健康

老人脳セルフチェック!やる気や記憶の衰えほか5つのタイプを診断【脳科学者監修】

 厚生労働省によると、2025年には、65才以上の5人に1人が認知症になるとの見込みだ。しかし、その前からすでに、「人やものの名前が思い出せない」など、脳の衰えを感じている人も多いのでは?「脳力」のピーク年齢は分野によって違う。ただし、衰えるスピードには個人差がある。まずは自分の脳の状態をチェックすることが大切だ。

老人脳自己診断チェック【1】タイプを確認しよう!

 A~Eの各パートで該当するものは?(監修/脳科学者・西剛志さん)

<A>

□ 新しい場所に行くのが億劫

□ 集中力が続かない

□ 流行っている曲を聴いてもわからない

□ 食べたいと思えるものがあまりない

□ 新商品には興味がない

□ 昔と比べると本を読まなくなった

□ 昔話は「あの時代」がいかによかったかばかりを話す

<B>

□ 人の名前や顔が覚えられない(アイドルが同じ顔に見える)

□ 同じことを何度も言うことがある

□ 約束の日時や場所を忘れる

□ 何度も忘れ物がないか確かめる

□ 用事があってその場所に行っても何をするか忘れてしまう

□ ものをどこに置いたかわからなくなる

□ 同じものと気づかずに2度買ったことがある

<C>

□ 考えて買うより感覚で買うことが多くなった

□ 情報を鵜呑みにしてしまう傾向がある

□ 同時に2つの作業ができなくなってきた

□ スケジュールを甘く見積もって遅れてしまう

□ 料理・計算・運転でうっかりミスをすることがある

□ 過去の成功体験にしばられて同じ選択をしてしまう(同じメニューを頼む、いつも同じ人とつきあうなど)

□ 衝動的に行動することが多くなった(待てなくなった)

<D>

□ 他人の意見に共感することが少なくなってきた

□ 服装に気を使わなくなってきた

□ 人の話をあまり聞かなくなった

□ 批判されても気にならなくなってきた

□ 店員さんにタメ語をよく使うようになった

□ プレゼントをあげても喜ばれなくなってきた

□ 気づいたら相手を傷つけていることがあった

<E>

□ 名前をよく聞き間違える

□ (テレビなど)ボリュームを上げないと音が聞こえにくい

□ 騒音の中では、会話や電話がしづらい

□ 高い音が聞こえにくいときがある

□ テレビや音楽の音が大きいと周りから言われる

□ 音がどこから聞こえてくるかわかりづらい

□ 早口でしゃべられると理解できない

診断結果 5つの老人脳タイプ

 4つ以上当てはまったパートが、あなたの老人脳タイプ。

<A>やる気低下型の老人脳

 何をするにも億劫。やる気のホルモン“ドーパミン”を放出する線条体の働きが衰えている可能性が。

<B> 記憶低下型の老人脳

 記憶の中枢といわれる海馬や記憶に関連する部分の働きが低下している可能性がある。

<C> 客観・抑制低下型の老人脳

 物事を客観視したり、判断したり、感情を抑制する前頭前野を中心とした部分に衰えがみられる。

<D> 共感低下型の老人脳

 人の気持ちを理解する前帯状皮質や島皮質などを含む部分が衰えてきていると考えられる。

<E> 聴覚低下型の老人脳

 耳の機能低下や、それによって起きた脳の変性により、認知機能全般が衰えてきている可能性が高い。

老人脳自己診断チェック【2】片足で何秒立っていられる?

 平らな床の上に立ち、腕を横に広げたら、目を閉じて片足で立つ。上げる足は左右どちらでもいい。目を閉じた状態で何秒立っていられるかを計測する。

平均秒数/脳年齢

58.8秒/30代

32.9秒/40代

23.7秒/50代

9.4秒/60代

4.5秒/70代

2.9秒/80代

 30秒以上片足で立っていられれば、脳はまだ若い。逆に、実年齢の平均秒数より短い人は脳の老化が進んでいるので生活改善に取り組もう(国立長寿医療研究センターによる年代別平均値。30代については、西さんが個別に50名の平均値を算出)。

老人脳は5つのタイプに分けられる

 脳の老化は自分では気づきにくい。なので、まずは自分の脳の状態を把握することから始めよう。今回は、西さんが考案した2つのチェック方法を紹介する。

 1つ目は、脳のどの部位が老化しているかを診断する方法だ(【1】老人脳自己診断チェック)

「脳には、老化が起きやすい部位があります。その部位をベースに、

【1】やる気低下型

【2】記憶低下型

【3】客観・抑制低下型

【4】共感低下型

【5】聴覚低下型

の5つに分類できます。右ページの各リストの当てはまる項目にチェックを入れましょう。家族や友人など、第三者にもやってもらい、自己診断と第三者の診断を比較するとより正確に判断できます」

 2つ目は、脳年齢を知る方法だ(【2】老人脳自己診断チェック)。これは、目を閉じた状態で、片足で何秒立っていられるかで判定できる。

「人は目を開けていると、目から入る情報を基に無意識でバランスを取ろうとします。目を閉じて視覚情報を遮断することで、体の本当のバランス感覚がわかります。バランス感覚と脳の状態は比例しているため、この方法だけで、脳年齢が測定できるのです」

老人脳には、40代からなり始めている人もいるという。放っておくと進行するので、脳の状態を早めに知り、対処できるようにしたい。

脳は何才からでも成長させられる!

 自分の脳が老化しているとわかった時点で、そこから若返らせることはできるのか?

「ズバリ、脳は何才からでも若々しくなれます」

 とは、東北大学加齢医学研究所教授の瀧靖之さんだ。

「ひと昔前までは、脳は年齢とともに老化するといわれていました。しかし近年、私たちの脳は年齢に関係なく成長し続けることがわかってきました。実際、記憶を司(つかさど)る海馬(かいば)の神経細胞は90才になっても増え続けることが証明されました。さらに脳は可塑(かそ)性といって変化する力を持っており、何才からでも変われるんです」(瀧さん・以下同)

つまり脳にいい生活を心がければ、いつまでも脳を若々しく保てるだけでなく、新しく変化させられる、というわけだ。

「どんなに健康な人でも、加齢による脳の萎縮は避けられません。ただし萎縮のスピードは遅らせられます。脳の加齢を加速させる要因には、酒やたばこ、うつ、肥満(特に男性の場合)があります。うつを発症すると、認知機能に影響する前頭葉や海馬が萎縮するといわれています。心の健康と脳の健康はつながっているので、もしうつ傾向を感じたら、すぐに治療を受けましょう」 

うつを放っておくと認知症のリスクも上がるというわけだ。脳の若さを維持することには、こんなメリットもある。

「平均寿命(87・45才)と健康寿命(日常生活に制限のない期間/75・38才)(※)の差は、女性で約12才。多くの人は、人生の最後十数年は、他人の力を借りなければならないわけです。脳を若く保てれば、その期間を短くできます。これもひとつのメリットと言えるでしょう」

(※)厚生労働省2019年調べ。

教えてくれた人

脳科学者/西剛志さん

脳科学を生かした才能開発メソッドや、才能の伸ばし方などを提供するサービスを展開。これまで企業から個人までのべ1万人以上をサポート。主な著書に『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』(アスコム)。

医師・医学博士/瀧靖之さん

東北大学加齢医学研究所教授。脳画像研究の第一人者。MRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究に従事。著書も『回想脳 脳が健康でいられる大切な習慣』(青春出版社)など多数。

取材・文/鳥居優美 イラスト/藤井昌子

※女性セブン2022年9月22日号
https://josei7.com/

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