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認知症介護の次に大きな悩みは何?あなたの心を軽くする方法

 岩手に住む認知症の母を東京から遠距離で介護を続けている工藤広伸さん。祖母や父の介護経験もあり、その中で学んだこと、実践したことなどをブログや書籍で広く発信中だ。

 認知症介護をする家族は、精神的に余裕がなくなってしまうことがあるかもしれない。”しれっと”をモットーに介護を続ける工藤さんの心の持ち方には、学ぶことが多いと評判。当サイトのシリーズ「息子の遠距離介護サバイバル術」でも、介護家族ならではの視点での介護術をご紹介。

 今回のテーマは「悩み」だ。介護に限らず、心に余裕がなくなってしまっている人は必見!今すぐ試してみたいお悩み解決法を教えてもらった。

 * * *

 わたしが書いた『がんばりすぎずにしれっと認知症介護』(新日本出版社)という本の中で、特に反響の大きかった話が『認知症介護の次に大きな悩みは何ですか?』です。

 本の一節を引用します。

≪みなさんは、認知症介護以外にもいろんな悩みを抱えています。自分の心の中にポケットがあるとして、そこに手を入れてみると「悩みのビスケット」がたくさんあるはずです≫

抱える悩みを、ポケットの中の「ビスケット」にたとえると…

 わたしは人が抱える悩みは、心の中にポケットのようなものがあって、その中に無造作に入っているイメージを持っています。ポケットの中は真っ暗で、手を入れて中のものを触ってみると、大きさも形もバラバラ。しかも、そのものが何なのか、ハッキリとは分からない、そんなイメージです。

 この話を書いているとき、わたしの頭の中では自然と、童謡『ふしぎなポケット』の歌が流れてきました。「ポケットの なかには ビスケットが~」。

 この歌の歌詞から、「人の悩みは、このビスケットに似ているかも」と思い、そのイメージのまま文章にしました。あまりピンと来ていない方もいると思うので、現実の世界の話と合わせて紹介します。

悩みのビスケットを並べてみる

 人が抱える悩みはいろいろで、たとえば仕事の悩み、自分や家族の健康の悩み、夫婦間の悩み、子育ての悩み、自分の生き方の悩み、そして認知症介護の悩みなど、多岐にわたると思います。

 それらはすべて、自分の心のポケットの中に入っていて、手で触ることもできるのですが、手探りの状態では、そのビスケット(悩み)が何なのか、よく分かりません。

 そこでわたしは、これらのビスケットをいったん、ポケットから取り出し、明るいテーブルの上に一度並べてみることを、本の中でオススメしています。

 ビスケットを並べてみたとき、それぞれのビスケットの大きさはどれくらいでしょうか?認知症介護のビスケットが最も大きい人もいれば、仕事のビスケットが最も大きい人もいると思います。

 現在、認知症介護をしているご家族の場合、仕事よりも子育てよりも、認知症介護のビスケットの大きさを最も大きいと捉えている人が多いように思います。ブログやSNSのコメント、講演会でお会いしてお話を聞いた結果からそう感じるのですが、おそらく未体験の認知症介護に、どう対応していいか分からないというとまどいがあるからだと思います。

 最大化したビスケットを小さくするためには、「認知症の人や介護家族にあったもの忘れ外来を選ぶ」、「認知症のお薬の量に注意する」、「接し方に注意する」、「認知症の人にあった介護施設を選ぶ」などという方法があると思いますが、残念ながらゼロにすることは難しいでしょう。

 認知症は基本的には完治はせず、症状の進行を遅らせることはできても、亡くなるまで介護が必要になる病気です。その時間の長さに絶望してしまう介護者もいるのですが、それでも家族は認知症と付き合っていかなければいけません。

 介護家族は、認知症介護というビスケットを、常にポケットの中で抱える必要があるのです。

認知症介護の悩みの次に大きいものを探す

 そこでやってみて欲しいのが、認知症介護の次に大きいビスケットは何なのかを探すことです。

 なぜかというと、認知症介護と違って、次に大きいビスケットはひょっとすると、砕いたり、食べたりと自分でコントロールすることができるかもしれないからです。

 わたしの場合は、仕事のビスケットの大きさが、ポケットの中の8割以上を占めていた時期がありました。介護と仕事の両立に加え、中間管理職の難しさ、転職直後で会社に慣れない、長時間勤務などが理由です。

 同時に、祖母や母の遠距離による認知症介護を行っていたので、ポケットからビスケットがあふれていました。

 結局、わたしは介護離職したことによって、このビスケットが割れてなくなりました。それからというもの、ポケットには小さな認知症介護のビスケットは常に入っていますが、ポケット自体には余裕があります。

 このように、ビスケットの大きさを小さくできるものを探して、そのビスケットから小さく砕いていって、自分の悩みの総量を小さくするという努力も必要ではないでしょうか?

 認知症介護が始まった瞬間から、すべての悩みと認知症介護を結びつけ、なぜかそれら悩みまで、認知症介護のせいにしてしまう方が多いように思います。

 認知症になってしまった家族を責めたところで、認知症介護のビスケットは小さくなりません。それどころか、認知症の人は責められたことによって、情緒が不安定になったり、症状が悪化したり、認知症が進行する原因にもなりかねません。

 自分でビスケットの大きさをコントロールできるものと、そうでないものを分け、コントロールできるものから少しずつ、つぶしていくことで心に余裕が生まれるかもしれません。

 今日もしれっと、しれっと。

工藤広伸(くどうひろのぶ)

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士、なないろのとびら診療所(岩手県盛岡市)地域医療推進室非常勤。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(https://40kaigo.net/

●お知らせ

 工藤広伸さん新刊『ムリなくできる親の介護 使える制度は使う、頼れる人は頼る、便利なツールは試す!』(日本実業出版社)が12月20日に発売になります!工藤さん、一年ぶりの新著は、介護中にひとりで抱えがちな悩み、「こんなときはどうすればいい?」が「こうすればもっと楽になる!」に変わる、たくさんの介護ノウハウ満載の一冊。
価格:1512円

このシリーズのバックナンバーを読む

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●自分の便をいじってしまう「弄便(ろうべん)」その対処法

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