タレント野沢直子さん(59才)が語る60才からの生き方「人間関係も夫婦関係も整理」
60才からの人生を明るくするには――。誰にだって、やり損ねたことや失敗した経験はある。だが、大切なのはそこから何を学び、どう今後に生かすか。28才で渡米したタレントの野沢直子さん(59才)が、60才を前に自らの「老い」と今後の生き方を語ってくれた。
野沢直子さん「50代、自分の横顔が魚のフナに見えた」
「50代を迎えた頃、テレビの収録中にふとスタジオのモニターを見ると、魚のフナがいたんです。よく見たら、自分の顔…。濃くなったほうれい線がエラに見え、半開きになった口は魚そのもの。目の脇の笑いじわなら“よく笑った幸せな人生の証”と思えるけど、ほうれい線は予想外。あのときは衝撃を受けましたね」
自らの老いについてこう語るのは、タレントの野沢直子(「」内以下同)だ。
野沢は1984年に芸能界デビューし、深夜のワイドショー『トゥナイト』(テレビ朝日系)の突撃レポートで注目を集めた。その後、タレントの清水ミチコやお笑いコンビ・ウッチャンナンチャンらと共演したバラエティー番組『夢で逢えたら』(フジテレビ系)などに出演。奇抜なファッションと破天荒なボケで話題を呼んだ。
ところが1991年、28才で突如、芸能活動を休止して渡米。以降、アメリカに拠点を置きつつ、年に1~2回日本に帰国し、バラエティー番組などに出演していた。冒頭のエピソードは、そのときの出来事だ。
「世の中には“年を重ねていくことが楽しみで仕方がない”という人もいますが、私は“それって本当?”ってずっと疑問に思っていました。
実際、老いていくのは、見た目にも肉体的にも、いいことはない。顔にはほうれい線がくっきり、ばね指やヘバーデン結節など指の疾患をはじめ、あちこち具合が悪くなる。物忘れも激しくて、誰かに会ってもその人の名前が思い出せない。大好きなジャンクフードも食べると胃もたれを起こす。50代後半から実感している急激な衰えには、がっかりしていますね。誰もが一度は“こんなはずじゃなかった”と思うんじゃないですか?」
老いを受け入れ「後悔しない」生き方を
それでも最近は、老いを受け入れようという心境に達しているという。
「誰もが老いますし、老いても人生は続きますから、受け入れるしかないんですよね。そう思うと腹が据わりました。
そうしたら、これからは自分の好きなこと、楽しいことだけやっていこうという気になれたんです。そのために意識しているのが、後悔しないこと。クヨクヨ考えるとそのストレスがすぐ老いた体に影響しますから。
この前も、日本に一時帰国した際、ずっと食べようと思っていた日本のパンケーキを食べ損ねたんです。それが悔しくて、すぐにサンフランシスコにある日本のパンケーキ店に食べに行きました。こういった些細なことでも、“ああしておけばよかった”などとネガティブな気持ちにならないよう行動するようにしていますね」
毒にしかならない人間関係は整理
2023年に還暦を迎える野沢。新たに“整理”を考えているという。
「まずは、毒にしかならない人間関係を整理しようと思っています。人間関係のいざこざほど、精神的に負担になることはないから。今後は、ご飯を食べながらくだらない話をして笑い合えるような、一緒にいて楽しい人とだけ、時間を共有していきたいです。
夫婦関係もそう。夫と仲違いしているわけではありませんが、子供たちの手が離れたいま、親というチームは解散して、おのおの好きなことをしていけばいいと思っています。必ずしも夫婦ふたりで手を携えて老後を生きていこうという感覚は、お互いに持っていないように思います」
夫婦関係だけではない、親子関係も見直し始めたという。
「私には娘が2人、息子が1人います。全員成人して仕事に就いているのに、気づくと子供の心配をしている。仕事はどうだ、対人関係はどうだ、と…。でも、子供同士で仕事の話をしているのを聞いていると、自分が思っているより彼らはずっと大人で、私だけがそこをわかっていなかったと実感したんです。心配したり口出ししたりするのは子供に失礼だから、もうやめようって思いました」
自分の”好き”を知り実践すること
子育てを卒業し、人間関係のしがらみからも解放されつつあるいま、野沢はこう感じているという。
「振り返ってみると幸せな人生なんですよね。なんせ私は自分の好きなもの、やっていて楽しいことがわかっているから。それは、“自分のパフォーマンスで誰かに喜んでもらうこと”。だから、ライブをやったり、テレビの仕事もいただける分には続けていきたいですね。
趣味でも仕事でもいい。“自分の好き”を知っているか知らないかで、60代からの人生に差が出ると思うんです。何をしたら楽しいかわかっていたなら、それを実行しさえすれば充実した老後を過ごせるわけですから」
60代からは振り返ること、後悔することをやめ、自分に正直に、好きな人とだけつきあい、好きなことだけをして生きていく。その決意が人生を明るく照らすのだ。
教えてくれた人
野沢直子さん/タレント。1991年に渡米後、アメリカと日本でバンド活動を続けながら、ショートフィルム製作などを行う。近著にエッセイ『老いてきたけど、まぁ~いっか。』(ダイヤモンド社)や小説『半月の夜』(KADOKAWA)がある。
取材・文/桜田容子
※女性セブン2023年1月1日号
https://josei7.com/
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