健康

「下肢静脈瘤」を徹底解説 ブヨブヨ血管・脚のだるさ重さ・睡眠中のこむら返りの原因にも【医師監修】

 1つでも当てはまるものがあれば、下肢静脈瘤の可能性あり。

□ 両親のどちらかに下肢静脈瘤がある。
□ 太ももやひざ裏の毛細血管が紫色っぽく透けて見える。
□ すねやふくらはぎの毛細血管が浮き出てきた。
□ 寝ているときに足がつる。
□ 脚が重くてだるい。
□ 夕方になると脚がむくむ。
□ なかなか治らない脚の湿疹・かゆみがある。
□ くるぶしの皮膚が茶色くなってきた。
□ すねの皮膚が硬くなってきた。
□ 脚の傷がなかなか治らない。

齋藤陽『世界一わかりやすい下肢静脈瘤の治療と予防』より

レジ打ち、美容師、警備員 立ち仕事の人は危ない

 齋藤さんによれば、下肢静脈瘤が悪化しやすいのは「座りっぱなし」よりも「立ちっぱなし」の仕事。特に、1日10時間以上立っている人は重症化しやすい傾向にあるという。

「座りっぱなしでも血流は悪くなりますが、脚と心臓の距離が近いぶん、静脈にかかる負担は立ちっぱなしよりも少ない。飲食店や販売員など、立ちっぱなしでも動く時間が多ければまだいいですが、レジ打ちや美容師、板前など、直立不動でいなければいけない仕事は、特に発症しやすいといえます。女性の方が〝脚のデコボコした血管が目立ってスカートがはけない〟など、見た目を気にする傾向にあるので、比較的初期の段階で受診することが多い一方、男性は少しくらい血管が目立っても気にしないため、悪化してからでないと受診しない傾向にあります」

 静脈への負担がもっとも大きいのは妊娠中だが、それでも、負担がかかるのは人生のわずか9か月間だ。それ以上に、週に5日間、毎日10時間立ちっぱなしの仕事を何年も続ける方が、下肢静脈瘤のリスクは高まる。一方、仕事や家事で毎日忙しく動き回っている人も、安心はできない。

「肥満になると運動する機会が減りやすいほか、お腹が出て静脈が圧迫されます。また、便秘も発症リスクを高める。排便時にいきむことで腹圧がかかると、脚の静脈の血液が上がってくるのを妨げます。一回一回は一時的なものでも、慢性的な便秘を抱えていて、長い年月をかけて何度も繰り返すと、静脈にとっては大きな負担になるのです」

 国内では、15才以上の男女の43%、30才以上の男女の63%もの人が下肢静脈瘤を発症しているともいわれている。あなたもすでに発症していてもおかしくない。

症状を軽くするための自己対処法

 もし、あなたが下肢静脈瘤を発症していて、医療機関で血液の逆流があると診断されたら、治療するには手術が必要だ。だが、進行を食い止めたり、症状を軽くすることは自宅でも簡単にできる。

 まず、入浴はシャワーで済ませず、毎日湯船につかること。体を温めながら脚に水圧がかかることで血液の流れを促進できる。湯船で脚を下から上にさするようにマッサージすると、さらに効果的だ。

 もっとも効果的なのはやはり、こまめに体を動かして、脚の筋肉を使うこと。デスクワークならこまめにコピーやゴミ捨てなどに行くのを心がければよい。だが、立ち続けていなければいけない仕事だと、持ち場を離れて体を動かすことは難しい。

「気づいたときにその場でつま先立ちをしたり、足首を回したり、トイレやバックヤードなどで軽く屈伸運動をするだけでも充分です。脚のだるさや重さといったつらい症状は、医療用の弾性ストッキングをはくことで、即座に解消できます。脚に圧力をかけることで血行を促すもので、下肢静脈瘤の症状の軽減には、30mmHgほどの『中圧』のものが最適です。中圧以上の医療用弾性ストッキングは圧力がかなり強く、はき方にもコツがいるうえ、サイズを間違えると逆効果。特に海外製のものは、日本人には丈が長く、圧力が正しくかからないことが多いため、医療機関を受診し、医師の指導のもと着用してほしい」


 
 ドラッグストアなどで売られている着圧ストッキングや靴下は、美容目的の弱圧タイプだが、手軽に購入できて着用もしやすいため、脚のだるさをすぐに解消したい場合はおすすめだ。ただし、脚の静脈の血液が滞るのは立っているときや座っている間なので、睡眠中ではなく、起きている間に着用するのがベストだ。

 齋藤さんは、下肢静脈瘤は、それそのものが命にかかわるような悪影響を及ぼすものではないと語る。

「“脚に血栓ができる” “脚が壊死する”などといわれることもありますが、そんなことはありえません。デコボコと血管が浮き出てくるのは、血行が悪くなって静脈の弁が壊れても、血液をきちんと心臓に届けている証拠。下肢静脈瘤は、血液を正しく心臓に送るため、体が生み出した対応策でもあるのです」

 いわば、血管からのSOS。つらさをがまんしないことが、悪化を防ぐ第一歩になる。

※女性セブン2022年4月28日号
https://josei7.com/

●70才以上女性の75%が「下肢静脈瘤」 アキレス腱の硬さが原因に【医師解説】

●「下肢静脈瘤」とは?症状・原因・治療・予防法を専門医が解説!

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