親の介護に今後いくらかかる?費用を「見える化」するキャッシュフロー表の作成で不安を解消した実例【FP解説】
特養に入居後の80代半ばのAさん(補足給付対象)は、年金収入だけでは施設の費用がまかなえず、なにかと出費もかさみ、預貯金が徐々に少なくなってきました。
そこで、Aさんは娘さんと相談して自宅マンションを売却することに決めました。
マンションの売却代金として約1000万円強が手元に残りました。しかし、預貯金の残高が増えることによって、補足給付※3の対象から外れてしまい、施設でかかる費用の自己負担が現在の月7~8万円から、倍くらいの金額になってしまうことが判明しました。
※3 特別養護老人ホーム等の公的施設であれば、所得や資産などの要件を満たせば、食費や居住費の自己負担が軽減できる制度。
そこでAさんとご家族は、「今後、病気などで入院して治療費がかかってしまった場合、年金収入と預貯金だけで足りるだろうか?」と心配されたため、キャッシュフロー表を作成し「見える化」することをおすすめしました。
キャッシュフロー表を作成することで、お金の流れを年単位で先々まで把握できます。
Aさんは、年間の収入や支出、預貯金、マンションを売却した費用を貯蓄残高に加えて試算してみたところ、10年後には550万円残ることがわかりました。
お金の流れを把握できた結果、「この先10年くらいは大丈夫そう」と安心されていました。
また、現在の制度を前提とすると、Aさんは90才代前半でふたたび補足給付の対象となり、自己負担額が軽減されるようになり、娘さんたちも気持ちに少し余裕ができたようです。
介護のお金の「見える化」【まとめ】
介護にかかる費用はケースバイケースです。毎月の介護費用と介護期間で大きく費用は変わります。まずは、1か月間の親の収入と実際にかかる費用を確認し、各種負担軽減制度等も調べてみましょう。
介護にかかるお金は、預貯金等の資産を含めて、キャッシュフロー表を作成して「見える化」することで、ある程度、明確になるのではないでしょうか。
※記事中では、相談実例をもとに一部設定を変更しています。
執筆
河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士
CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、認知症サポーター。兵庫県立神戸商科大学卒業後、複数の保険会社に勤務。親の遠距離介護の経験をいかし、2011年に介護者専門の事務所を設立。2018年東京・杉並区に「カワムラ行政書士事務所」を開業し、介護から相続手続きまでワンストップで対応。多くのメディアや講演会などで活躍する。https://www.kawamura-fp.com/
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