体調不良は「ストレス脳」が原因だった!ストレス軽減&撃退法
体がだるくて重い、肩がこる、頭痛がする…。これは体が疲れているというより、脳がストレスを感じていることによる場合も。
対人関係だけでなく、気温の急激な変化、座りっぱなしの姿勢も、脳にダメージを与える。脳のメカニズムやクセを知って、ストレスを軽減する生活やテクニックを学ぼう。
私たちは日々、さまざまなことからストレスを受けている。それを感じているのが脳だ。うつ病やストレス障害などの専門家で、川村総合診療院院長の川村則行さんは、次のように語る。
「脳の神経回路は、満足や喜びを感じる“報酬系”と、苦痛や恐怖を感じる“罰系”に分けられます。罰系の感情が動くと、脳内ではドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンなどの喜びや満足を感じる物質が低下し、イライラしたり、気分が落ち込んだり、やる気が出ない状態になります。これが、脳がストレスを受けた状態です」
川村さんによると、ストレスの度合いは人によって異なるが、放置したり、長く悩みを抱えたままでいると、脳が傷つき、うつ病の発症率が高くなるという。
また、脳がストレスを感じると、ほかの弊害も出てくると、脳内科医で加藤プラチナクリニック院長の加藤俊徳さんは指摘する。
「ストレスがたまると血圧が上昇し、心拍数も上がることがわかっています。その状態が続くと脳が過剰に興奮して、夜中に目が覚めたり、眠れなくなってしまいます。そうすると充分な休息がとれずに、脳がさらにダメージを受けてしまいます」(加藤さん・以下同)
たばこ、アルコールなどへの依存は、ストレスを倍増させる
最近の研究では、ストレスで眠れないのは、脳があえてそうさせていることがわかっている。
「寝ると記憶が定着しやすくなるので、脳はあえてストレスを覚えさせないために、眠らせないようにする。嫌なことがあって眠れないのは、そのためです」
さらに眠れず、ストレスによって嫌な感情が続くと、脳全体の気力が失われてしまう。
「ストレスが慢性化すると、たばこやアルコール、甘い物に依存することも。しかし、これらはすべて、ストレスを倍増させる作用があるため、摂りすぎると、さらに不安や焦燥感が高まります」
日々のストレスは、小さなうちに解消することが重要になってくる。
続いて、予防法と解決策を紹介する。
ストレス脳にならない日中の過ごし方
朝の目覚めが決め手。ストレス脳にならないための日中の過ごし方は、すっきりした目覚めが大事。朝からできるだけポジティブに活動しよう!
元来、人間のカラダは、夜明けとともに活動を始め、日が暮れると休息モードに入るようにできている。
「昼間スッキリとした頭で活動すれば、夜は自然と眠くなります。1日のリズムを作るには、決まった時間に起きること。一定のサイクルを意識して作れば、ストレスが軽減されます」(加藤さん)
また、脳は1つのことに集中するとほかの余計なことを考えられないため、軽い運動に集中して気を紛らわせるのもストレス軽減には最適だ。
●眠くなったら歌う
10分程度の昼寝はリフレッシュ効果があるが、それ以上は夜、眠れなくなってしまう。「眠いと感じたら、歌を歌いましょう。脳が活動を始め、目が覚めます」(川村さん)。
●ウオーキングは90分以上
ウオーキングは脳に酸素を送り込むのに適している。「脳に酸素が入ることで頭がさえます。女性は家事でよく体を動かしますが、1日90分以上歩くことを目指しましょう」(川村さん)。
●必ず光を浴びる
光を浴びると脳内でセロトニンが作られ、気持ちが落ち着く。「光を浴びるには太陽がいちばん効率的。曇りの日などは、蛍光灯でも構いません。目から光が入ることを意識しましょう」(川村さん)。
ストレス脳にならないブレインフード
脳にエネルギーを!ブレインフードとは、脳を元気にする栄養素を含む食物。積極的に摂れば認知症予防にも。
脳をイキイキさせるのに必要な栄養素を含む食べ物を積極的に摂れば、ストレス軽減になる。
「代表的な栄養素は、セロトニンを増やすトリプトファン、抗ストレス作用のあるGABA、活性酸素を取り除くビタミンCとE、血流を促進するα-リノレン酸など。これらが含まれた食品を効率よく摂ることで、疲れた脳を元気にすることができます」(加藤さん)
●マーガリンの摂りすぎはNG
マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸は記憶力を低下させてしまう危険性が。
●鮭、鶏肉、発芽玄米、くるみ、緑黄色野菜は積極的に!
トリプトファンは鮭や鶏肉に含まれる。発芽玄米はGABAの含有量が多いので、積極的に摂りたい。ビタミンCとEはブロッコリーなど緑黄色野菜に、α-リノレン酸の多いくるみは、ひとつかみ程度をおやつに。
ストレス脳にならない正しい睡眠
まずは、しっかり休む。睡眠が6時間以下の日が週に3日以上ある人は注意が必要。脳が疲弊するので、睡眠の確保を意識しましょう。
21時から翌3時までは眠っていることがスッキリポイント。
「睡眠中は日中よりも脳のリンパ管が開き、日中の活動で脳内に作られた老廃物を排出します。また、21時から翌3時には、成長ホルモンやメラトニンも作られるので、この時間帯は眠っていることが理想。遅くとも午前0時前には寝るようにしましょう」(加藤さん)」
●あごが上がりすぎない寝返りの打ちやすい枕を
寝る時に呼吸がしやすいよう、首が楽な枕を選んで。あごが上がりすぎると首に負担がかかってしまう。仰向けに寝て、あごから胸のあたりまでがまっすぐになるのが理想だ。寝返りを打ちやすいよう、横に長い枕を選ぶのも◎。
●枕元にスマホを置かない
「SNSなどをチェックしていると、考えごとをしてしまうので、結果脳が休まらず、かえって疲弊してしまいます」(川村さん)。スマホはすぐに見られる枕元ではなく、少し離れたところに置くなど、見ない工夫を。
●寝る前はパジャマに着替える
“今から寝る!”、と脳に言い聞かせるためにも、パジャマに着替えて、眠る準備をするのがベスト。
「パジャマは通気性がよく、体を締めつけないやわらかなものを選びましょう」(加藤さん)
●ラジオ体操をする
「日中、座ってばかりだと背中がこわばってしまいます。背中がこわばって脳の血流も悪くなるので、ストレッチをしてから寝るようにするといいですね」(加藤さん)。ラジオ体操は全身運動にもなり、背中のこわばりをほぐすのに適している。寝る前に軽く行おう。
●寝る3時間前に食事を終える
翌朝、スッキリ目覚めるためにも、寝る前の胃の中は空っぽにしておきたい。「食べ物が胃で消化されるには3時間くらいかかります。寝る前の食事は基本NG。何もない日は19時くらいに夕食を済ませておきましょう」(加藤さん)。
睡眠も運動と同じで、脳に酸素を送り込めるので、ストレス軽減には効果的。
「脳は酸素の消費量が多いので、不足するとぼんやりしたり、集中力が途切れたりします。酸素を取り込むためにも、しっかりした睡眠が必要です」(加藤さん・以下同)
とはいえ、前述のようにストレスを抱えて眠れない場合はどうしたらいいのか。
「ネガティブなことではなく、楽しいことを脳にインプットさせる。1行でもいいので、その日にあった楽しい出来事を日記に書くと、気持ちが落ち着いてきます」
夜は決まった時間に就寝し、最低でも6時間以上の睡眠時間を週3日以上確保することが大切だ。
「夜勤や不規則な仕事の場合も、時間を決めて、決まった時間に睡眠をとるクセをつけて。また、睡眠中はできるだけリラックスして、あまり締めつけず、呼吸しやすい服で寝るようにしましょう」
日々の小さなストレスは積もり積もれば、大きなダメージに。つぎに、すでにたまったストレスを解消し、リラックスできる方法を教えます!
1日5分自分をほめる
ネガティブなことを考えると、それが脳にインプットされてしまい、余計にストレスを感じてしまう。
「1日5分でいいので気持ちを落ち着かせて、これまでの人生で楽しかったことを思い出すようにしましょう。もしくは、自分で自分をほめるのも◎。目を閉じて“私は大丈夫”“私は運がいい” “きっとうまくいく”など、ポジティブな言葉を口に出しましょう」(加藤さん)。
ガムを噛む
よく噛むと判断や記憶を司る、前頭前野が発達。脳の血流も増えて、集中力も増す。普段の食生活からよく噛むことが大切だが、手っ取り早いのはガム。ガムを噛むと気持ちが落ち着き、イライラも軽減される。満腹中枢も刺激されるので、食事前に噛むと食べすぎも防げる。
イラッとしたら皿を洗う
不安になったり、イラッとしたら、体に違う感覚を与えると、脳がリセットされ、気分が変わる。
「おすすめは皿洗い。手に水の感触が伝われば、気分が変わります。お皿がきれいになっていく過程も視覚で確かめられるので、スッキリします。手を洗うだけでも効果があります。実践を」(川村さん)
般若心経の最後の部分を唱える
加藤さんが気持ちを落ち着かせるために実践しているのが、般若心経を唱えること。
「最後の部分には、“行こう、行こう彼岸の向こうへ。すべてを越えて彼岸の場所へ”という意味がありますが、心を落ち着かせるのにちょうどいい長さでもあります。ここを10〜15秒くらいかけて唱えると、呼吸も整います」(加藤さん)
パズルを解く
嫌なことがあったら、いったんほかのことに集中するといい。
「気分の切り替えには、パズルや間違い探しをするのも手。ただし、難しすぎるとかえってイライラするので、違い探しなど、単純に答えが出るものがおすすめ。スマホのゲームは、画面が小さくて眼球が動かないので、余計にストレスがかかってしまいます。気分の切り替えには不向きです」(加藤さん)
自然ドキュメンタリーを見る
動物に触れると癒されるが、見るだけでもリラックスできる効果が。アメリカのカリフォルニア大学とBBC の共同研究で、自然ドキュメンタリーを見るだけで、ポジティブな気持ちになれることがわかっている。野生動物のありのままの姿を見ると、まるで自然に触れたような気持ちになり、穏やかな心になれるのだ。
頭皮マッサージをする
頭皮マッサージをすると、目覚めもよくなり、クリアにものが見える。
「特に後頭部を中心にほぐすと、視覚系が刺激され、見た物を処理する能力が高まります」(加藤さん)
自分でやってもいいが、美容院でヘッドスパを受けるなど、他人にほぐしてもらうと、さらにリラックス効果が得られる。
イラスト/タテノカズヒロ
※女性セブン2018年9月27日号