終活は万全だったつもりが…死後思わぬトラブルを招いた残念な実例
《葬式や偲ぶ会は行わず、死んだことは誰にも知らせないでほしい》
今年4月に急性リンパ腫で逝去した脚本家の橋田壽賀子さん(享年95)は自身のエンディングノートにそう記していた。
死に対するさまざまな希望を記すエンディングノートはスムーズな旅立ちに役立つが、家族が戸惑うケースもある。
相続対策、葬儀の手配、子供や孫へのメッセージ…人生を終うための準備は、バッチリだという人ほど気をつけたい。
エンディングノートが招いたトラブル例
1.家族にエンディングノートの存在を知らせていない
看護師・ファイナンシャルプランナーの藤澤一馬さんが指摘する。
「生前に人に知られたくない内容があるのでノートを隠しておき、そのまま死んでしまって、葬儀を終えて遺品を整理する際に出てくることはしばしばあります。
『願いをかなえられなかった』という遺族の後悔につながるので、生前に信頼できる人にノートを預けておくなどの備えをしてほしい」
2.エンディングノートと遺言書を混同
ほかによくある失敗が、エンディングノートを「遺言書」と混同することだ。
「エンディングノートは法的効力を持ちません。ですが、本人が遺言のつもりで『長男に○○、次男に〇〇を与える』などと書くと、法定相続と齟齬が生じて、遺産相続で家族が揉める原因になってしまいます。財産に関する事柄については、きちんと遺言書を書いておきましょう」(藤澤さん・以下同)
3.特定の人に向けた個別のエンディングノートの作成
特定の人への思いを個別に伝えるこだわりが強すぎると、思わぬ波紋が生じることも。
「誰しも『この人には見てほしいけど、この人には見てほしくない』という思いがあるものです。
宛先ごとにノートを分ける人もいますが、遺族が故人の思いをかなえてあげようとしてそれぞれのノートを見比べた際、あまりに内容に差があってトラブルになるケースがある。
基本的にエンディングノートは家族で共有するものなので、個別の思いは手紙でしたためるようにしましょう」
近場で葬儀をするために入った互助会だったのに…
理想の葬儀を実現するためコツコツと重ねた努力が水泡に帰すケースもある。
特にコロナ禍で際立つのが、生前に積立金を払うと会員価格で葬儀ができる「互助会」にまつわる誤算だ。
相続・終活コンサルタントの明石久美さんが語る。
「コロナ禍で葬儀の縮小化が進み、経営が苦しくなった葬儀社はコストカットで採算の悪い会館を閉鎖しています。そのため、近場の会館で葬儀をするために互助会で積み立ててきたはずが、遠方の会館に振り替えられるといったこともありえます。
そもそも互助会に入っていることを本人が忘れているケースも多く、葬儀後の遺品整理で互助会関連の資料が出てきて判明することもある」
「家族葬」「散骨」で知人から非難されるはめに
近年人気を集めている「家族葬」や「散骨」はコロナ禍でますますニーズが増えた。
しかし、こうした選択がトラブルにつながることも覚えておきたい。
「コロナ禍ではしかたないでしょうが、たとえ本人の希望でも、知人や友人が多い人の葬儀を家族のみで行ったり散骨したりすると、親せきや知人らの心無い言葉で家族が傷つき後悔する場合があります。お別れしたい人の気持ちにも目を向けたうえで家族が困らない供養をすべきです」(明石さん)
教えてくれた人
看護師・ファイナンシャルプランナーの藤澤一馬さん
相続・終活コンサルタントの明石久美さん
※女性セブン2021年6月17日号