「下肢静脈瘤」を徹底解説 ブヨブヨ血管・脚のだるさ重さ・睡眠中のこむら返りの原因にも【医師監修】
このコロナ禍で、下肢静脈瘤を発症する人が増えていることも問題だ。
「2021年に30才以上の男女6万人を対象に行われた調査によると、下肢静脈瘤を発症している人は全体の10.5%で、コロナ以前の2018年の8.8%と比べると1.7%の増加です。当院の患者数だけで言えば、コロナ前と比べると25%も増加しています」
これほど多くの人が発症しているのに、下肢静脈瘤についてあまり知られていないのは、ひとえに、症状に慣れてしまいやすいという特徴にある。
下肢静脈瘤の症状は多くの場合、脚のだるさやむくみ、夜間のこむら返りといった慢性的なもの。血行不良に陥りやすい人は長時間座りっぱなしのデスクワークや立ち仕事のため、脚がだるく重くなっても「毎日座ってばかりだから」「立ち仕事だから仕方ない」と、あきらめてしまうのだ。だが、下肢静脈瘤は一度発症すると進行し続けていく病気。本当にひどくなると皮膚が硬くなり、最終的には潰瘍にまで発展するケースもある。
「下肢静脈瘤は、重篤な症状に発展することは少ないですが、生活の質を著しく下げる、れっきとした病気です。静脈にうっ滞があるということは、老廃物で汚れた血液が心臓に戻ることができず、ずっと脚に滞留し続けているということ。すると、皮膚の角化細胞がダメージを受けてバリア機能が破壊され、乾燥しやすくなったり、かゆみや色素沈着を生じます。
もし、皮膚をかき壊して傷ができても、流れているのは汚れた血液。皮膚を修復するための酸素や栄養が充分にいき渡らずに傷が治らず、傷口が広がって潰瘍を生じます」
レーザー治療とは?
潰瘍にまで発展するケースはまれだが、一度静脈の逆流が起こったら、伸びきった静脈をレーザーなどで焼灼(しょうしゃく)するか、専用のグルー(接着剤)で閉塞するしか完治の道はない。血液が逆流しているかどうかを確かめる検査は、保険適用の3割負担で約800円。手術は日帰りで片脚あたり、レーザー治療約4万2000円、グルー治療約5万4000円ほどになる。
「脚の表面にクネクネと血管が蛇行して浮き上がって見える『伏在型(ふくざいがた)静脈瘤』と、うっ滞して行き場がなくなった血液を通すために“迂回路”がつくられて静脈が枝分かれする『側枝型(そくしがた)静脈瘤』の治療には、レーザーカテーテルまたはグルーによる手術が必要です。静脈の弁が故障しやすいのは、くるぶし、すね、内ももの順に、脚の表面に流れている『表在(ひょうざい)静脈』。内側には筋肉などの比較的硬い組織があるが、外側にはやわらかい皮下脂肪と皮膚しかないため、静脈が太く広がりやすいのです。
一方で、太ももやひざ、ふくらはぎなどに赤紫色に血管が透けて見える『くもの巣状静脈瘤』や『網目状静脈瘤』は、血液の逆流はなく、女性ホルモンの影響などで毛細血管が拡張しているだけ。放置していても悪化することはありません」
血液の逆流、弁の故障が起きていなければ、治療する必要はなく、治療の手立てもない。下肢静脈瘤を発症しているかどうか、チェックリストで確かめてみてほしい。
その上で、気になる症状があれば、医療機関などで検査を受けるべきだ。下肢静脈瘤の検査・治療を扱っているのは、心臓血管外科、外科、消化器外科、形成外科、皮膚科、放射線科など。ホームページなどに下肢静脈瘤の記載があるかどうか確認するといい。