東京・大塚の老舗おにぎり店「ぼんご」2代目女将が明かす1日1000個売れる味の秘密
「ぼんご」という名は、アフリカの打楽器に由来する。
「元ドラマーだった夫(創業者の故・祐[たすく]さん)が『ボンゴのように、店の名も遠くまで響き渡るように』と名付けました。
私が嫁いだのは創業から16年後の1976年です。年中無休、お正月も休まず営業していました。うちのおにぎりの特長は『温かい』『ぎゅっと握らない』『具が多い』なのですが、温かいご飯をやわらかく握るのは創業当時から。
夫は10年前に亡くなりましたが、いまだに古いお客さまが『お宅のお父ちゃんのおにぎりって不細工だけどおいしかったよねえ』と言ってくれます。
炊飯器でご飯を炊いたときにつくオブラートみたいなものがあるでしょう? あの“保水膜”が、ご飯の旨みなんですって。だから、あの膜でご飯粒ひとつひとつを包むために、炊き上がったら粗熱を取って蒸気を飛ばすのがポイント。
握るご飯の温度は70~80℃です。そして、特に女性が『食べられないかも?』と驚くほど大きいのは、ご飯1粒1粒のおいしさが味わえるようふんわりと握っているからなんです」
右近さんが握り手になったのは約40年前。「おにぎりなのに崩れる!」と怒る客も多かったそうだが、「おにぎりは空気がたくさん入る方がおいしい」とめげずに言い続けた。
「やがて、お客さまから『おにぎりってやわらかい方がおいしいよね』と言われたときは『やった!』と思いましたね。最近では、かたいと怒られることがあるくらいです」
最大の特徴は「具材の多さ」
最大の特長は「具材の多さ」にある。これは、どこを切っても金太郎飴のごとく、どこを食べても具材が出てくる量の多さと、57種類という多彩さ、両方の意味がある。
「もとは普通の量でしたが、まかないで食べたときに、どうしても一口ご飯が残るのがすごく嫌で。私が握るようになった暁には、具材をいっぱい入れてやると誓いました(笑い)。
たまに、入れすぎだというかたもいらっしゃいますが、多ければ残していただいていいんです。でも、少ないのは足せないでしょう?(笑い)」
20年以上通っているという60代の男性は、ぼんごのおにぎりの魅力を「よそでは買えない、ボリュームと具材の多さでしょう。いろいろ試した結果、すじこや明太子などのオーソドックスな具材が好きです。シンプルな具材ほど、ご飯と具材の塩加減、のりの奥深いハーモニーを感じられます」と語る。