暮らし

ルームシェア歴20年! 他人同士が長く同居を続けて思うこと「デメリットはなし」

 親友と2人で暮らす――誰もが一度は憧れる生活かもしれない。とはいえ、仲がいいほど家族のような関係になり、難しいことも多そう。良好な関係を20年続けられた秘訣に迫る。

出会いは大学。自然な成り行きで始まった共同生活

 30代前半からルームシェアを始め、今年20年目を迎えるというイラストレーターのひよささんと、うにささん。2人は美術大学の同級生として知り合い、在学中から徒歩15分圏内の互いの家を行き来しながら制作活動に励んでいた。その後は、うにささんが、ひよささんの家に居候する生活が約6年続き、一緒に暮らす方が便利だということで、自然な成り行きで共同生活が始まったという。

うにさ 私たちは恵まれたケースかもしれません。というのも、同居前から互いの生活圏に立ち入る期間が10年もありましたから。大学時代には友人宅を行き来することも多かったですし、卒業後もアトリエを共有していたので、ルームシェアはその延長。ごく自然な流れでした。

ひよさ 共通の友人が多かったことも同居の決め手でした。お互いに友達を呼んでも、相手の友達でもあるので、気を使う必要がなかったんです。

うにさ 仕事や収入などの属性はもちろん、理想の生活スタイルが近いのもよかった。私たちは、人が泊まりに来たときに出せる布団のストックを持てるような生活がしたかった。そういう暮らしを東京でするなら、2人の方が実現しやすかったんですよね。

ひよさ そう。経済的にも精神的にも、ひとりでは持てない余裕を、2人でなら持てるんです。

性格、価値観が似ているのも続けられる秘訣?

 さまざまな条件が一致してのルームシェアだが、もちろん続けていくために必要なことは、条件の一致だけではない。最も大切な要素は別にあると、2人は声を揃えた。

うにさ 私たちがうまくいっているのは、2人とも性格がざっくりしている点が大きいですね。

ひよさ そうそう。たとえばお金に関しては、家賃から食費などの生活費全般、お土産まで、すべて折半を基本ルールにしていますが、これが結構アバウト。だって食べる量もトイレの回数も違うので完全に折半はできませんしね。そこは信頼関係をもとに、お互いに請求した額を素直に払っています。

うにさ 家事も手が空いた方がやっているので、分担はありません。“ルールをあまり作らない”というのが、うまく暮らすコツかもしれません。そしてお互いに“ひとり暮らしなら家事は全部自分の仕事”という意識が基本にあるので、“やってあげたのに”という不満は出ません。

ひよさ むしろ、“やってもらってありがたい”という気持ちの方が強いですね。

続けるために言いたい事は言う!

 理想的なルームシェア生活だが、仲のいい家族といえど、毎日顔を合わせていれば嫌気がさすこともある。けんかなどはしないのだろうか。

ひよさ けんかはしますよ。顔を合わせたくないときだってあります。でも、それぞれの居室がありますから、その気になれば一日中顔を合わせないでいることは可能です。やはり、個人の場所がしっかりと確保された間取りの物件を選ぶことが大事だと思います。実際にはリビングで一緒に過ごすことがほとんどだとしても…。

 お互い「同居を続けたい」という気持ちがあるので、けんかをしたとしても本当にダメになるようなことは、そもそもしないのだという。そこに結婚とはまた違う“覚悟”が感じられる。

■「20年も一緒に暮らしているとたいていのことがどうでもよくなります」(うにさ)

うにさ 同居はやめようと思えば簡単にやめられる。それだけに、私たちは問題が起きたら、解決する方法を一緒に考えますし、維持できるように軌道修正もします。それに、20年も一緒に暮らしていると、たいていのことがもうどうでもよくなりますよ(笑い)。

ひよさ たとえば、私は衛生面から、調理で使った包丁とまな板は食事の前に洗いたい方なんですが、うにさは、それよりできたての温かいご飯をすぐに食べることを優先したい。どちらも道理で、間違っていません。ですから、お互いに段々とどちらでもよくなっていきました。

うにさ 結局、大きな問題じゃないんですよ。

■「嫌なことがあったらハッキリ言う。それは同居を続けたいから」(ひよさ)

ひよさ 感情的になって、売り言葉に買い言葉で、もう別々に暮らそう、なんていうこともありました(笑い)。でも結局それは自分の本意ではないので、すぐに仲直りしちゃう。そもそも、同じ家に暮らしているのにけんかをした状態だと不便なことが多い。がまんするのはストレスになるので、嫌なことがあったらハッキリ言う。でもそれはすべて、いまの生活スタイルを維持したいからこそのこと。

うにさ ハッキリ言われて傷つくという時期も、もう通り過ぎましたね(笑い)。

できれば親の介護まで一緒に乗り切りたい

 2人の同居にはいまのところ、メリットしかないという。しかしそれもお互いがまだ50代と若く、健康だから。病気になったら、親の介護が始まったら…。そういった問題が生じたとき、どうするのだろうか。まだ考えていないのではと思いつつ聞いてみると、意外にも明確な返事が。

ひよさ 体調不良のときこそ、お互いに支え合いたいですね。実際、今年手術で入院したんです。その際、うにさが私の実家に電話をして、術後の状態とともに担当医の話をかみ砕いて伝えてくれたり、心配する母の話し相手になってくれました。

うにさ 私たちの連絡先は、お互いの親たちも知っているので、何かあったときに心強いと言っていますね。今後、私たちに親の介護問題が出てきたとしても、2人で暮らしたいですね。お互いの親も一緒に暮らすような生活もありえると思っています。

ひよさ 最近では、そういう先のことも視野に入れています。ひとりより2人の方がいいなと、積極的に思っています。

 まるで夫婦のような2人。考えてみれば夫婦も他人だ。うまくいかなければ離婚になる点で、ルームシェアの関係と変わらない。この暮らし方は良好な家族関係を続けていくうえでも参考になる。

■スタジオクゥ 2人暮らし20周年を迎えた感想は「40周年を無事に迎えたい」

ひよさ 20年を振り返ってみても、ひとり暮らしの方がよかったなぁと思うことはないですね。ひとりになれる場所も時間もありますし。

うにさ しんどいことがあっても、ひよさがいれば、落ち込みすぎずに済むし、くだらない雑談ができる相手が家にいるのはありがたいですよ。同居人の存在は健康にいいです(笑い)

2人が考える他人と暮らすメリット&デメリットとは?

 ひよささん、うにささんに他人同士が一緒に住んだ際のメリットとデメリットを伺った。デメリットの解答に驚き!

<メリット>

●ありがたさを常に実感できる

●互いの家族を安心させられる

●経済的な負担が半減

●くだらない雑談ができる

●体調不良のときに助け合える

●つらいことがあっても気がまぎれる

<デメリット>

なし!

教えてくれた人

ひよさ&うにさ

2人組のイラストレーター「スタジオクゥ」として活躍。年齢はともに50代前半で未婚。主な著書に『おひとり様のふたり暮らし』『温泉浴衣をめぐる旅』(ともにイースト・プレス)など。

取材・文/桜田容子

※女性セブン2021年6月24日

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