ポータブルトイレの導入をイヤがる父を説得するあの手この手。心穏やかに過ごせるなら、それでいい!【実家は老々介護中 Vol.14】
私は、都心で夫、子どもと暮らす美容ライターです。80才になる父は、がん・認知症・統合失調症を患い、母が在宅で介護をしています。実家を手伝いに行くと、父は年寄り扱いが気に入らず機嫌が悪いときも。父の気持ちを尊重しつつ、あの手この手で、心地よく身ぎれいに過ごせるよう工夫しています。
プライドを傷つけないよう、やんわりと勧める
父は念のためオムツをはく日が増えました。でも、「本当はトイレで排泄したい、這ってでもトイレで!」という強い意思が。このところ、夜中によろけやすく、支えて連れて行くこちらも一緒に転びそうになるので、部屋にトイレを置いたほうが良さそう。訪問診療の医師にも勧められているのですが、本人に納得してもらうにはどうしたら?
もう80才ですが、父は「年寄りみたいだから」と、歩行器もイヤがります。これまでOKだった福祉用具は年寄りっぽくないのか? 何がよくて、何がイヤなのか、理屈はわからないのです。
「ひとまずトイレ買って置いちゃえば?」
と、私は、すぐ買いたい派でした。正直、父は、言ったことを覚えてたり覚えてなかったりします。でも母は、
「勝手にはダメ。傷つくんだからね」
と。そこで、介護に来てくれる皆さんが、日々、父にプッシュしてくれることに。
「ポータブルトイレをお部屋に置くと安心ですよね。間に合わない心配がなくなりますし!」
「トイレって、コロナなどの影響で部品が不足したり、欠品続きだったんですよね。希望のトイレを早く押さえたほうがいいかもしれないですよ」
さすがに、トイレの欠品はもう解消してるそうなんですが、ちょっと都合よく話してるかな。母が念押しで、
「ほら、安心なほうがいいからさ、部屋にもトイレ置くことにしようか、ねえ」
と、言ってみると、父が
「ふんふん」
と、やっと同意してくれました! よし、今だ! と、ケアマネさんがすっ飛んで来てくれて、
「動線を考えて、使いやすい場所に置くことが大事です。昼間はソファの横に置きましょう。夜はベッドのすぐ横に。ラクに移動できるタイプを選んでください」
とのこと。次に、いつもの福祉用品の業者さんを呼んでくれて、説明を聞きました。
「トイレはレンタルではなく購入ですよ。よく出るのは、1割負担で3000円から8000円くらいのものです。お高めですが、家具調だと普通に木製の椅子みたいな感じです。重いので、移動するならキャスター付きがいいと思います。お安めなものは、全体に白っぽい樹脂とかポリプロピレンでできているものが多いですね。見た目のトイレっぽさが気にならなければ、軽いので移動して使うのに便利ですよ」
椅子の幅にはS、M、Lがあり、父にはMで良さそう。あとは筋力の落ちた父が安全に移動できるか、です。
「手すりをハネ上げでき、トイレの座面の高さを変えられるものがいいのでは。トイレの座面を、ソファやベッドの高さに合わせれば、お尻をスライドさせて座れるので、転倒しにくいですよ」
なるほど。結局、家具調でお値ごろな、介護保険1割負担で6000円くらいのものに決めました。
「同時にお勧めしているのが、トイレ用の処理袋なんです。袋に入れればゴミとして捨てられてラクだと思います。あとは消臭剤もあったほうがいいと思いますよ」
こういう雑貨は、そのうち100円均一のものなども試してみるとして、まずは一緒に買ってしまうことに。
→ダイソーの100円介護グッズ5選|記者が在宅介護で買ってよかったもの・不要だったもの
ありがたいのが、いつも通り納品が速く、夕方には届けてくれたことです。17kgと結構重い。それなのに、階段しかない家で本当にすみません。処理袋のセットの仕方も実演で教えてくれたので、母も使い方がよくわかり安心した様子でした。
さて、家に戻ると、母から電話が来ました。何とはなしに、しゃべりたい様子です。
「今日はありがとうね。夜、トイレがラクになるよねえ。私ももっと寝られるようになるし。なんかさ、ついこの間まで普通に病院に行って、トイレもひとりでできたのに、お父さん、どんどん先に行っちゃうよねえ」
それは私も思っていました。返す言葉が見つからないです。
「家で過ごせて、お父さんうれしいからさ。また、お兄ちゃんにも来てもらおうか、お父さん、お母さんも顔を見たいでしょ。言っておくね」
兄に、ポータブルトイレ用の消臭スプレーとか、気の利いたものを持って実家に顔を出すようメールしました。兄に会うと父母は気が晴れるようなので、よろしくね。私は私で、引き続き見守ります。
文/タレイカ
都心で夫、子どもと暮らすアラフィフ美容ライター。がん、認知症、統合失調症を患う父(80才)を母が老々在宅介護中のため、実家にたびたび手伝いに帰っている。
イラスト/富圭愛
●介護用品や福祉用具はレンタルがおすすめの理由 介護保険対象の品目や活用方法を解説