兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第194回 干支をひと回りいたしました】
若年性認知症を患う兄が元気だった頃から入っていた保険は、要介護状態になったら、保険料の支払いが免除されるという特約がついていた!一緒に暮らす妹のツガエマナミコさんに届いた朗報ですが、条件によって免除かどうかは不明という状況。今回はその続報です。先日、めでたくお誕生日を迎えたマナミコさんが現在の心境を語ります。
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祝!マナミコ還暦
「……男の子は何人?」
夕食の調理をしていると突然にこんな言葉を投げかけられました。
兄の頭の中にはいったい何が映っていたのでございましょうか。わたくしには「?」しか浮かびませんでした。
「どういうこと?」というと「女の子男の子が何人か…いるのかな?」とのこと。情報量がほとんど増えないので困っていると「ここ、いるんだよね?ちっちゃい子」とさらに意味不明。
「男の子はお兄ちゃん1人、女の子はマナミコ1人。ここは2人で住んでいるんだよ」と答えてみましたが、兄は小首をかしげて納得しない様子でございました。
しばらく、Q「子どもたちは何人?」、A「子どもはいないよ」という押し問答が続きました。でも、いくら言っても納得してくれないので、最終的には「ああ、あの子たちね。もう自分のお家に帰ったんじゃないかな」と答えてみました。やはり納得はしていないようでしたが、そこでやっとこの話題から解放されました。
テレビの中から微笑む子どもが全部家にいると勘違いするのでしょうか。じつに平和的な妄想で助かります。
そして192回、兄の保険料免除の続報でございます。
あれから保険レディさまの再訪があり、保険料免除よりも先に要介護状態になったときの一時金の請求手続きについて説明がございました。わたくしは保険料免除に目がくらんでおりましたが、一時金がなんと100万円もいただけるそうなのです。
例によって医師の診断書が必要とのことで、また診断書の申請をしに病院へ行かなければなりません。たとえ診断書を提出しても一時金が出るとは決まっていません。もしかすると診断書の内容によって出ない可能性もございます。そのときの診断書代は無駄になるのでしょうか。とほほ。
もし一時金が認められれば保険料免除も認められるのかどうか。それもよくわからない状態ですので、過度な期待をせずに粛々と事を進めていこうと思っております。
ただ、意外と早くあの「レターパック」が使えるチャンスが巡ってきたことに心が躍っております。そうです、185回でやむなく持ち帰った520円のレターパックでございます。宛名に自分の住所と名前を記入してしまったアレが無駄にならずに済みそうで本当によかった。でも、そんなときに限って持って行くのを忘れてしまうというポカをするのもツガエのあるある。ご油断召さるな、わたくし。
申請時に本人を連れていくことがレターパックで診断書を郵送していただける条件でございますから、なにがなんでも兄を連れて出かけなければなりません。次回診察日は再来月と遠いので、診察日以外の日をまた1日潰すことに…。気が重いことでございます。
花粉にあえぎ、兄のお便さまにあえぎしておりますが、まぁ、干支を一回りしたことや、両親を見送ったことで生まれてきた義務は果たした気になっております。あとは余生と受け止め、欲をかかず、他人を妬まず、「生きてるだけで幸せなんだ!」なんてことも考えずに流れるように日々を過ごしていきたいと思っております。
最近聞いて感銘を受けた言葉がございます。おバカタレントと呼ばれ、その後子育てをしながら大学に入学され、現在大学2年生のスザンヌさまが、お母さまやおばあさまに言われてきたお言葉だそうでございます。
同じYouTube番組をご覧になった方がいるかもしれませんが、今回はこの言葉を最後に締めたいと思います。うまくいかないことを世間が悪いとか、誰かのせいにするのは簡単ですけれども、それではギスギスしてしまうばかり。そうならないための心持ちをバシッと言語化した名言だとツガエは思いました。
「自分の機嫌は自分で取りなさい」byスザンヌママ&グランマ
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性60才。両親と独身の兄妹が、8年前にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現64才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。病院への付き添いは筆者。
イラスト/なとみみわ
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