兄がボケましたら~若年性認知症の家族との暮らし【第178回 介護とシンギュラリティ】
7年前に57才で若年性認知症を発症した兄と暮らすライターのツガエマナミコさんが綴る連載エッセイ。兄の日常生活を支えるマナミコさんですが、症状が進行し、いろんなトラブルが発生するようになった今、兄のお世話がどんどん大変になってくると同時にマナミコさんの心境も複雑になってきています。

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“かまってちゃん”にしか見えない規則性
仕事をするわたくしの部屋に兄が顔を出し、唐突に「ぼくツガエですけど…」と言うので「わたくしもツガエです」と言うと「えぇぇぇっ?おんなじです!」と、まるで初対面で偶然同じ苗字の人に出会ったようにびっくりする実の兄と2人暮らしのツガエでございます。
親がボケて、会いに行っても自分のことがわからないことを悲しむシーンをドラマなどでよく観ますけれども、それはたぶん離れて暮らしているからだろうと思います。少なくともわたくしの場合は、兄にとって自分が赤の他人に映っていても、悲しいとか寂しいという感情にはなりません。「わたくしはお兄ちゃんの妹よ」と一応は宣言しておきますけれど、どうであれ面倒を見るのは同じことなのです。えらいもので最近は「ここまでくるとこういう風になるのね」という観察的な見方ができるくらい感情を切り離せるようになりました。
でもすべ