NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~ 第3回「母は慢性膵炎、脂質5gの壁」
山口県で暮らす栄養士で漫画家のうえだのぶさんの母は「膵炎」で2度目の緊急入院。原因不明の「慢性膵炎」と診断され、食事で脂質を控える「NOオイル」生活が始まった。退院時の栄養指導で、1食「脂質5g以下」に抑えてくださいと言われ――。
エビならいいの?
脂質1食5gの壁
母は「慢性膵炎」。この病の対処法は食事で脂質を制限すること。油っこい料理や脂肪分の多いケーキが好きな母は、中性脂肪値や体脂肪率も高めだから、健康のためにも、いい機会ではあるのですが、1食5g以下とは…。
「脂質5g」って言われてもピンとこないですよね。
食べ物に含まれる脂質量は、たとえば卵1個(50g)がほぼ5g。うーむ、これはかなりの少量。退院の日、管理栄養士さんの栄養指導で脂質の少ない食べ物の話になりました。
のぶ「魚介類だと、エビやイカはどうでしょう?」
管理栄養士さん「エビやイカは、脂質がほとんどないので大丈夫ですよ」
すると母は、とっても嬉しそうな顔で言いました。
母「じゃあ、エビフライはOKですね!」
――いやいや違う、そうじゃない。
管理栄養士さん「揚げ物、お好きなんですか?」
母「はい!」
戦時中生まれの母にとって洋食、とくに揚げ物は「特別なご馳走」。嬉しそうに答える母に、管理栄養士さんが、ビシッと
「これからは、揚げ物は年に1度、お誕生日くらいにしましょうね」
母「えっ・・・」
退院して体調がよければ好きなものを食べられると、母は思い込んでいたんです。
「これからは」という言葉に初めて現状を理解して母はショックを受けたようで、横にいた私も心臓をギュッとつかまれたような気持ちになりました。
管理栄養士さんいわく、次回の検査で膵臓の数値が良くなれば、脂質は1食5g(1日15g)という極端な制限はしなくても大丈夫とのこと。
病院からの岐路、母はしばらく無言でした。
「脂質5gの夕食、何にするかなあ~」と思案していると、母がボソッと、「ねえ、お寿司ならいいんじゃない?」
のぶ「もしかして、エビとイカ? え?ずっとそれ考えてたの?」
母「やっと退院したんだから、何かおいしいもの食べたいじゃない」
母の食いしん坊執念に大笑いしながら、スーパーでお寿司のパックを買って帰りました。
自宅に戻った私は、早速『食品成分表」(栄養士のバイブル!)のページをめくり、脂質の少ない魚を調べました。
「脂質5gで母がおいしいと思うものを作ろう!」と、心に決めた瞬間でした。
NOオイルMemo「寿司ネタの脂質」
栄養士の資格を持つのぶさんが日々読み込んでいる『食品成分表』によると、脂質が少ないNOオイルな寿司ネタは、エビやイカのほか、貝類、まぐろは赤身のみ!
これらは0.1g以下(1切れ10gで計算・シャリは除く。まぐろは「みなみまぐろ」で計算)。
一方、大トロ(2.5g)、うなぎ(1.9g)やあなご(1.0g)。また、青魚の〆さば(2.0g)やサンマ(2.1g)は脂質が多め。
サーモンやサンマ、ハマチは3ネタで5g超えてしまうので、のぶママは、脂質が少ないネタと組み合わせて食べるという工夫をしているんだとか。
ちなみに、脂質の摂取目安量は、摂取エネルギーの20~30%(厚生労働省「日本人の食事摂取基準」2020年版)となっており、成人女性だと1日約40~50gがおおまかな目安。
――1食5g(1日15g)とは、なかなかハードルが高い!
のぶさん&母のNOオイルな食生活はまだ始まったばかり。次回は、8月30日公開の予定です。
絵と文
漫画家・うえだのぶ
イラストレーター・漫画家。57才。山口県で80才の母とふたり暮らし。40代で地元の短大に入学し、栄養士の資格を取得。地元山口県を拠点に、漫画を利用した食育や時短調理などの栄養講座の講師なども務めている。
ホームページ:uenobu.com アメブロ:https://ameblo.jp/abareinupoti/ インスタ: https://www.instagram.com/nobuueda/?hl=ja