パートナーとの”触れ合い”で健康に!いまさら恥ずかしい人へ「簡単スキンシップ法」8選を専門家が指南
パートナーとのスキンシップは相手との絆を深めるといった心理的なメリットがあるだけでなく、血圧を下げたり肌をきれいにするなどの身体的効果もあるのだとか。いまさら恥ずかしくて自分からは触れられない…という人にこそ読んでほしい。触れ合うだけで健康になれる方法を紹介する。
教えてくれた人
山口創(はじめ)さん / 身体心理学者
桜美林大学教授。専攻は健康心理学、身体心理学。臨床発達心理士。スキンシップの効果やオキシトシンについて研究している。『手の治癒力』(草思社)など著書多数。
“手当て”は癒し
体調が悪いときに背中を手でさすってもらうと楽になる。不安なときに手を握ってもらうと落ち着いてくる―といった経験は誰しもあるだろう。
けがや病気の処置をすることを“手当て”というように、手で体に触れると癒し効果が得られることは、古来知られてきた。では、なぜ手で触れると痛みがやわらいだり、気持ちが落ち着いたりするのか。
「幸せホルモンや絆ホルモンと呼ばれるオキシトシンという物質が分泌されるからです」
とは、身体心理学者の山口創さんだ(「」内、以下同)。
オキシトシンとは、脳の視床下部で産生され、脳下垂体から分泌されるホルモンの一種。
「オキシトシンは赤ちゃんが母親の乳頭を吸うことで分泌が促進されるため、主に母乳を出すために必要なホルモンとされています。出産時に陣痛を起こして分娩を促したり、出産後に子宮の回復を促進する働きも担っています」
妊産婦に与える影響が大きいホルモンだが、安らぎを与えてストレスを緩和したり、共感力を向上させたり、ポジティブな気持ちにさせるといった効果もあるという。
「オキシトシンは、気持ちいいと感じるようなことを行うと分泌されますが、親しい人と触れ合うことによって分泌量が増えることがわかっています」
互いの気持ちを共有しないと幸せホルモンの分泌は増えない
とはいえ、やみくもに人に触れればいいわけではない。
「触れたい、触れてもらいたいという気持ちをお互い共有することが不可欠です。触れたくない、触れてもらいたくないと思う相手とスキンシップを図っても、オキシトシンの分泌量は増えません」
つまり好きな人同士で、お互いに触れたいと思うときに触れ合うことがお互いの癒しになるというわけだが、さらにこんな効果もあるという。
「ドイツのボン大学の研究によると、オキシトシンを投与した既婚男性に魅力的な女性を近づけても、ある一定の距離以上は近づかせないという実験結果が出ています。つまり、妻とのスキンシップが日常的にある人は、ほかの女性と触れ合う気持ちが起きにくく、浮気をする可能性が低くなる、というわけです」
スキンシップとしては、キスをしたり手をつないだり、抱き合うことなどが理想的で、特に相手が緊張や不安を感じていたり興奮したりしているときは、ぎゅっと圧をかけて抱きしめたり、手を握ってあげたりすると、副交感神経が優位になり、心を落ち着かせる効果が高まるという。
そこまでのスキンシップを日常的に行うのは難しい場合、マッサージもおすすめだ。
「オキシトシンには、相手の感情と同調しやすくなる作用もあるため、リラックスした状態でマッサージをしてあげると、相手も安心し、互いにオキシトシンの分泌が促進されます」
マッサージをしてあげることが、自分自身を癒すことにもつながるのだ。
スキンシップは感染症や風邪の予防にもつながる
オキシトシンが心臓の働きに影響を与えることもわかってきたという。
「オキシトシンには、血管を柔らかくして広げる作用がありますが、私が大学生を対象に行った研究では、ペアで相手の背中や手をなでるだけでオキシトシンが分泌され、不安や抑うつ状態が改善。呼吸が安定して心拍数も低下し、血圧が下がるといった効果もありました」
また、オキシトシンが分泌されると、肌の幹細胞が活性化。ターンオーバーを促すため、美肌効果も期待できる。
「さらに最近の研究では、触れ合うことによりサイトカインという生理活性物質が作り出されることもわかりました。これは、免疫機能を活性化させる物質のため、新型コロナウイルスなどの感染症や風邪の予防にもつながります」
スキンシップは愛を育むだけでなく、美と心身の健康にも役立つ“万能薬”なのだ。