猫が母になつきません 第338話「はしゅつしょ」
父が20年前に亡くなったことを忘れてしまった母。どんなに話しても父の死を受け入れません。そのうち「警察に届けてくる!」と言ってひとりで出て行こうとするので、とにかく一緒に近所の派出所に行くことにしました。警察官の方には母が認知症で、父はすでに亡くなっていることをお伝えした上で母の話を聞いてもらう。母の妄想話が終わると「お墓参りも行かれたんでしょ?ご主人はお墓の中だけど、娘さんがいらっしゃるから大丈夫ですよ」と言ってくださって、母も納得はしないまでも少しは落ち着いたようでした。「ありがとうございました。どうしても行くってきかないものですから…」「いいえ、来てくださっても大丈夫ですよ」と一段落したところで「そういえばお母さん、こないだ来られた時にここの老眼鏡持って帰られたと思うのでいつでもいいから返してくださいね」。カウンターの上の三段階の老眼鏡のひとつが抜けている。見覚えがあるフレーム、一週間くらい前に「この老眼鏡どこかの持って帰ったんじゃないの?」「いいえ、私のよ」という会話もした。まさか警察のだったなんて…話を聞いてもらったことより恐縮して平謝り(恥)。
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作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。