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兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第217回 特養ショートステイを予約しました!】

 ライターのツガエマナミコさんは、若年性認知症の兄と2人で暮らしています。兄のサポートが始まり7年が経ちましたが、症状が進行した兄を在宅でサポートすることに限界を感じてきたマナミコさん。いよいよ兄の施設探しに向けて、本格始動です。

 * * *

まずはショートステイから

 朝、リハパンの中にお便さまがベットリだったので、浴室でシャワーをしていたら、ほどなくして兄のお股の間から追いお便さまがボトリボトリ…。シャワーのお湯に流されて散らばるお便さまを見ながら、わたくしが「あちゃ~」となったことは想像していただけるかと思います。これは介護あるある。何度やられても嫌なものでございます。

「お風呂場でよかったね」と思う反面、この浴室に素足で入り、髪も洗えば、体も顔も洗うのにと思うと決して気持ちのいいものではございません。匂いも鼻の奥に残りますし、お掃除で汗だくになりますし、当の兄はスッキリ涼しい顔をしてテレビを観ておりますし・・・。

 今朝はそんなスタートでございました。

 食事介助も続いております。朝はパンと果物なので一人で食べてくれますが、昼食と夕食はどうしても途中で食べるのをやめてしまう傾向がございます。急に食べ方を忘れてしまうのでしょうか。四分の一ほど食べたか食べないかでお箸を箸立てに戻してしまったり、スプーンを物陰に隠したりいたします。でもお口まで持って行くと食べるのです。「あ~ん」も積極的にいたします。途中で食べるのをやめてしまうのは、お腹がいっぱいなのではなく、脳が半分寝てしまうからかもしれないと、素人介護者は考えております。

 そんな中、ケアマネさまとデイケアの介護主任さまとの月例会議がございました。

 兄がデイケアでお世話になってすでに2年以上経過いたしましたが、コロナ禍だったのでずっとケアマネさまの来訪だけでした。今回初めて介護担当者を交えての介護計画会議でございました。毎回「これまでと同じでいいですね」という確認の場なのですが、今回のメインは施設入居に向けてのお話となりました。

 ケアマネさまは「見た目は豪華だったり素朴だったりいろいろですけど、中身(やっていること)はどこもだいたい同じです。あとは料金が少し違うぐらいです。でも第2段階(介護負担限度額認定証)ならそんなに違いありませんよ」とおっしゃり、介護主任さまからは「利用者さんからは〇〇〇という特養をよく聞きますよ」と有力情報をいただきました。続けて「今がギリギリかもしれないですね。食事介助がフルで必要になってからだと、スタッフの手がそれだけかかってしまうので人手に余裕がないと受け入れにくいんです。今なら声掛けと一部介助ぐらいなので、今のうちがいいと思います」と背中を押していただきました。

 食事介助ががっつり必要だとウエルカムされにくいなんて、なんのための施設なの?と思いますが、施設は施設で慢性的な人手不足の事情がございます。有料老人ホームならば、そんなこともないのでしょうけれども、庶民は特別養護老人ホームが拠り所でございますから、なんとか改善していただきたいものです。

 早くいくつか見学しなければと思っておりましたが「まずは目ぼしいところでショートステイしてみては?」とご提案され、さっそく介護主任さまがよく聞くという特養〇〇〇でショートステイをお願いすることにいたしました。

 ケアマネさまに予約をお願いすると、施設の方からお電話をいただきました。事前に施設に行って契約すれば宿泊当日の朝は施設まで付き添わなくても良いということだったので、ツガエは早々に足を運んでまいりました。

 その施設は、とある駅からバスで15分ほどいった高台で、バス停から坂道を上ると、緑豊かな中にいかにも介護施設といったお姿で建っておりました。入口を入ると誰もいないダダ広いロビーがあり、閑散とした雰囲気。「こんなに広いのに誰もいないんだ」と不思議な気持ちになりました。入居者は90人、ショートステイは10人受け入れ可能の館でございます。

 対応してくださったのは介護主任さまでございました。契約の手続きが終わるとショートステイの部屋を案内してくださり、にこやかなお年寄り4人がテーブルを囲んでお茶を召し上がっているところを拝見いたしました。高級感や今風のおしゃれ感はありませんが、良い意味でごく普通で落ち着く感じに好感が持て、「もうここでいいんじゃないかな」と思ってしまったくらい。というよりも、見学が面倒になってきただけでございますが……。でも希望すれば入れるというわけはなく、「この人大変だわぁ」と思われたら、空きがあってもやんわり不合格になるかもしれません。

 兎にも角にも3週間後、兄はここに3泊いたします。昨年秋の1泊2日以来、2度目のショートステイとなります。愛想よく問題なく3泊4日を過ごしてほしいと祈るばかり。さて、どうなることやら。こうご期待でございます。

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文/ツガエマナミコ

職業ライター。女性60才。両親と独身の兄妹が、8年前にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現64才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。病院への付き添いは筆者。

イラスト/なとみみわ

コメント

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この記事へのみんなのコメント

  • 匿名

    素人考えではもう、認知症のおくすりはのまなくて良いのでは?お腹がゆるくなる副作用もあるようですし。それにしても見守りや全介助だと施設に入れないというのは納得いきません。だからこそ施設にお願いせねばならないのに。そのうち家庭のあちこちで心中や殺人が頻発するか、ネグレクトされた酷い状態の人が大勢ふらふらと街中を歩いている状態になると思います。消極的解決としては安楽死が認められるようになるのでしょうか。ディストピアな 投稿になりましたが、他の皆様と同様、書き下ろしも加筆してぜひぜひ紙媒体の単行本も発行してほしいです。

  • あこ

    少しずつ施設入所に向けて進んで来られていて嬉しいです。 浴室内でのお便さま、我が家の夫も全く同じでございます(つい口調がツガエ様にになってきてしまいます)夫は浴槽内でもしていましたが・・・。 夫も要介護3なので現在ショートステイを毎月23日間使っています。 2か所の施設を行ったり来たり、その間通算で1週間ほどは自宅に帰ると言うローテーションです。3年ほど前に利用した時には帰宅願望があったようですが、現在は事態があまり理解できていないのと記憶が出来ないためか1泊か10泊か分からないようで、その点はありがたいです。 施設は要見守りが必要な人はお断りをされるので(本当に腑に落ちない話ですが致し方ないようですね)私もその前にと施設入所を模索している所ですが、減免対象にならないので費用面も考えて(年金暮らしの夫婦なので)思案中です。 ツガエさんはお若いしまだまだご自身を大切にしていただきたいので、施設入所に前向きになられてとても嬉しく思っています。 先ずはショートステイを利用してレスパイトされて、お兄様が施設に慣れて来られたころに入所できると良いですね。 夫よりお兄様の方がお若いので進行も少し早いような気がしますが、ほぼ同じ歩みで進んで来られているので私もとても参考になります。 この記事も多くの読者がいらっしゃることと思いますが本にされれば更に多くの方が参考にされることでしょう。 ホウカンさんが仰るように私もそう願っています。

  • ホウカン

    ツガエ様。 いつも興味深く拝見しております。 ツガエ様のお話を読んでいますとお一人で本当によく頑張っておられるなと感心しています。私は訪問看護師をしておりますが、なかなかそこまでの介護をされている方は少ないのではないかと思います。お兄様のお世話の大変さを話される中にも、お兄様への愛情が大変伝わってきて、懐が広くて深い方なのだろうなと思いました。毎日、いつまで続くかわからない介護と一生懸命向き合っておられるご様子に敬意を表する思いです。ご自分の時間がなかなか取れないと思いますが、ショートが軌道に乗ったらリフレッシュしてください。介護はonとoffが必要です。使えるサービスをたくさん使ってご自分の時間を過ごして下さいね。 この度コメントをさせていただいたのは… これらは本になったりはしていませんか?もしなっていないのなら、是非本にしてみて欲しいです。同じ立場の方、これから介護を始める方の手助けになるのではないかと思いました。もちろん私もその時には買わせていただきます。 これからも応援しています。 お身体ご自愛下さい。

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