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「自分はヤングケアラーと気づいていない人は多い」当事者同士、交流できる場の必要性

 イベントの中盤では、Zoomを使用して、ヤングケアラーや若者ケアラーの当事者たちがグループに分かれて交流を行った。筆者も会場から参加し、みなさんの会話を興味深く拝聴した。

「すずめの戸締りを観に行こうと思って」「SLAM DANKは見ないの?」「スラダンは世代じゃなくない?」「旅行にも行きたい!」「しまなみ海道とかいいな!」などとにこやかな雰囲気の雑談から始めたグループは、皆さんある意味“普通の”若者で、笑顔が見られる場面も多かった。

 それでも、サポート役の元ヤングケアラーのスタッフがきっかけをつくると、日頃「どうしたらいいのかな…」とモヤモヤしていることや「すぐ解決しなきゃいけないわけじゃないけど不安だな」と思うことをポツポツと話し始めた。それに対し、みんなで共感したり、一緒に考えようとしたりする様子から、ケアの内容が違っていても、仲間になることができると感じた。

 他のグループでは、話したいことが決まっている参加者も多く、堰を切ったようにケアの話が始まった。

「初めて他人にケアの話をした」「これまで頑張って生きてきた」などと話している様子を見ていると、ケアをしてきた子どもたちの声を受け止める場の必要性を強く感じた。

「ケアがつらくなったときに逃げ込めるシェルターみたいなところがあればいいのに」といった支援に対する要望も自然に出てきて、ヤングケアラーどうしが交流を深めるだけでなく、厚労省がヤングケアラー当事者の思いを吸い上げる場としても、今回の試みは良い機会だったと思う。

 顔を出さずに音声のみで参加している人や、チャットで文章のみで参加している人もいて、匿名性もしっかり守られていたので安心して参加できたのではないだろうか。

ケアのことを普通に話せる場

「厚労省主催のイベント」と言われると、なんだか堅苦しいなと思われそうだが、配信会場は終始和やかな雰囲気だった。画面の向こうにもそのあたたかさが伝わっていたのではないかと思う。

 イベント終盤で、宮崎さんが「ケアの話が、暗くなりすぎずに普通にできることはいいなと思いました」とお話されていた。田中さんも「厚労省がこういった交流の場を率先してつくってくださったのは画期的なこと、もっと広がっていくといいですね」と発言されていた。

 普段の生活の中で、ヤングケアラーが自分の経験を話すとき、「深刻に思われすぎるのは嫌だ」「場の雰囲気を悪くしたくない」という不安も大きいと思う。

 今後もこういったヤングケアラー当事者が安心して交流できる場があれば、少しでも気持ちが軽くなり、ひとりで抱えずにすむかもしれない。

 ヤングケアラーにとって、「誰かと繋がりたいと思ったときに、繋がれる環境がある」ことがあたりまえになっていくことに期待したい。

厚生労働省のヤングケアラー交流イベント

『ヤングケアラー「オンライン交流イベント」仲間とわいわいおしゃべりしよう』

https://www.mhlw.go.jp/young-carer-event_20230204/

厚労省『こどもがこどもでいられる街に。~ヤングケアラーを支える社会を目指して~』
https://www.mhlw.go.jp/young-carer/

ヤングケアラー当事者が繋がれる場所

 今回のイベントで高橋さんとともにトークショーに登壇した田中さんも宮崎さんも、当事者どうしの交流イベントや相談窓口を自ら運営し、発信活動をされている。その活動をご紹介する。

ヤングケアラーのLINEコミュニティ『けあバナ』

日本ケアラー連盟理事、一般社団法人ケアラーワークス代表・田中悠美子さん

 日本ケアラー連盟理事を勤める田中さんは、ヤングケアラーに関する数々のプロジェクトを牽引。社会福祉士、介護福祉士として働いた経験も。一般社団法人日本ケアラー連盟
https://carersjapan.com/

■東京都ヤングケアラー相談支援等補助事業、LINE相談窓口『けあバナ』運営:一般社団法人ケアラーワークス
https://lin.ee/C5zlydz

 

ヤングケアラーのコミュニティづくりや就職支援も

一般社団法人ヤングケアラー協会代表理事・宮崎成悟さん

 宮崎さんは、元ヤングケアラーとして数々のメディアで情報を発信。元ヤングケアラーの就職を支援する事業なども手がけている。https://youngcarerjapan.com/

宮崎成悟さんが主宰する当事者どうしが繋がれるコミュニティ『ヤンクル』
https://yancle-community.studio.site/

文/たろべえ(高橋唯)さん

「たろべえ」の名でブログやSNSで情報を発信中。本名は、高橋唯(高ははしごだか)。1997年、障害のある両親のもとに生まれ、家族3人暮らし。母は高校通学中に交通事故に遭い、片麻痺・高次脳機能障害が残ったため、幼少期から母のケアを続けてきた。父は仕事中の事故で左腕を失い、現在は車いすを使わずに立ってプレーをする日本障がい者立位テニス協会https://www.jastatennis.com/に所属し、テニスを楽しんでいる。現在は社会人として働きながら、ケアラーとしての体験をもとに情報を発信し続けている。『ヤングケアラーってなんだろう』(ちくまプリマー新書)、『ヤングケアラー わたしの語り――子どもや若者が経験した家族のケア・介護』(生活書院)などで執筆。第57回「NHK障害福祉賞」でヤングケアラーについて綴った作文が優秀賞を受賞。
https://twitter.com/withkouzimam  https://ameblo.jp/tarobee1515/

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