老後、女友達との同居はありか?「細やかなルール作りとスキルシェアがうまくいく秘訣」
学生時代のように、仲のいい友達と一緒に老後を過ごせたらと思ったことはないだろうか。昨今、増加しているという「女友達との同居」を成功させるためには、事前の準備や試行錯誤が欠かせない。経験者の実体験や成功の秘訣を識者とともに考える。
老後、女友達と一緒に暮らした人の声
若かりし頃、女友達とそんな約束を交わしたことはないだろうか。夫のようにイライラすることも、子供たちとの同居のように遠慮することもなく、お互い年をとって気心知れた友人となら安心で、なおかつそれぞれ好き勝手に生きられる。女友達と一緒に住むなら、それも可能ではないか。若い頃に、そんなことを考えた人も少なくないだろう。
令和になったいま、働き方、家族のかたち、老後のありようが多様化する中、年をとって女友達と暮らすことを選択する人が増えているという。しかし、現実には簡単にいくものではない。
◆永谷渚さん(仮名・63才)の場合…
子供たちが独立したのを機に、モラハラ夫と50代で離婚した永谷渚さん(仮名・63才)は、看護師の資格を生かし、病院で働きながら寮生活を送っていた。そこへ、離婚した元同僚・木下みどりさん(仮名・61才)から声をかけられ、3年前に2人でマンションを借りて同居をスタートした。
「子供たちとも疎遠になり、ひとりの生活に寂しさも感じていたため、同居の誘いを受け入れました。高齢の女世帯ということでなかなか貸してくれるところがなかったのですが、いまのマンションは敷金・礼金を多めに払ってやっと見つけました。食事やインテリアの好みが近いみどりとの同居生活は、毎日が修学旅行のように楽しいものでした」(永谷さん・以下同)
しかし、思いがけないズレが2人の間に生じる。
「50才前に閉経し、元夫とも長年セックスレスだった私とは反対に、自身の不倫が原因で離婚したみどりは60代のいまも女性として“現役”なんです。離婚後も彼氏を切らしたことがなく、まるで20代の頃のように奔放です。彼女と私では、化粧品も下着もランクがまったく違う。しかも、契約社員として働きづめの私とは違って、みどりはボーイフレンドからお小遣いをもらっているため、たまにパートへ行く程度。
日に日に自分をみじめに感じていたところだったのですが、先月、彼女から『いまつきあっている彼がもうすぐ離婚するの。そうしたら彼と暮らすから』と切り出されました。同居を解消したら私がひとりで家賃を負担することになるけど、それは厳しい。だからといって、このまま彼女と同居を続けていくのは精神的につらい。軽はずみに同居を始めたことを後悔しています」
◆中野亜矢さん(仮名・78才)の場合…
80代の幼なじみと同居している中野亜矢さん(仮名・78才)は、老老介護の壁にぶつかっていると嘆く。
「高齢者専用の介護つきマンションに住んでいた幼なじみに、『知っている人が近くにいる方が安心だから』と招き入れられ、コロナ禍になってから同居を始めました。しかし、昨年末に幼なじみが認知症と診断され、現在はヘルパーさんと私で介護しています。私自身もリウマチや高血圧の持病を抱えているので体力的にも限界です」
このように、気心知れた相手とはいえ、高齢になってからの同居はリスクが大きい。
楽しそうだけでは成功しないのが現実
介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんが指摘する。
「昨今、シニアの同居は珍しくありませんが、うまくいった事例は数少ない印象です。もちろん、ひとり暮らしより家賃や光熱費の負担が軽くなったり、急に倒れたときの安全面などメリットもあります。しかし、光熱費を折半していると、同居相手が電気をつけっぱなしにしたり水を使いすぎていることが徐々に気になったり、入院や介護が必要になると体力的にしんどいという問題がある。事前に細かくルールを定めていないと、なかなかうまくいきません」
「楽しそう」だけで成功するほど現実は甘くない。女同士の同居を成功させるには、どんな工夫が必要だろうか。
女同士4人で一戸建てをシェア
“モノ”の貸し借りアプリ『アリススタイル』を提供する『ピーステックラボ』代表の村本理恵子さん(67才)は、60才を過ぎてから、他の女友達3人と一緒に一戸建てで暮らし始めた。
「同世代の友達に、おひとりさまで暮らしている人が結構いたんです。みんなそれなりに年をとって、親も亡くしていて、『今後の暮らしをどうするか?』とか、友達で集まるとそんな話をいつもしていました。あるとき、仲間の1人が親から受け継いだ家をどうしようか迷っているという話をし始めたんです。処分するにも、住み慣れた実家を離れて、いまさらマンションでひとり暮らしするのも不安だしと。
『それならば、そこをシェアハウスにするのはどう?』と、その場にいた友達と盛り上がりました。みんなひとり暮らしだったので、『家に帰ったとき、明かりがついていたらうれしいよね』『普段は自由に暮らすけど、何かあったら助け合うのがいいんじゃない』という話になり、4人の女友達と暮らすことに決まりました」(村本さん・以下同)
◆共同生活を始めるにあたって、村本さんたちは細かなルールを徹底的に話し合った。
「リフォームする前に、共有部分がどこで、それぞれのプライベート空間をどこにするか決めました。寝るスペースだけは必ず独立にすること、なるべく物を置かないようにすることもルールにした。たとえば掃除機なら、各々が使っているものを持ち寄るのではなく、最新機種を持っている人のもののみを置くことにしました」
洋服もクローゼットのスペースを割り振り、そこに入るものだけを持つことにしたという。一方で、「こだわりすぎる」ことはやめた。「こうすべき」という考え方を捨てることも決まりごとの1つだ。さらに、村本さんがシェアしたのは家や物だけではない。
◆スキルもシェア。50代以上の方が上手くいく!?
「それぞれの“スキル”もシェアしています。料理が得意な人、掃除が好きな人など、それぞれ得意分野があるんです。私はデジタルが得意なので、ワクチン接種のネット予約では大活躍しましたよ。
スキルを生かしながら、お互いの得手、不得手を補い合えることは同居の大きなメリットです。シェアハウスというと、若い人がやるものというイメージが強いですが、若いうちは人間関係の大きな失敗経験がまだ少なく、人づきあいで理解できないことも多い。年配になってからの方がこなれてくるので、シェアハウスは、むしろ50代以上の方がうまくいくのではないかと思います」
◆シェアハウスを始めた当初は戸惑いもあった
「お互い、どのくらい踏み込んでいいのか、わからなかったんです。『あの人のこんなところが気になるけど、言っていいのかな?』とか。以前から知っているはずの友達なのに、いざ一緒に暮らしてみると、どうやって向き合えばいいのか戸惑うこともありました。『こういうことをやっても許されるのかな?』という距離感を掴むまで、2~3か月はかかりました」
人のことを気にかけすぎず、自分との違いを「おもしろい」と捉える余裕を持つことがストレスをためずに同居する秘訣だと村本さんは語った。
教えてくれた人
太田差惠子さん / 介護・暮らしジャーナリスト
※女性セブン2022年6月9日号
https://josei7.com/
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