比叡山大阿闍梨が教える毎日の掃除術「トイレを磨くことは心を磨くこと」
「掃除をするのは誰かのためではなく、何よりも自分のためです。掃除をすれば、自分が心地よくなり、自分の今いる「環境」が整理整頓されます」。そう教えてくれたのは、比叡山大阿闍梨(ひえいざんだいあじゃり)・光永圓道(みつながえんどう)さん。日々の積み重ねが未来を清め、整える―― そこで、汚れをためないための「毎日の掃除術」を教えてもらった。
極意その1:「家の顔」玄関はいつも清潔に
人が出入りする玄関は、家の顔であり空気の通り道です。
その家に住む自分たちが心地よく過ごすため、良い気を入れ込むためにも玄関は常に清潔にしておく必要があります。
ほうきを使った掃き掃除、扉は雑巾で拭き掃除、必要があれば天井をはたきではたく。お寺では朝のお勤めの後に行います。
極意その2:すべての掃除は「上から下へ」
まずは高い位置のほこりを落とし、次に壁、そして最後に床。「上から下へ」は居間、寝室、トイレなどどの場所においても同じです。
ほこりを落とすにははたきが一番ですが、ハンディタイプのフローリングワイパーなども便利です。
床は必ずしも雑巾がけをする必要はなく、掃除機やワイパーでも良いでしょう。
極意その3:隅と端こそ丁寧に
天台宗の教えに「一隅(いちぐう)を照らす」という考え方があります。これは「縁の下の力持ち」のことであり、隅を照らせる人間のこと。真ん中を照らすことはいくらでもできますが、暗くなっている端っこを照らせるような人間であれということです。掃除でも丸く掃いたり拭いたりするのではなく、どんな場所でも隅や端を丁寧に磨きましょう。
極意その4:水滴は最後の一滴まで拭きあげる
風呂や洗面所、台所、窓など水を使って掃除をする際には必ず「水滴の拭きあげ」を意識してください。水が残っているとぬめりや垢の原因になり、その汚れはなかなか落ちにくくなってしまうものです。毎日拭きあげることでイヤな汚れを残さずにすみます。乾いた布巾や雑巾、スクイージーなどを使って、しっかり水気をとることが大事です。
極意その5:トイレを磨くことは心を磨くこと
仏門に入って最初に教わったのがトイレの掃除でした。
「塵を払わん、垢を除かん」という教えの通り、トイレを磨きあげることはすなわち心を磨きあげること。居間や台所と同じように素手で触っても良いくらいに丹念な掃除をしています。
床を拭く雑巾と、便座など体や手が触れる場所を拭く雑巾は分けることが必要です。
極意その6:道具は「シンプル」と「高効率」
世の中にはさまざまな掃除用具があり、便利なものがたくさんありますが、のべつ幕なしに買ってばかりだと、いつしか道具で溢れてしまうでしょう。ほうきと雑巾、はたきといったシンプルな道具が最も万能です。
加えて、汚れ落としに欠かせない「メラミンスポンジ」「ウタマロ石けん」、吸引力が強い「掃除機」、水拭きも兼ねる「ワイパー」「スクイージー」を使うことで効率があがります。
教えてくれた人
光永圓道さん
覚性律庵 住職/比叡山麓 覚性律庵 滋賀県大津市仰木4-36-20
撮影/黒石あみ(本誌)
●比叡山大阿闍梨・光永圓道師が説く”掃除”の極意「毎日の掃除は良く生きるための儀式」