邪をひいたので今日急に預けたい”という状況にも対応してくれます。
また、在宅医がいれば急変したときも対応してくれます。例えば、高齢者が重症化しやすい肺炎になっても入院を避けられる。在宅医と契約していれば自宅で薬をのめますし、点滴もできます。もちろん本人が延命治療を希望するなら救急車を呼んでもいいですが、最期は自宅で親族に見守られたいというかたは多いと思います。在宅医がいるとその願いを叶えられます」
訪問診療についてしっかり下調べを
ただし、注意点もある。
「ホームページで訪問診療をうたっていても、実際には外来診療がメインで訪問診療に当てているのは1週間に1日だけとか、夜間や休日の対応はしないというクリニックがあります。容体が急変しても医師がすぐに来てくれず、親や配偶者を苦しませてしまうこともゼロではありません。しっかり調べずに、医師に“がんばりましたね”と言われながら穏やかに亡くなるというイメージだけを持っているのは危険です」(石川さん)
介護疲れが出たらケアマネに相談を
在宅介護は看取りによってゴールを迎えるが、その日がいつ訪れるかは本人にも介護者にもわからない。先が見えない状況の中で介護者が「もう家で見るのは限界」と感じることは少なくない。
「介護疲れがあると思ったらケアマネジャーに相談して、ショートステイを利用するといい。特別養護老人ホームや介護老人保健施設などで連続最長30日間受け入れてもらえます。医療面で受け入れが難しい場合は、訪問医などに休養を目的とした『レスパイト入院』を手配してもらいましょう」(太田さん)
石川さんも「人に頼らない」は最もやってはいけないと声をそろえる。
「“家族だからがんばります”と言うのはやめましょう。無理ですと言える力を持たないと自滅してしまいます。いちばん大事なのは自分を守ることであり、いちばんやってはいけないのはすべてを抱え込もうとすることであることを肝に銘じてほしい」
まずはあなた自身を大事にすることから始めてほしい。
在宅介護を助ける「介護保険サービス」
■居宅介護支援
ケアマネジャーに相談した内容のもと、ケアプランが作成され、それに沿って適切な介護サービスの提供者や事業者が調整される。
■訪問介護(ホームヘルプ)
ヘルパーが自宅を訪問して食事、入浴、排泄などの身体介護や掃除、洗濯、調理などの生活支援を行う。
■訪問入浴
看護師を含めたスタッフが自宅を訪問し、事業者が持参した浴槽で入浴介助をする。
■訪問看護
看護師などが自宅を訪問し、病気や障害に応じた医療行為や療養生活のアドバイスをする。
■訪問リハビリ
医師が必要と認めた場合、理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職が訪問してリハビリを行う。
■定期巡回・随時対応型訪問介護看護
24時間365日、定期的な巡回など必要なケアを必要なタイミングで受けられる。介護と看護が一体となったサービスも。
■通所介護(デイサービス)
利用者が日帰りで介護の専門施設に通い、食事や入浴などの日常生活の支援、機能訓練などのサービスを受ける。
■通所リハビリ(デイケア)
医師が常駐した介護施設や病院、診療所などに通い、日帰りでリハビリを受ける。
■短期入所生活介護(ショートステイ)
週に1泊など短期の宿泊。入浴や食事の介助を受けられる。本人はもちろん、自宅で介護する家族の休息にも必要。
■小規模多機能型 居宅介護
施設への通いを中心に宿泊や訪問を組み合わせたサービス。地域住民と交流しながら、生活支援、機能訓練が受けられる。
■訪問歯科
歯科医が自宅を訪れ、口腔ケアや虫歯の治療、入れ歯の調整などを行う。
■訪問薬剤師
薬剤師が患者に合わせた用量・用法の薬を持って自宅を訪問し、お薬カレンダーに服用すべき薬をセットしてくれる。
■福祉用具貸与・販売
介護ベッドや歩行補助杖などの介護用品のレンタル・購入費用の助成が受けられる。
■居宅介護住宅改修費
介護保険制度により1人20万円を上限に、介護のリフォーム費用が助成される。ケアマネジャーと相談の上でのみ利用可能。
※女性セブン2023年10月26日号
https://josei7.com/
●介護福祉士・安藤なつさんら経験者が語る「介護はひとりで抱えないで」安心の頼り先を見つける5つのステップ
●使わないと大損する!介護の給付金&補助金を社労士が解説「介護で仕事を休んでも上限33万円給付」
●「早めの要介護認定」「使える制度を最大限活用」寝たきりで困らない対策ともらえるお金&受けられるサービス一覧|自己申告と情報収集が心地よく暮らしていけるカギ