菊田あや子さん、終活は人生を謳歌するために「私は結婚を考えるようになった」
テレビやラジオで人気のリポーター・菊田あや子さん。コロナ禍、一般社団法人終活協議会の理事兼終活ガイドとしての顔も持つようになった。暗いイメージになりがちな終活だが、菊田さんが勧めるのは「明るい終活」。「終活をすると自分の人生が見えてくる。人生を謳歌するために終活はあります」と語る菊田さんに「終活の入り口」と「菊田さん自身の終活」を聞いた。
終活、何から始めればいい?
菊田さんがよく聞かれるのが「終活はどこから始めればいいの?」という質問。菊田さんは、終活の入り口として「断捨離」と「エンディングノート」を勧めている。
「自分のこれからの人生に必要なものと不必要なものを分け、不必要なものは捨てる『断捨離』をすると、いま自分が何を必要としているかが分かります。まだ手放したくないものばかりなら、無理して捨てなくてもOK。一度ですべてを整理しなくても、何か月かたってまた『断捨離』すればいい。大切なのは、自分がいま何を大事にしているかを知ることです」(菊田さん、以下同」
実際、菊田さんも繰り返し「断捨離」をし、「まだ処分できないものもある」と笑う。
「エンディングノート」は自分に関する記録
同様にエンディングノートを書けば、自分がこれからどう生きていけばいいかが分かるという。
「エンディングノートと聞くと、死を連想しがちですが、身長・体重、既往症や血液型などを書く『健康面』や預貯金の口座内容や保険、投資や土地家屋などの『財産面』、どのような葬儀、墓にしたいかの希望やSNSの情報やその処分法など、自分に関する記録をするということです。ひと通り書き終えると、人生の終い方が見えてくるのはもちろん、そこに向けてどう生きていくべきか、いま何を為すべきかが分かります」
菊田さんの推奨する「明るい終活」とは「死」を考えるというよりも、これからの人生をどうプランニングするか、自分の人生を謳歌するために何をするかを考えること。それが終活の本質と菊田さんは言う。
確かに、まだまだ続く人生、将来への不安は付きまとうが、ひとつひとつ丁寧に不安の正体を知れば、不安は解消できるにちがいない。
自分にとって何が必要かを熟考し、残りの人生の歩みを具体的にイメージする
さて、菊田さん自身の終活の内容は?
「大きな病気を患ったら、告知はして欲しいですが、延命治療はしないと考えています。無理に長生きする必要はないし、自然に天寿を全うできればいいな、と。健康面には十分に注意して、体力作りを怠らず、ピンピンコロリを目指します。施設のお世話にならないことが目標の1つですね。
葬儀は大切な人だけを招いてシンプルに。お墓は本山供養(属していた宗派に分骨した遺骨を供養してもらうこと)を希望しています。子どもがいないし、甥や姪にお墓参りをお願いするのも気が引けます。とはいえ、誰も手を合わせてくれないのは、やっぱり寂しいので、宗派の本山に永代供養を依頼しようと思っています。合祀(ごうし)にはなりますが、毎日手を合わせてお経をあげてくれるのは嬉しいので」
終活をするうちに「結婚」についても考え始めた菊田さん。いまは「終活の目玉」として「結婚」を考えている。
「60代で婚活、なんて笑わないでください。これから迎える70代80代をイメージしたときに、隣に信頼できる誰かにいて欲しいと思ったんです。この間も東京オリンピックの開会式をひとりで眺めながら、次のオリンピックのときはパートナーとのんびり応援したいなと思いました。そんなふうに自分の人生を考えることが終活です」
パートナーが見つかれば、いまおひとり様仕様で考えている菊田さんの終活プランは変更になる。終活はいつだって変更可能、ブラッシュアップしていくものだ。
「皆さんも自分にとって、何が必要かを熟考してください。そして、残りの人生をこんなふうに歩みたいと具体的にイメージする。そのイメージを叶えるためには、いま何をすればいいかを考えてみるんです」
自分にとって何が必要か――住まいであれば、終の棲家を考えて、リフォームや引っ越し、施設の資料を取り寄せてもいい。家族のことなら、ひとり暮らしを解消して友人とマンションに住みたいと考える人もいるだろうし、夫婦の生活を考え直したい人もいるだろう。
そのほかにも、一度も経験できていない海外旅行に行くとか、忙しくてできなかったお稽古事に挑戦する、ボランティア活動を本格化するなど、終活は十人十色でカラフルだ。
「こんなふうに終活を捉えて、実際にやってみると、けっこう楽しいことに気づくと思います。これが私の言う明るい終活。人生を豊かにするために終活はあるのです」
菊田あや子
リポーター。一般社団法人終活協議会理事。1959年生まれ。リポーターとしてなどで活躍する傍ら、講演活動も多く行い、内容は「食育」「美容」「話法」「おもてなし」など多岐にわたる。2020年1月、山口県の実家で94才の母を看取り、終活の必要性・重要性を身をもって痛感。「遠距離介護」や「終活」は、現在では講演テーマの1つとなっている。近著に『エンジョイ!終活』(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。
取材・文/池野佐知子