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「自分はヤングケアラーと気づいていない人は多い」当事者同士、交流できる場の必要性

 厚生労働省が初めてヤングケアラー当事者を交えたオンラインイベントを開催した。元ヤングケアラーとして執筆や講演活動を行っている、たろべえさんこと高橋唯さんが同イベントのトークセッションに登壇した。当日の様子をレポートしながら、トークショーで伝えたかった想いについて綴ってくれた。

厚労省初のオンライン交流イベント開催

 厚生労働省(以下、厚労省)による『ヤングケアラー「オンライン交流イベント」仲間とわいわいおしゃべりしよう』が開催された。当事者どうしが交流できるオンラインイベントは厚労省初の試みとなる。高次脳機能障害のある母を幼い頃からケアしてきた筆者は、ヤングケアラー経験のあるゲストとしてトークセッションに登壇してきた。

 配信会場は、東京・南青山にある企業のオシャレなオフィス。地方在住の筆者は4時に起きて準備を始めたが、予想外なことに休日にもかかわらず6時前には母が起きてきて私の周りをうろうろしてきた。相変わらずマイペースで、急いでいる私のことなど全くお構いなし。

 まあでも、今日ばかりはその図太さを少し見習った方がいいのかも・・・。そんなことを考えながら準備を終えて家を飛び出し、電車を乗り継いで3時間。

 キラキラしたオフィスに思わずたじろいでしまったが、打ち合わせで顔を合わせていたスタッフさんが優しく出迎えてくださり、厚労省のご担当の方々も気さくに話しかけてくださったので、だんだんと緊張が解けていった。

 グリーンがあしらわれ、明るく洗練された雰囲気のイベントステージにて、2時間半に及ぶ配信・収録が行われた。

 イベントでは、まずヤングケアラーにまつわるトークセッションが行われ、続いて当事者たちがZoomを介して交流を行った。

トークセッションで伝えたかったこと

 トークセッションに登壇したのは、一般社団法人ヤングケアラー協会代表理事・宮崎成悟さんだ。筆者と同じ元ヤングケアラーの宮崎さんとは、日本ケアラー連盟のヤングケアラースピーカーズバンク育成講座で知り合って4年、たびたびヤングケアラーに関するイベントで顔を合わせていて、優しいお兄さんのような存在だ。

 開始5分前、宮崎さんは「緊張で唇が渇いてきちゃったよ」と言いながらも、とてもリラックスした涼しい顔でステージに向かっていった。

 また、トークセッションの進行を担当されたのは、日本ケアラー連盟理事の田中悠美子さんだ。田中さんは、前述の育成講座に参加したときから面識があり、明るい笑顔にいつも元気を頂いている。頼もしい大先輩のお二人と一緒だったので、普段通りにお話することができたと思う。 

 トークセッションの模様は、厚労省のウェブサイトで公開されているので、ぜひご覧頂ければと思う。イベントで語った内容から、印象に残ったことをいくつか書いてみたい。

→アーカイブ動画

自分はヤングケアラーだと気がつきにくい

 進行の田中さんから「ケアが始まった経緯」を尋ねられ、

「小学生のときから母ができない家事を補っていました。あたりまえのことなので特に嫌ではありませんでした。中学生になると自分のことが忙しくて母のために時間を割くのが煩わしくなっていきました。

 高校生になると、進路などの難しい話は母とほとんどできず、悲しいような寂しいような気持ちでした」と答えた。

 筆者に限らず、ヤングケアラーにとって幼い頃からケアをすることは日常であり、本人はあたりまえだと思っているため、「自分がヤングケアラーであることに気が付きにくい」というのはよくある問題だ。

 中学生になって母のことを煩わしく思っても、高校生になって母と話が噛み合わなくなり、悲しいような寂しいような気持ちになっても、筆者にとってはケアをすることがあたりまえで、逃げ出したいとか、誰かに相談したいとは思わなかった。今回のイベントのような当事者どうしが繋がれる場があったらどうだっただろうか?

ヤングケアラーという言葉をうまく使って

 トークセッションでもうひとつ心に残ったのは、「ヤングケアラーという言葉を知ってどう思ったか?」についてだ。

 筆者がこの言葉を知ったのは大学生のときだった。母と私は”母と子”の関係なのに、”ケアする人とされる人”という関係性が強調されるようで、ヤングケアラーという言葉を受け入れることに抵抗があった。また、自分がしてきたことをケアと呼べるのかどうかも疑問だった。

 一方で、宮崎さんは同じ質問に対し、

「”ヤングケアラー”を調べてみると、これは自分のことだなと思って。これまで僕は、なんで自分だけ…と思うことが多かったのですが、ケアをしている若者は自分だけではないという安心に繋がりました」とお話されていた。

 イベントの最後で、「ヤングケアラーに向けたメッセージ」としても述べたが、今の筆者は、自分が言いたいときだけ「私はヤングケアラーです」と宣言するのもありだと思っている。

 かつての筆者のように「自分のことをヤングケアラーって言っていいのかな」とか「ヤングケアラーって言いたくない!」という葛藤がある人もいるかもしれない。

 しかし、”ヤングケアラー”という言葉を使うことで同じような経験をしている人に出会えることや、必要なサービスを受けられることもある。

 ヤングケアラーという言葉をうまく使って、家族の人生だけでなく、自分の人生を大切にしていける人が増えていけばいいと思っている。

当事者どうしの交流「ケアの内容が違っても仲間になれる」

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