介護ストレスでも起こる!「耳鳴り」にはツボ押しが効果的
介護中は、疲れやストレスがたまりがち。中でも、「見る」「聞く」など五感に関わる部分に不調を感じることは、つらいものだ。特に不快感が大きく、改善しにくいものの一つが「耳鳴り」だという。気になって不眠やノイローゼになる人も。自分にしか聞こえてこない音のため、検査で測定することができない点も問題だ。
そんなやっかいな耳鳴りだが、改善には「ツボ押しが効果的」と長年、耳鳴りや難聴の治療に携わってきた耳鼻咽喉科渡辺医院(横浜市)の渡辺尚彦院長は話す。
自宅で、自分でケアできると評判の、診療経験から見つけたというツボ療法について聞いた。
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3か所のツボを10回程度押すだけでいい
人間が音を感じるには、次のような経路をたどります。外部からの音は空気の振動として、外耳道という耳の穴を通って鼓膜を震わせます。すると耳小骨という小さな骨が、リンパ液の詰まった蝸牛管に振動を伝えます。蝸牛管の中には有毛細胞という絨毯のような細胞があり、刺激を受けて活性化します。ここで音は振動から電気信号に変えられて、聴神経を伝って脳へ送られ、はじめて声や音楽として認識されるのです。耳たぶから耳小骨までを「伝音部」、蝸牛から聴神経までを「感音部」といいます。
治療が比較的簡単なのは、伝音部に問題が起こっている場合です。耳の穴に耳垢が詰まっている、鼓膜が破れる、中耳炎で膿がたまるなどで起こる耳鳴りや難聴は、手術や薬などで原因を取り除けばほぼ治ります。
治りにくいのは「感音部」が原因で起こるタイプです。要因の一つが、有毛細胞の機能低下。聴力が悪化すると同時に、雑音となる信号を発生させてしまうのです。有毛細胞は一度壊れると再生されないデリケートな細胞なので、手術もできません。
感音部の機能が低下する大きな理由に、内耳への血流の悪化があげられます。耳の器官も他の臓器と同じく、血液の循環がとても重要。ということは耳への血流を促してやれば、感音性の耳鳴りや難聴を改善することができるわけです。
特に大切なのは、首の中を体から頭部へ走っている「椎骨動脈」の血流を良くすること。それには首と肩に点在する「ツボ」が、非常に効果的なのです。
覚えておくツボは次にあげる「風府(ふうふ)」「風池(ふうち)」「肩井(けんせい)」の3か所。10回ほど押すことを1日3回行う程度で構いません。
【ツボの場所】
●風府(ふうふ)
首の後ろ側の中央にあるくぼみ(ぼんのくぼ)から指の幅2本分ほど上の、押すと痛みがある場所
●風池(ふうち)
ぼんのくぼから、指の幅2本分ほど外側にあるくぼみにあるツボ
●肩井(けんせい)
首の付け根と肩先を結んだ線の中央あたりにあり、押すと痛みを感じる
ツボが左右にある場合は、左右とも押すことがコツです。交互に押してもかまいません。ツボの位置は厳密でなくてもよく、周辺を刺激するだけでもいいのです。