認知症の人を理解する「何度も同じもことを聞く」ほか5つの行動パターンの理由を専門家が解説
一見不可解な行動に思えるが、その原因や心理状態にはパターンがあり、認知症患者なりの理屈もある。
【1】何度も同じことを聞く
通院や行事などの予定日時を忘れてしまい、数分おきに周囲の人に尋ねることもある。原因は短期記憶の低下によるもので、常に忘れてしまうことへの不安から確認してしまう。
【2】どこにいるのかわからなくなる
人・時間・場所がどこかを認識する「見当識」が低下して起こる。その場合、自分が元気で充実していた時代(働き盛りだった30~40代など)に戻ったような錯覚が生まれ、目の前の人や場所が認識できなくなることが多い。
【3】身近な人の顔がわからなくなる
顔の認識が苦手になると、声や服装など、全体の雰囲気で判別するようになる。女性なら子育てをしていた20~30代に戻ることが多いため、中学生の孫を「娘の彼氏かしら」と誤解するようなことが起きる。
【4】もの盗られ妄想
財布や印鑑など大切なもののしまい場所を忘れるのが原因だが、本人は、記憶低下への不安や焦りから「自分はちゃんと管理しているのに」と周囲を疑ってしまう。家族に怒られるほど、不快感が残り不信につながる。
【5】慣れた場所で迷う
空間認識力を司る脳の頭頂葉が萎縮すると、縦横の感覚や距離感が把握しづらくなり、巨大なミラーハウスに迷い込んだ感覚に陥るという。多くの人は、「いきなり知らない人に『ここはどこ?』と聞くのは恥ずかしい」という思いがあるため、引き返さずどんどん進んでしまうことが多い。
マンガで理解する認知症の人の気持ち
祖父が認知症になった祖父のエピソードをマンガで見てみよう。
まるでコントのような1コマだが、「急に怒り出す」「家にいるのに『帰る』と言う」など、認知症患者の行動は笑えないものもあり、家族や周囲にとっては耐えがたい場面も多い。しかし、彼らが見ている世界との「ズレ」や根底にある心情を理解することで、心理的な負担が軽くなるはずだ。
教えてくれた人
川畑智(さとし)さん/理学療法士。熊本県を拠点に、認知症予防やケアの実践に取り組む。2017年に認知症の人と家族を支える資格制度「ブレインマネージャー」を創設。現在『マンガでわかる!認知症の人が見ている世界』『同2』(ともに文響社)がベストセラーに。
取材・文/佐藤有栄 イラスト/うつみちはる
※女性セブン2023年2月16日号
https://josei7.com/
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